【完結】悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ

69ワシ、またまたやらかす4

　もうどうにでもなれ！と飲み込んだ特殊配合最高級媚薬は、濃いアルコールを飲み込んだ時のような喉を焼く感覚は無かった。
　とても爽やかなとろりとしたシロップのようで、その爽やかな飲み口がむしろ恐ろしい。サイダーにでも入れたら色が美しいカクテルドリンクになるのでは？と思ってしまう。
　
「あ……」

　くらりと目眩がした。

「危ない！」

「あ、ありがとうございます……ん」

　んん、んんんんーーーーっ？！いかん！いかんやつじゃーーー！ワシは飲んで2秒後に後悔した！2秒前のワシ！やめろ！止めるんじゃ！飲むな！絶対に飲んではいかん！！
　しかし、悲しいかなワシの叫びは2秒前のワシに届くことはない。

　くそっ！ゲーム会社め！なんつー物を作ってくれとんのじゃ！ただのゲーム時代なら「ありがとうございますっ！美味しいですっ！」と、尊みを讃えて崇め奉っていただろう！だが！だが！

「ダ、ダグラス、さま……？大丈夫ですか？」

「あ……」

　駄目だ！一生懸命気を逸らそうといろんな物に脳内八つ当たりをしても、もう……無理……意識がふわんとして、思考に霞がかかる……。

「あ、だ、だいじょうぶ、れす」

　手足に力がはいらない……自力で立っていられず、舌が、回らない……。そして、こういう奴特有の体の熱さが！熱さがぁあ！く、苦しい……、耐えろ、耐えるんじゃワシ……いかん、いかんぞこのままではこのままでは……。

「あ、あついんですぅ……」

　閉じろ、ワシの口！何を言っているのか意味が分からん！駄目だ、こんな、こんなのワシじゃないー！！


　ワシが正気を取り戻したのは5日後だった訳で、ワシの羞恥心とか体力とか色んな物を奪い去って、世界は平和に回っていた。

「うわあ……」

　満足そうな顔で隣でスヤスヤ眠っている殿下を起こさない程度の小言で頭を抱える。ぼんやりはしているが、記憶があるのが本当に恥ずかしい！な、何やってんの！ワシ！嫌だー！忘れたい！うぎゃー！

「ふふ、おはようございます」

「あ……お、おはよう、ございます……」

　しもうた、起こしてしまったか。まあ、カーテンから差し込む光は朝のそれだ。起きたとしてもなんらおかしくない時間ではある。

「良かった、完全に私の独りよがりじゃなくて」

「え？」

　回してくる腕の暖かさに驚いた訳ではない。

「少しでも私に心を傾けて下さってありがとうございます。貴方にもっと好きになって貰えるように頑張りますから、どうか私を捨てないで、愛しい人」

「殿下……」

　捨てる？ワシが殿下を？そんな事をするつもりはないが、ワシなんかに構っていては殿下の幸せが遠のくではないか。
　ワシは殿下に幸せになって貰いたいだけなんじゃがのう……。

「ずっと一緒にいて貰えるように、飽きられないように」

　殿下、ワシは貴方がそんな風に思う必要なんてない人間ですぞ。ああ！ワタシがゲームを崩壊させてしまったから、殿下の頭も崩壊してしまったのか。
　くっ、これも罪か……責任は取らねばならないようじゃ。殿下を真っ当な道に戻して差し上げねば。

「大丈夫ですぞ、殿下。ワシは殿下を見捨てたり絶対にしませぬ」

「！嬉しいです！ダグラス様っ！」

　あれ？何か間違ったじゃろうか……？