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12 忠臣、我慢する

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「か、薫の誕生日までが、が、が、まん、し、ま、うぐぐぐ……っ!」
「忠臣ぃ……っ」
「うがーーーっ!!」

 自覚が生まれたのをきっかけに俺のヒートが始まってしまった。あの忠臣に助けて貰った時もヒートを起こしかけていたみたいだったけど、本格的になったんだ。

「ただおみぃ……」
「あーーーーっ!!」

「駄目だ、忠臣!成人……18歳になるまで我慢するんだろ!」
「忠臣ーー!耐えるのよおおおお!!」
「フーッフーッ!か、かお、カオルウウウウウ!!」

 俺のヒートに当てられた忠臣の方がやばかった。あいつ、パンチで大河内家のカベに穴を開けたぞ……。忠臣がやばいってことで、物理的に遠くのお祖母ちゃんの家に俺のヒートが収まるまで避難していて、帰ってくるときには忠臣のお祖母ちゃんも一緒に来た。

「この子が忠臣がずーっと懸想していた薫君ねえ……小っちゃい時から可愛かったけれど、これはこれは美人になったわねえ~!あー男の子のΩだもんね~最高ね~可愛いわあ!」
「あ、あざ……す?」

 お祖母ちゃんは運動会とか学芸会に来ていたので何度か顔を合わせているけれど、気にいられているみたいだ。お祖母ちゃんは冴子おばさんのお母さんでなんか似てた。

「でしょー!薫君可愛くてねー!流石忠臣って感じよね」
「あざす」

 忠臣も普通の顔をして帰ってきた。冴子おばさんとおばあちゃんがうちの母さんとリビングで主婦のおしゃべりに花を咲かせ始めたんで、俺達は部屋に引き上げた。

「薫……寂しかった」
「あー……俺も」

 言っても5日くらいなんだけど、忠臣の姿を見ない5日は結構長い気がした。

「……俺の服。いっぱい」
「あー……ごめん」

 俺の部屋の一角にはこんもり積み上がった忠臣の服。

「巣だ……」
「あー、なんか気がついたら……出来てた」

 それは嘘だ。寂しくてヒンヒンしてたら冴子おばさんが大量に服を持って来てくれたんだ。

「ほら!薫君!忠臣の服よー!」

 なんかアンパンの顔の人を思い出しかけたけれど、気がついたら部屋の隅にかき集めて埋まってたんだ。

「う……」

 忠臣?泣くほど嫌だったのか……いや、確かに全部しわしわのくちゃくちゃにしちゃったけどさ!

「感動のあまり、涙が」
「意味分からん……」
「薫の巣……永遠にこのまま保管」
「しねぇよ!恥ずかしいっ」

 わーわーやってたら廊下から恵梨香が見ていて冷たい目でみてから

「ふ」

 鼻で笑われた!あんにゃろう!

 とにかく、結婚するとかつがいだとかそういうのはピンとこないが、忠臣が傍にいないと寂しいということは分かった。分かったから多分それで良いんだと思う。だって忠臣と結婚しないと決めたらずっと寂しい思いをしなくちゃいけないんだからな……たぶんそれは、とても嫌なことだと思う。


 
 
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