62 / 122
62 ワシ、知りたくない!
しおりを挟む
「臭いです!」
「温泉の匂いじゃから……」
そればっかりはどうしようもないが、そのうち鼻が慣れて平気になるじゃろう。そして、オルトラ温泉郷はさびれていた。
「……人が少ない……」
「このガイドブックのヴィラも営業停止……?くっ次に来る時には開いているだろうか?」
ワシらは高級旅館に宿を取っている。まあこれは王子であるセブスト殿下がわざわざ来るから、なんだろうが……にしても人は少ない。
「お待ちしておりました、殿下。さあこちらでございます」
警備の関係上、多分貸し切りなんだろうが……うーん、こりゃ何かあるな?
「何だと思う?」
ワシはリドリーにそっと話しかける。リドリーはうーん、と小さくつぶやいてから
「魔獣の類ではないでしょうか?湯量も減っているようですから、火山に火竜でも住み着いたか、溶岩ナマズでも来たか……。殿下を連れて来たのはそう言う事じゃないですか?」
「やはりそう思うか」
以前に腰痛の療養で来た時より湯が少ない。
「後、最近人気の殿下と見た目は麗しいダグラス様が歩き回れば良い宣伝になりますから!」
「嫌じゃ」
リドリーが小馬鹿にしたような目で見下ろしてくる。リドリーの方が背が高いんじゃ。
「部屋に篭ってぬっちょりしていた方がお好みでしたか?」
「宣伝がんばるぞ、ワシ」
左様でございますね!と良い笑顔を向けられて、小賢しい!それならまだワンコのようにワシの尻を追い回す殿下の方が扱い易いではないか!
「ダグラス様ー!離れです!ちょっと大きな声を出しても大丈夫なんですってー!」
何が大丈夫なのか、ワシは無視しようと思う。
「温泉もくっ付いてるので、いっぱいできますよー」
知らん、ワシは知らん!
「頑張って!ダグラス様」
「応援するな!リドリー!」
「このリドリー、王都で一番人気の最高級耳栓を用意して参りましたので!おつきの方全員分買って参りました!」
「やめーい!!」
「仕方がないでしょ?次の日の殿下のやる気と元気が全然違うんだから、って皆言ってますよ」
「皆?!」
知りたくない!知りたくない!!
「早く温泉に入りましょう!ダグラス様ーー!私、知ってますよ!温泉に来たら洗いっこするんでしょう!隅々まで洗って差しあげますよー!」
ばっとリドリーを振り返ると片目を閉じて、舌を出しながら親指を立てている!おい、殿下に何を吹き込んだ?!
「なんて言うか、周囲の人々の総意です」
「却下じゃーーーー!」
リドリーはダメだ!この視察が終わったら速やかにバンドール家に送り返そう!!
「温泉の匂いじゃから……」
そればっかりはどうしようもないが、そのうち鼻が慣れて平気になるじゃろう。そして、オルトラ温泉郷はさびれていた。
「……人が少ない……」
「このガイドブックのヴィラも営業停止……?くっ次に来る時には開いているだろうか?」
ワシらは高級旅館に宿を取っている。まあこれは王子であるセブスト殿下がわざわざ来るから、なんだろうが……にしても人は少ない。
「お待ちしておりました、殿下。さあこちらでございます」
警備の関係上、多分貸し切りなんだろうが……うーん、こりゃ何かあるな?
「何だと思う?」
ワシはリドリーにそっと話しかける。リドリーはうーん、と小さくつぶやいてから
「魔獣の類ではないでしょうか?湯量も減っているようですから、火山に火竜でも住み着いたか、溶岩ナマズでも来たか……。殿下を連れて来たのはそう言う事じゃないですか?」
「やはりそう思うか」
以前に腰痛の療養で来た時より湯が少ない。
「後、最近人気の殿下と見た目は麗しいダグラス様が歩き回れば良い宣伝になりますから!」
「嫌じゃ」
リドリーが小馬鹿にしたような目で見下ろしてくる。リドリーの方が背が高いんじゃ。
「部屋に篭ってぬっちょりしていた方がお好みでしたか?」
「宣伝がんばるぞ、ワシ」
左様でございますね!と良い笑顔を向けられて、小賢しい!それならまだワンコのようにワシの尻を追い回す殿下の方が扱い易いではないか!
「ダグラス様ー!離れです!ちょっと大きな声を出しても大丈夫なんですってー!」
何が大丈夫なのか、ワシは無視しようと思う。
「温泉もくっ付いてるので、いっぱいできますよー」
知らん、ワシは知らん!
「頑張って!ダグラス様」
「応援するな!リドリー!」
「このリドリー、王都で一番人気の最高級耳栓を用意して参りましたので!おつきの方全員分買って参りました!」
「やめーい!!」
「仕方がないでしょ?次の日の殿下のやる気と元気が全然違うんだから、って皆言ってますよ」
「皆?!」
知りたくない!知りたくない!!
「早く温泉に入りましょう!ダグラス様ーー!私、知ってますよ!温泉に来たら洗いっこするんでしょう!隅々まで洗って差しあげますよー!」
ばっとリドリーを振り返ると片目を閉じて、舌を出しながら親指を立てている!おい、殿下に何を吹き込んだ?!
「なんて言うか、周囲の人々の総意です」
「却下じゃーーーー!」
リドリーはダメだ!この視察が終わったら速やかにバンドール家に送り返そう!!
54
お気に入りに追加
2,661
あなたにおすすめの小説
【騎士とスイーツ】異世界で菓子作りに励んだらイケメン騎士と仲良くなりました
尾高志咲/しさ
BL
部活に出かけてケーキを作る予定が、高校に着いた途端に大地震?揺れと共に気がついたら異世界で、いきなり巨大な魔獣に襲われた。助けてくれたのは金髪に碧の瞳のイケメン騎士。王宮に保護された後、騎士が昼食のたびに俺のところにやってくる!
砂糖のない異世界で、得意なスイーツを作ってなんとか自立しようと頑張る高校生、ユウの物語。魔獣退治専門の騎士団に所属するジードとのじれじれ溺愛です。
🌟第10回BL小説大賞、応援していただきありがとうございました。
◇他サイト掲載中、アルファ版は一部設定変更あり。R18は※回。
🌟素敵な表紙はimoooさんが描いてくださいました。ありがとうございました!
僕のお兄様がヤンデレなんて聞いてない
ふわりんしず。
BL
『僕…攻略対象者の弟だ』
気付いた時には犯されていました。
あなたはこの世界を攻略
▷する
しない
hotランキング
8/17→63位!!!から48位獲得!!
8/18→41位!!→33位から28位!
8/19→26位
人気ランキング
8/17→157位!!!から141位獲得しました!
8/18→127位!!!から117位獲得
【完結】【R18BL】異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました
ちゃっぷす
BL
Ωである高戸圭吾はある日ストーカーだったβに殺されてしまう。目覚めたそこはαとβしか存在しない異世界だった。Ωの甘い香りに戸惑う無自覚αに圭吾は襲われる。そこへ駆けつけた貴族の兄弟、βエドガー、αスルトに拾われた圭吾は…。
「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」の本編です。
アカウント移行のため再投稿しました。
ベースそのままに加筆修正入っています。
※イチャラブ、3P、レイプ、♂×♀など、歪んだ性癖爆発してる作品です※
※倫理観など一切なし※
※アホエロ※
※ひたすら頭悪い※
※色気のないセックス描写※
※とんでも展開※
※それでもOKという許容範囲ガバガバの方はどうぞおいでくださいませ※
【圭吾シリーズ】
「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」(本編)←イマココ
「極上オメガ、前世の恋人2人に今世も溺愛されています」(転生編)
「極上オメガ、いろいろあるけどなんだかんだで毎日楽しく過ごしてます」(イベントストーリー編)
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
【R18・完結】ショウドウ⁈異世界にさらわれちゃったよー!お兄さんは静かに眠りたい。
カヨワイさつき
BL
20代最後の日、コンビニ帰りに召喚に巻き込まれてしまった、正道晴人(しょうどう はると)と
同時刻、ゲームを買いに来た岡真琴(おか まこと)は神子召喚されてしまった。
2人の神子は不吉とされ、正道は召喚場所から追い出されてしまった。
正道を中心に世界は動き出したかもしれない?!
衝動、正道の異世界物語!
☆予告なしにR 18入る場合入ります。
暴力や無理矢理なのは、なるべくボカした
表現にしてます。
大切なご意見ご感想、毎回うれしいです😆
読んでくださる皆様に感謝を込めて
ありがとうございます❤️
小さな幸せが
たくさん降り注ぎますように❤️
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります
かとらり。
BL
前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。
勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。
風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。
どうやらその子どもは勇者の子供らしく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる