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65 ワシ、上手い事やる

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「でぇ、どうするです?お嬢さん方?あんたらの依頼通り、この可愛らしい紳士を捕まえて来ましたけど?」

「えっ……どう、する……とは」

 ワイドナ伯爵令嬢がオロオロとベルリンツ子爵令嬢を見る。おい、どうするか何も考えずにワシを誘拐したのか?

「だ、だって……この人が、オルトラに行くから……そ、その隙に……えっと、あの……」

 無計画じゃと……勘弁して欲しいのう。どうせ、どこかの少女小説で書いてあった事でも鵜呑みにして「やってみた」んじゃろ……この、ワシを攫ってきた実行犯もプロっぽくはないし、たまたま偶然が組み合わさって、こんな状況が出来上がってしまった、と言う所かの?

「殴って痛い目でも見せますかぁ?それとも無理矢理犯してきれいな顔でもめちゃくちゃにしましょうかぁ?」

「ひぃ!」

 勿論、竦んだ叫び声を上げたのはワシじゃない。二人の令嬢だ。ワシは縛られたまま、大人しく椅子に座っておる。

「そ、そ、そ、んな恐ろしいこと!わ、私達はできません」

「じゃあ何の為に攫って来たんだよ!」

「ひいっ!」

 実行犯に脅される始末じゃわい……駄目だな、こりゃ!

「おいおい、人攫いの方。依頼主を脅してはいかんじゃろ」

「黙れ!お前は大人しくしていろ!」

「しかしじゃよ?そのお嬢さん方の言いなりでお主ら良いのか?首が飛ぶぞ?」

「は……?何を言って」

 動揺したよな、依頼主があんなんで頼りないもんな?ワシでも勘弁して欲しいわい。

「ワシを誰だか分からず攫ったようじゃが、ワシはバンドール家のゆかりのもんじゃぞ。ここの隣の領地、バンドール侯爵家じゃ」

「は……最近羽振りのいいバンドールだと……」

「そうじゃ」

 リングス領から我がバンドール領に逃げてくるものが多いと報告を受けている。つまりは、こっちよりバンドール領の方が住みやすそうと思っている奴らがいっぱいいるという事。

「して相談じゃ。ワシは怪我などしたくない。どうじゃ?ワシにつかんか?今よりマシな生活は保障してやろう。それより上を目指すなら努力はしてもらうがの。ワシは有能なら平民でも構わんと思っておる。ワシの護衛も平民出じゃしのう~?どうするよ」

 荒くれの男たちは顔を見合わせてからワシの縄をプツンと切り、令嬢二人を縛り上げた。

「仕事が早くて助かるわい」

「な、何をするのよっ離して!」「わ、私達にこんなことをしてお父様が黙ってないわよ!」

 パプリー頭がこんなに多いとはなあ……ワシは驚いたわい。

「お父様は黙るじゃろうよ。伯爵家と子爵家が侯爵家の、しかも第一王子の婚約者を誘拐したなどと知ったら黙る所か首を切り落としかねんじゃろうな。お前達、この責任一体誰が取るんじゃ?リングス家はもうないんじゃぞ?」

「ひっ!?」

 まさかそこも考えていなかったんじゃろうか……ワシはなんだか頭痛がしてきたわい……。

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