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56 俺って超優しいじゃん

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「試すか」

「いや、流石にそれは無理!」

 オルネラ嬢が帰った直後、半分廃墟になったフィンの屋敷。その部屋の中にあったベッドを親指で指すイスは大馬鹿だと思う訳。
 普通にない!だってオルネラ嬢は帰ったけど、まだイスの周りは十重二十重に騎士達が囲んでるんだよ?!この衆人観客大ギャラリーの中でナニしようっての?
 ばっかじゃねーの?!

「大丈夫だ。炎の息一つですべて消し炭になる」

「中々非人道的なこと言ったね!」

「人間ではないしな」

 竜だな?いや待てよ?

「フィン成分が入ったんだろ?多少人間だろう?」

「そういえばそうか。多少人間だったな」

 お前も多少人間、俺は多少人間じゃない人間。まあどっちも息して立ってるしそれでいいか。

「消し炭……!」

 騎士団の皆さんの方が息を忘れて青くなってた。黒くなる前にどこかへ行った方がいいんじゃないかなって心配とかしてみる。

「あの中にさあ……何人か、ほんの何人かくらいフィンに優しかった奴がいるんだ。そいつらまでやっちゃうのはちょっと可哀想じゃないか?」

 そう言うとイスはやっと騎士団員たちの顔を見た。きっと今までそこら辺に生えてる草と同じ扱いしかしてなかったんだろうなって思うよ。

「どれ……本当だ、あいつとあいつ……見覚えがあるな。フィンに色々持ってきた奴らだ。そうだな、殺さないでおいてやるか」

「おーそうしろ、そうしろ」

 俺の言葉に緊張がちょっと緩んだ。騎士団員、全員俺に土下座して感謝したほうがいいぞ!

「そうだな……この近くに白の館があるだろう。そこへ行こう」

「なにそれ?」

「離宮の一つだ。ここから近い」

 フィンの記憶にあるんだろうな、俺はそれがどこにあるかなんて知らないもん。

「し、白の館は……側妃アンヌ様のお屋敷だ……!ま、まさか」

 え?そなの?

「追い出せ、今すぐに。俺達がついた後もあの女がいたら容赦なく消すぞ」

「ひいっ!今すぐ白の館の人間を退避させろーー!」

 騎士団員たちが走り出す。え、イスってば人んちを乗っ取ろうとしてんの……?やだこの子!

「リクト。ポーション作りの道具とか素材とか持っていくぞ。早くまとめろ」

「はぁ?何で……」

 俺が?

「仕方がないだろう、フィンの屋敷は壊れている。ここには住めない」

 お前が壊したんだろう!って全世界からツッコまれるといいとおもう。

「あー……はいはい。お前の収納に全部入れてけばいいんだっけ?」

「そうだ」

 仕方がない。俺は器具を丁寧にひとつづつイスの開けた穴の中に入れていく。その白の館とかに住んでいる奴らが逃げる時間を稼げるようにゆっくりゆっくりしまって行った。俺って超優しくないか??



 
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