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54 涙の果てに

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「あっ!あっ!やああっ!」

 俺を好きに扱って、疲れ切って枯れにに枯れ果てた……その果てにスクルドは大声で泣いた。

「うわああああああ……っアッシュ、ウルズが……兄ちゃんが死んじゃったあああ!」
「うん……俺もなんとなく分かったよ……スクルドだけでも生きててくれてありがとう」
「アッシュ、アッシュ……っ」

 スクルドは俺に抱き着いて泣きに泣いた。良かった、泣けるだけ感情が残ったんだな。もしかしたらその辺りウルズがスクルドを守ったのかもしれない。
 デカい図体で子供みたいに泣きじゃくって涙なんだか鼻水なんだか精液なんだか知らないけど、いろんなものをつけられた。
 

「アッシュちゃん……なんか凄い魔王様になっちゃったんだね……」
「ごめんな?スクルドは俺の勇者だから、引っ張られてレベルあがってんだろ? 」
「うん……なんか気持ち悪いレベルになってる。これじゃ俺も立派な魔王だよ」

 ベッドで抱き合いながら起こったことを報告し合う。俺のレベルがバカみたいに上がってしまったから……魔王のレベルで成長する魔王ダンジョンが馬鹿みたいに広くなった。天にも届くような魔王城が完成している。俺達の居住区も物凄くきれいになって……現代を通り越して近未来の設備になっている気がする。人感センサーとか付いてんだぜ?

「レベルはさ、高いんだけど。俺……弱くない? 」
「……弱い! 」

 なんとレベルだけはバカ高いけれど、筋力とかそういうのは以前と全く変わらない。なんでだ!

「そのばか高いレベルですべての攻撃は通らないんだけれど……捕まって組み敷かれたら振りほどけないとか」
「わっ重い、重いよ、スクルド! 」
「怪我を負わされても自動回復の数値が高すぎて即治っちゃうとか」
「い、痛いのは痛いんだから止めて欲しい! 」
「体はいつも通りエロい」
「それ関係なくない!? 」
「まとめると、アッシュちゃんは特に変わらない」
「嘘だろ?!何なんだよ、このインフレしたレベルの意味は!! 」
「さあ?途中までは意味があったろうけど、神の介入でおかしくなったね」
「何のつもりなんだ!一体っ」

 あの時システムに割り込んで来た存在。多分そいつの気まぐれで俺たちはこの世界に魔王として閉じ込められている。俺達は神の遊びに強制的に付き合わされているんだろうな。

「でも、すぐ回復するのは良いよね?イッてもちゃんと復活できる」
「できねーよ、バカ」
「あれ、できないの? 俺はすぐ勃つよ! 」
「何回気を失ったと思ってるんだ!脳が焼き切れる! 」
「頭のほうはすぐ治りそうだから、いっぱいイけばいいんじゃね?」
「鬼か」
「女神かな?」

 自分で言ったよ、こいつ。だいぶ軽口を叩けるようになってきたスクルドに少しだけ安堵する。でも俺からずっと離れようとしない……きっと怖くてたまらないんだろうな。24時間スクルドが絡みついてくるけれど、割と好きにさせている。それでも寂しいと感じるのはウルズがいないからだ。
 代わりにという訳じゃないけれどその隙間に入って来る奴がいる。

「わあああああっ!スクルドはアッシュのオマケで強くなったくせに狡い!」
「黙れ、クソガキ。勝てばいいんだよ勝てばぁ」
「うわああああっ」

 ロキが至近距離をウロウロしている。俺がセリカを食ってしまったことで、セリカの魔王ダンジョンが俺の支配下にはいった。
 遠く離れた土地にあったはずのセリカの魔王ダンジョンが、俺のダンジョンとくっ付いた。何だろうあの青猫ロボのどこでもなんちゃらで繋がってしまった感じだ。単純に同族を喰ったんじゃないせいだろう。
 それと俺とロキとの間にも不思議な絆が結ばれている。まあこれはセリカに何とかすると言った手前、何とかしないといけないものなんだがな。

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