上 下
46 / 59

46 魔王セリカの勇者

しおりを挟む
「……さ、攫った魔王は、見当たらないようだけど……元の場所に返してきたのかい? 」

 どういう状況の魔王を攫ったかは分からない、でもここにいないのなら元に戻した、あるいはーー。

「いや?セリカに喰わせたよ?攫ってきた当初は嫌がって泣いて喰われるのも拒否したけど、可愛がってやったらそのうちみ~んなセリカに喰われることを選んだし、それに勇者をぶっ殺してから攫ってきたからね。守ってくれる勇者がいない魔王なんて死ぬしかないじゃん」
「……セ……セリカは他の魔王を、喰う事に同意したのか……?」

 魔王の同族喰いはお互いの同意がなければ喰えないはずなのだ。

「んー?ある程度セリカの意識に介入できるから、ちょちょいっとね。最初はちゃんとセリカの意志で喰ってたよ?連れてきた魔王達が泣いてセリカに縋ったら、喰ったもん。まあ一人喰うごとにセリカがおかしくなっていったんだけどね! 」

 ロキはそれはそれは楽しそうに壊れてゆくセリカの様子を教えてくれた。

「……何人くらい……魔王を、攫った?」
「さあ、覚えてないや。飛べるようになってからは結構遠くまで行けるし、勇者はね、なんとなーくわかるんだよね、魔王の居場所。便利だよねぇ」

 どうする?どうすればいい?俺は死を願った、死にたいと思った。でもこのロキの傍で死にたいとは思わない。俺が死ぬならウルズかスクルドに殺してもらいたい……それかコノハに喰われて死にたい。ロキはだめだ……!

「さぁて、ちゃあんと教えてあげたし、もういいでしょ~?アッシュ、俺とエッチなこといっぱいしようね、大丈夫すぐに元の勇者の事なんて忘れちゃうから。俺、結構凄いんだよ?魔王が泣いて殺してって叫ぶんだからね」
「ひっ……」

 どうする?どうすればいい?助けて……こんな奴に殺されたくない!助けて。

「ウ、ウルズ……スクルド……たすけて……」

 なるべく小さな声で、ロキに聞こえないように呟いたつもりだったけれど、ロキの顔が不機嫌に変わる。

「あー今度は男の名前を呼んだね?これはいーっぱいいーっぱいお仕置きが必要だね?片足くらい千切られても文句いわないでくれよ?俺、怒ったからね~?」

 しまった、ロキの機嫌を損ねた。あ、足を千切る……?嘘だろそんなことウルズ達だってしなかった。激しくヤりすぎて血が出た時も治るまで待っててくれたのに、どうしよう、俺……殺されちゃう!

「や、やだ……」
「う……う~ん!イイ!その怯えた表情いい!はぁ、その顔だけでイけそー……アッシュいいね、今まで会った魔王の中で最高だよ、コノハより俺はアッシュ派だなあ~あーかわい……どんなエッロい声あげるの?いっぱい聞かせてね」
「っ……」

 まずい、本当にまずい、ロキは……今まで会った人間の中で一番ヤバイ……。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺(紗子)
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

ある日、人気俳優の弟になりました。2

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...