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24 ワシ、勘違いが怖い

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「そ、そりゃ確かにカレリオそっくりの人間があの足輪を外した瞬間に爺さんになったのは気を失うほどびっくりしましたよ!ええ、そりゃもう!」

 あの時、ワシは知らんのだが殿下の部屋に突入したリドリーは無理矢理殿下をひっぺがし

「あんたが抱いてたのはダグラス様だーー!」

 と、姿変えの足輪をむしり取ったもんだから、ワシは元に戻るし殿下は

「ひゅ?!」

 と、変な声をあげて倒れるしで大変だったらしい。でもワシ、一欠片も悪くない。殿下も気を失った事で静かに事後処理をし、ワシは迷惑料とカレリオを自由にする事と、我が家の不正を揉み消す事で手を打ったのだ。
 炭鉱行きを回避したのはワシの尻だったと言うとんでもないオチがついたのだが、まあ……納得はしておった。

「わ、忘れられないのです!寝ても覚めても思うのはあなたの事ばかり!お願いです!ダグラス様、私の婚約者に!」

「で、殿下、お気を確かに!ワシはほれ、この通りの老人です故」

「そんなのもう知ってます!ええ、隅々まで!」

 そ、そのようですな。

「それでも!なお!あなたが!好きだ!結婚して下さい!!一生大切にします!」

「ひっ!」

 何というか鬼気迫る殿下の求愛にワシは青くなる。ほ、本当にどうしたんだ?!この人!

「お願いします!ダグラス・バンドール様っ!」

「わ、ワシはもうジジイだしっ!た、助けて、助けてくれ!リドリーーー!」

「大旦那様様っ!セブスト殿下!大旦那様の手を離して下さい!」

「嫌だーー!承諾してくれるまで離しませんっ!」

「折れるー!脆い骨が折れるーーー!」

 結局屋敷から箒を持ったメイド達が走ってきて

「帰って下さいーー!」

「うわっ!」

 殿下は箒で叩かれて帰って行った。メイド強い、メイド強い……!

「了承いただくまで何度でも来ますからね!」

「無理じゃ!ワシはもう歳!」

 すると、心得たとばかりニヤリと笑う。

「ふ、歳さえ何とかすればよろしいのですね?」

「何を言っておるんじゃ……一番どうにもならん所じゃろ……」

 セブスト殿下はまた植え込みを飛び越えてやっと帰って行った。

「わ、若人の一時的な気の迷いじゃよな?リドリー……」

「そう、信じておりますがね」

 ワシはしばらくお庭恐怖症が発病した。庭、怖い。


「ええ、セブスト殿下は毎日やって来られまして、お祖父様に会わせろと。あまりのしつこさにメイド達に箒で叩かれておりますよ」

 カレリオが苦笑して言う。

「カレリオ……」

 カレリオの内心はとても複雑だろう。あれだけ慕っていた殿下に冷たくされ、捨てられたようなもの。泣く泣く婚約を解消すれば、当の殿下は何故か自分の祖父に執着しているなんて。

「ふふ、もう殿下の事は良いんです。私は今、領地の勉強が楽しくて。覚える事が沢山あってやりがいもありますし……アルフォンスが一緒にいてくれますから……ね?」

「はい、カレリオ様。一緒に頑張りましょうね」

 神子の攻略対象者であるはずのアルフォンスだが、学園と言う神子との接点を失うと、人が変わったように穏やかだ。
 もしかしたら、こちらのアルフォンスが真のアルフォンス?

 そしてどうも、カレリオとの距離が近い、と言うかピッタリ寄り添ってる?肩なんか抱いちゃって、あれ?そう言う感じ?

「ん、んー……仲良く、やっておるのだな?」

「はい!」

 カレリオが笑った。とても良い笑顔で。キラキラと弾む様な瑞々しい笑顔。それを少し目を細めて、眩しそうに見るアルフォンス。カレリオが今年16になってでアルフォンスは18であったかな……。

「カレリオがそれで良いなら良い。お前は自分の好きな事をして良い権利を得たからのう」

「全てお祖父様のおかげです。ありがとうございました」

 うむ、この笑顔の為に頑張ってよかった。ワシの頬も緩むというものじゃ。

 しかし、どうしたもんかのう……。殿下の勘違いが早く収まってくれれば良いが。

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