上 下
7 / 21

7 え、俺、βじゃないの?

しおりを挟む
 自分の部屋のドアの外から声が聞こえて来る。

「忠臣君、薫は大丈夫だったから」
「俺のせいッス、おじさん」
「君も休みなさい。昨日からずっとここにいるじゃないか。おにぎりは……食べたみたいだね」
「美味かったッス。でもそばにいたくて」

 ん?親父と忠臣が喋ってるな?

「その気持ちは分からなくもないが、忠臣君、君まで倒れてしまったらと私達は心配なんだよ。君だってその……私の大事な、む、息子、なんだし」
「お、おじさんっ」
「そ、そこはほら……違うだろ」
「お、お義父さんっ……!」
「泣くんじゃないよ、私達だって君のことが大好きなんだ。家族が心配なのは当たり前だろう……」

 お、お、お、俺は……どこに突っ込めばいいんだ?とにかくベッドから足を下ろして床につけて立ち上がったら、まあちゃんと立てたから物理的にツッコミを入れに行く事にする。

「父さん!忠臣!ちょっと聞きたいことがたくさんあるんだけど!?」
「あ、薫、起きたのか。よかったよか」
「カオ君ッ!!」
「どわあああっ!」

 そりゃおもてぇ忠臣に飛びつかれた俺は倒れるわけだけどさ!

「た、忠臣っ重い!父さん、助けて!! 」
「いやあまあ……ホラ、薫なかなか起きないから忠臣君凄く心配して……忠臣君?」
「カオ君、カオ君!ハァハァ……カオ君~~~!」

 な、なんか様子が変だぞ……?

「た、忠臣君っ!!恵梨香!大河内さんを呼んできて!!母さん忠臣君がアレだ!早く来てくれーー!」
「えっ!行ってくる!!」
「忠臣君!?薫!!く、首、首を守るのよーー!」
「忠臣君ーーー!我慢するんだろ!ステイ、ステイーー!!」
「わあーーー忠臣やめろ舐めるな!ヒイイイ!!」

 北山家はとにかく大騒ぎになったけれど、その後大河内のおじさんとおばさんが忠臣を羽交い絞めにしてなんとか俺は助け出された。しかし忠臣、大河内のおじさんを壁まで吹っ飛ばすし、俺んちの廊下には穴が開いたしで大変だった。


「えーと、結局俺はなんなの……?」
「薫はΩなんだ。知っての通り忠臣君はαだね」

 俺、初めて自分の第二姓を知る……。

「なんで……俺、自分がβだって思ってたの……? 」
「それは……俺が……なんていうか、あの……その……ごめん、あの」

 忠臣がでかい体を丸めて小さくなっている。何か良く分からんが忠臣が駄々を捏ねてそんな風にしたのか??

「俺が、絶対薫のこと、守るから……だから、でも……あの、嫌いに、ならないで、欲しい」
「はあ」

 まあほんっとによくわからん。そんなことより俺がΩぁ?ていうと俺は将来αと結婚して、子供産むの!?うっそー!?

「え?マジで?父さん母さん」

 うちのリビングに父さんと母さん、俺と忠臣、そして忠臣の両親が集まって会議中だ。ていうか事情徴収って感じだ。妹の恵梨香はめんどくさいからパスだそうで、部屋でスマホ弄ってる。

「うん……ほら、証明書」
「わあ」

 そこにはでかでかとΩって記載された二次性証明書があった。

「いやでもほら、薫にはさ忠臣君いるから。まあ、ほら心配とかしなくても」
「いるって……え?俺、忠臣と結婚すんの!?」

 何それ初耳なんだけど!?ばっと振り返って忠臣をみるとなんか凄く期待に満ちた目で見てる。え?何、そんな感じなの!?

「カオ君……」
「昔のあだ名で呼ぶのやめろ、忠臣」
「しゅん」

 しゅんじゃねえよ、この野郎。小さくなっても忠臣はでかいんだから縮まらねえよ?俺は両親たちをぐるりと見て……一番発言権が強そうな人を指名した。

「なあ、冴子おばさん。一体どういうことなのか説明してくれ」
「あー……あのね、薫君。ウチの忠臣さ、君に一目惚れしたんだよね。初めて砂場で一緒に遊んだ時に」
「は……それって」
「3歳ころだったかなー」

 随分昔ですね!

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

溺愛オメガバース

暁 紅蓮
BL
Ωである呉羽皐月(クレハサツキ)と‪α‬である新垣翔(アラガキショウ)の運命の番の出会い物語。 高校1年入学式の時に運命の番である翔と目が合い、発情してしまう。それから番となり、‪α‬である翔はΩの皐月を溺愛していく。

こじらせΩのふつうの婚活

深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。 彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。 しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。 裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。

【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜

MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね? 前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです! 後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛 ※独自のオメガバース設定有り

あなたが愛してくれたから

水無瀬 蒼
BL
溺愛α×β(→Ω) 独自設定あり ◇◇◇◇◇◇ Ωの名門・加賀美に産まれたβの優斗。 Ωに産まれなかったため、出来損ない、役立たずと言われて育ってきた。 そんな優斗に告白してきたのは、Kコーポレーションの御曹司・αの如月樹。 Ωに産まれなかった優斗は、幼い頃から母にΩになるようにホルモン剤を投与されてきた。 しかし、優斗はΩになることはなかったし、出来損ないでもβで良いと思っていた。 だが、樹と付き合うようになり、愛情を注がれるようになってからΩになりたいと思うようになった。 そしてダメ元で試した結果、βから後天性Ωに。 これで、樹と幸せに暮らせると思っていたが…… ◇◇◇◇◇◇

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

獣人王と番の寵妃

沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――

処理中です...