上 下
59 / 122

59 ワシ、欲しいのはアレだけ

しおりを挟む
「リングス領ですか?オルトラ火山の辺りだけで良いんじゃが」

「火山、ですか?」

 うん、火山じゃ。ワシあそこ大好き。あそこがあるからリングス公爵を庇ったようなもんじゃし。あそこに我が家の別荘あるし。もしリングス領から領地を取れるなら絶対オルトラ火山周り押さえる。

 つい3日ほど前にリングス公爵家の取り潰しが決まった。過去のリングス家の犯罪やら汚点やらの証拠が看過できないものばかりだったようで、誰も庇いだてできなかったようじゃ。しなかった、とは誰も言うまいよ。
 我がバンドール家ももうリングス家とは距離を置いたし、ジャネス嬢の婚約者だったカークス殿のマグワイア侯爵家もだしの。あ、カークス殿はわざわざ我が家を訪ねてくださって、カレリオとアルフォンスに色々講義をしてくださったようじゃった、素晴らしい御仁じゃ。特にアルフォンスが農業の素晴らしさに感銘を受けたらしく、カークス殿の事を先生とお呼びしておるらしい。
 そのうち我がバンドールの領地にも足を運んでくださるらしいし、我が家はまるっと大儲けじゃった。

 そして浮いたリングス領を誰が接収するかと言う話で、セブスト殿下でどうだろうか、という事になっておるようだ。

「まあ……オルトラ火山の為ならば。あまり治安の良くないリングス領も仕方なく貰ってやっても良いかのう……」

「リングス領は今一つですか?」

「うむ。オーセン殿の前、セビアル殿も血筋の方での……」

 リングス公爵家はワシの知る限り「やらかし公爵家」で、先祖からの財や、賢女、賢人を娶って何とか繋いで来ておるが……限界が来たのだ。

「リングス領とバンドール領は近接しておってのう……」

 まあ、ワシもあまり領地経営に力を入れてこなかったが、中の人がワタシになった時点で色々頑張っている。

「リングス領からならず者や魔獣の侵入が多くて……」

 と、報告書が来ておった。リドリーに頼んで数人鍛えて送り込んだが、なかなか手が回らんと嘆いていたなぁ。

「じゃが、オルトラ火山は欲しいのぅ~~」

「ダグラス様、何故そんなに火山に拘るのですか?何か良いものでもあるのですか??」

 はて?異な事を!何故、殿下はお知りにならんのか?オルトラ火山の素晴らしさを!!

「何故って当然じゃろう……?オルトラ火山の麓町にはオルトラ温泉郷があるじゃろ!あそこの湯は腰痛、肩凝りに良く効くんじゃぞ?」

「……すみません……あまり腰痛にはならないもので」

 しもうた、年寄りの大人気スポットじゃったんだ!オルトラ温泉郷は……。

「でも良いですね!温泉!一緒に入りましょう!」

「え、嫌じゃが?」

 ワシらはオルトラ火山の視察に出かける事になりそうじゃった。嫌じゃ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アダルトショップにムチムチボディのお兄さんが来たから

えのき
BL
アダルトショップ店員(大学生)×黒髪童顔サラリーマン

僕のお兄様がヤンデレなんて聞いてない

ふわりんしず。
BL
『僕…攻略対象者の弟だ』 気付いた時には犯されていました。 あなたはこの世界を攻略 ▷する  しない hotランキング 8/17→63位!!!から48位獲得!! 8/18→41位!!→33位から28位! 8/19→26位 人気ランキング 8/17→157位!!!から141位獲得しました! 8/18→127位!!!から117位獲得

俺のスパダリはギャップがすごい 〜いつも爽やかスパダリが豹変すると… 〜

葉月
BL
彼女に振られた夜、何もかも平凡な『佐々木真司』は、何もかも完璧な『立花蓮』に、泥酔していたところを介抱してもらったと言う、最悪な状態で出会った。 真司は蓮に何かお礼がしたいと申し出ると、蓮は「私の手料理を一緒に食べていただけませんか?』と言われ… 平凡なサラリーマンもエリートサラリーマン。住む世界が違う二人が出会い。 二人の関係はどう変わっていくのか… 平凡サラリーマン×スパダリサラリーマンの、濃厚イチャラブストーリー♡ 本編(攻め、真司)終了後、受け蓮sideがスタートします。 エロ濃厚な部分は<エロス>と、記載しています。 本編は完結作品です٩(๑´꒳ `๑٩) 他にも何点か投稿しているので、もし宜しければ覗いてやってください(❃´◡`❃)

嫁ぎ先は青髭鬼元帥といわれた大公って、なぜに?

猫桜
BL
はた迷惑な先の帝のせいで性別の差なく子が残せるそんな国で成人を前に王家から来栖 淡雪(くるす あわゆき)に縁談が届く。なんと嫁ぎ先は世間から鬼元帥とも青髭公とも言われてる西蓮寺家当主。既に3人の花嫁が行方不明となっており、次は自分が犠牲?誰が犠牲になるもんか!実家から共に西蓮寺家へとやってきた侍従と侍女と力を合わせ、速攻、円満離縁で絶対に生きて帰ってやるっ!!

【完結】白雪姫(男)に転生したけど、王子様より狩人に惚れたので物語改変します

百日紅
BL
失恋に涙したその日。交通事故で命を落とした俺は、男のまま“白雪姫”に転生していた。

王子の俺が前世に目覚めたら、義兄が外堀をやべえ詰めてきていると気づいたが逃げられない

兎騎かなで
BL
塔野 匡(ただし)はバイトと部活に明け暮れる大学生。だがある日目覚めると、知らない豪奢な部屋で寝ていて、自分は第四王子ユールになっていた。 これはいったいどういうことだ。戻れることなら戻りたいが、それよりなにより義兄ガレルの行動が完璧にユールをロックオンしていることに気づいた匡。 これは、どうにかしないと尻を掘られる! けれど外堀が固められすぎてて逃げられないぞ、どうする!? というようなお話です。 剣と魔法のファンタジー世界ですが、世界観詰めてないので、ふんわりニュアンスでお読みください。 えっちは後半。最初は無理矢理要素ありますが、のちにラブラブになります。

潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話

あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは マフィアのボスの愛人まで潜入していた。 だがある日、それがボスにバレて、 執着監禁されちゃって、 幸せになっちゃう話 少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に メロメロに溺愛されちゃう。 そんなハッピー寄りなティーストです! ▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、 雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです! _____ ▶︎タイトルそのうち変えます 2022/05/16変更! 拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話 ▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です 2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。   ▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎ _____

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

処理中です...