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11 外道アーマー

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兄貴の指示は的確無比で新品同様に生まれ変わった。

〈俺の設計図が奥の棚にある。それ持ってこい〉
「設計図なんてあったんですね」
〈あるさ! 生体部品の配合も書いてあるからな……ってお前と一緒かぁ? やっぱり俺達兄弟じゃねーか!〉
「こんな外道で口の悪い兄は要りません」
〈ほら、口の悪さも一緒じゃねーか!〉
「くっ……」

 というかディアマンテの作った人形達の生体部品はすべて元を辿れば同じ物……ナリスとデッセルの混合品から出来ている。ある意味二人の遺伝子の掛け合わせによる生体……子に類似した物を使用して作られているんだ。ディアマンテはその素材以外を使わなかった……それも気持ちの悪い所であり、私の生体部品もすべてソレであるところもまた気持ちわるいのだが。

「まあ、そのおかげで培養中の生体部品がすぐに使えました」
〈へへっ、悪りぃな! お前用に作ってた奴だった?〉
「どうでしょう? ディアマンテが用意していた物でしたから」

 しかし、こういう修理やメンテナンス依頼が今後もあることを考えると生体部品の培養は必要なのかもしれない。私はディアマンテは嫌いだ。でもディアマンテに作り出された人形達は嫌いではない。むしろ思うまま、望むままに壊れるまで生きて欲しいと思う。人形が生きるというのもおかしいとは思うが、私には彼らの思いが分かるのだからそういうことにしておいて欲しい。
 ディアマンテの研究室の地下にある広大な培養部屋を幾つか稼働させる準備をした方がいい気がして来た。

 クリムの兄貴をゼッペ爺さんの家に持って行く。こっちの家を窓口にした方が何かと便利そうだ。

〈俺、重いぞ〉
「私だって戦闘人形ですよ」

 ひょいっと輝く甲冑を持ち上げて、ゼッペ爺さんの家のリビングに置いた。ここなら玄関から入って来てすぐだから問題ないだろう。

〈……大人五人で持ち上げるんだけどな。操り手が乗ってない時は〉
「だから、こんなナリですが戦闘用なんですってば」

 ほとんど人間と変わらない姿の私。本来なら柔らかい肌も表情豊かな顔も要らない……でもディアマンテは私をそういう風に作らなかった……いや、最初はそうだった。だけれども長い年月をかけてディアマンテは私を人間の見た目に近づけていったのだ。顔も体も……多分、あいつが思い描いた完璧な……デッセルとナリスの息子に作り上げたんだ、気持ち悪い。

「おお……」

 兄貴をここに運んできた男は感嘆の声を上げて満足そうだった。

「持って行って貰って結構ですが、それなりに代金はいただけるんでしょうね? 交換した部品や特殊洗浄剤、技術料だって低くみて貰っては困ります」

 私は淡々と告げる。いくらなんでもタダで見てやることなんてできない。そんな噂が広がったら大変なことになってしまう。それ以前にディアマンテの作品をメンテナンスできるというだけでこの世に何人いるか分からない程の人形師になるのに。

「わが国に一緒に来て頂けますか? 試運転後、お支払い致します……もちろん満足いく額をご用意させていただきます」
「……」

 あまり嬉しい話ではない。敵かもしれない国に単身飛び込むのか?

〈行こうぜ、我が愛しの弟のお時計チャン。なぁに心配するこたぁねぇよ、お兄様の職場をチラッと見せてやるっつてんだ〉
「……分かりました。ご一緒しましょう」

 内情を知る兄貴がそういうのだからなんの問題もないのだろう。私は旅の支度をして、荷馬車に乗り込んだ。
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