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6 ワシ、孫の為なら頑張れる

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「お祖父様……」

「カレリオ!」

 あまり学園を休んでもいられませんと、カレリオは登校したが、昼前に護衛のアルフォンスと共に帰宅した。

「熱がございます!すぐ医者を」

 ぶるぶると震えるカレリオをすぐ部屋で寝かせ、医者を呼ぶ。風邪であると診断されたが、今夜は高熱が出るだろうと言われる。わわわしの可愛い孫があああああ!

「メアリー、アメリア、頼むぞ。ワシがいてはカレリオもゆっくり休めまい」

「はい、お任せください」

 静かに寝かせる事、目が覚めたら着替えや、食事の全てをメイド達に任せる。わしは病人の看病が上手に出来る方ではないからな……。

 カレリオの部屋を離れ、護衛のアルフォンスを呼び子細を訪ねた。

「何があった?」

「……噴水に……突き落とされました」

 私は目を見張り、そして脳内検索を完了させる。おや……記憶と違うぞ。

「誰に、だ?」

「……神子です」

 護衛としてつけたアルフォンスが少し離れた時だったと言う。噴水の前で神子に声をかけられたカレリオは2.3言話し、突然神子に突き飛ばされたようだ。

「お止めするとこは出来ませんでしたが、見てはおりました。申し訳ございません」

「……まさか、神子がそのようなことをするとは誰も思うまい……」

 ゲームと逆なのだ。あの「ねこ☆てん」で、神子であるプレイヤーはカレリオに突き飛ばされ、噴水に落ちるイベントとスチルがあるのだ。 
 勿論、1番好感度が高い攻略対象者がやって来て助けてくれるのだが……。

「その時、殿下は如何なされた?」

「勝手に落ちた、と言う神子の言葉を間に受けてそのまま……」

「なんと……」

 噴水に落とされた事もショックだったであろうが、背を向けられたカレリオのショックはいかばかりか……なんと酷い事を!

「陛下に御目通りを願う、至急に」

「分かりました」

 新しい執事のサミュエルが急いで手続きと馬車の用意に行く。護衛のアルフォンスすら俯いてしまった。実はアルフォンスは攻略対象者の一人なので、ハーレムエンドを狙っている神子に気持ちが傾いているはずだ。しかし、そんなアルフォンスを俯かせるほど、神子の行いは酷いものであった。

 行かせなければ良かった、後悔しても遅い。真っ赤な顔ではぁはぁと苦しい息をするカレリオ。あまり体は丈夫な方ではないから……。

「お前は引き続きカレリオの護衛を頼む。部屋に花でも持っていってくれ。あの子は意外とピンクの花を好むから、庭師に言って切ってもらってくれ」

「分かりました、大旦那様」

 いくら神子に気持ちが傾いているとはいえ、アルフォンスはバンドール家のカレリオに仕える護衛なのだ。罪悪感もひとしおであろう。

 そして流石にジジィは怒ったぞ!馬車は腰が痛いが孫のためなら頑張るぞ!!サミュエルはすぐに手配を整え、先ぶれも出してくれていた。うむ、サミュエルは使える男よ、ボーナス出そう。


「陛下、先日の答えを受け取りに参りました」

「バンドール翁よ、セブストにはカレリオの助力が必要なのだ」

「ならば!噴水に突き落とされたカレリオに何故手を差し伸べていただけない?!」

 どう言う事なのか、と尋ねる陛下にあった事を話すと目を丸くしている。

「信じられぬ……息子はカレリオとの仲はいつも通りだと……」

「いつも通り、冷たい態度ですね。婚約者とは何なのかと疑います。もうカレリオの精神は限界です。婚約が解消されるまで、殿下には会わせませぬ!」

 返事を渋る陛下にジジイは血管が切れそうだ。高血圧舐めんな!

「しかし、セブストからも、護衛からも……いつも通りだと……」

「確か護衛はファルマン騎士団長の息子でしたな、トレヴァー・ファルマンも神子殿と懇意になされてカレリオを邪険にしております故、不利な事は言いますまいよ」

 神子はハーレムエンドでも狙いだろう、きっとそうだろうな。ゲームであれば私もハーレムエンドは最終的に狙うだろうけれど、ゲームであればね。しかしこの世界でハーレムなんてどうする気なんだろうか、おばちゃんにしてもじじいにしてもかなり心配だよ?
 苦虫をかみつぶしたような顔で陛下は近くの侍従に言葉をかける。

「……あれを、バンドール翁に」

 何かを用意してあったのか、陛下はきらきらと光り輝く輪っかを持ってこさせる。うん、ゲームでこのアイテム見たな?確か……。

「『姿替えの足輪』じゃ……ダグラス・バンドールよ、お主がそこまで言うならお主が我が息子がどのような行いをしておるか直接見て来てはくれまいか?」

「……ま、まさかこの爺が、孫の姿を模して学園に潜入せよと仰せか……!?」

 嘘だろ、腰が痛いのに!?15.16のぴちぴちの若者と一緒に過ごせと!?

「……ならば、「身体強化の腕輪」も……」

「……そこまで言われるのならば分かりました。この爺、老骨にムチ打って、孫の為に一働きさせていただきます」

 とんでもない事になってしまった……。


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