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73 宝冠を頂く権利

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「ひいいいっ!」

 朝に俺を起こしに来たメイドさんの悲鳴で俺とフォーリは飛び起きた。

「なんだなんだ。殺気が多すぎて何が何だかわかんねえ!」

「……眠い……」

 眠い目を擦りながら扉からあの「どう見ても息子の部屋じゃないぞ、恋人と濃厚な夜を過ごすための部屋」の中にたくさんの死体が転がっていた……多すぎない……?

「はっはっは!不甲斐なし、不甲斐なし!皆、一握りで死んでゆくわ!」
「然り然り!最近の暗殺者共は心の臓の鍛え方が足りぬ!ちょいと締めればすぐに音を上げよる!」

 なんかムッキムキのおじさん二人が楽しそうに笑ってる……。あのでっかい手で心臓をキュッと締め上げて殺しちゃったんだね……。

「お、俺は従順なナナちゃんのペットの狐ですぅ~~命ばかりはお助けを~~~!」

 フォーリが土下座してる……そんなことしてないで死体を引っ張り込むの手伝ってよ!

「うむ、心掛けや良しであるぞ、狐殿。だが狐殿はこの世の理よりナナ殿を守る使命がある故、安心召されい!」
「然り、然り。我らはどうも物理的にナナ殿をお守りすることが出来ぬ。そこは狐殿が頼りである」

「誠心誠意頑張るので、締めないでぇ~~~~!」

 良いから早く!手伝って!!もう!


「と、言う感じで~大量に暗殺者が送られて来ていまーす。このお城の人はそんなに俺を殺したいの?なんで?」

 なんか朝から良く分からない会議とやらに呼ばれたので言ってみた。フォーリも物理的に守る使命を果たしている間は大丈夫そうなので少し元気になっている。

「……グレイデール、グレイアッシュもそうであると聞き及んでおりますが、この地には宝冠と言うものが祀られております……。王となるにはその宝冠を額に頂かねばならないのですが……封印されている宝冠を取り出せるのは次期王のみ……」

「次期王が……お隠れになれば……権利は……」

「なるほど」

 うーん……宝冠とやらを取り出して、誰かに渡せば……。

「ナナちゃん、宝冠を誰かに上げたら、その人多分殺されちゃうよ。ここの城のはナナちゃんを王にしたいんだから……」

「……えーと……そう、だよねぇ」

「ど、どういう事ですか……?」

 俺とフォーリのヒソヒソ話が偉そうな人の耳に入ってしまったみたい。うーん、毎日毎日死体が増えるのはどうかと思うし、お話してみようかなぁ?

「ま、いいんじゃね?そのおっさんなら信じて良さそうな気がする」

 フォーリの野生(?)の勘にかけてみるか。

「実はですね、俺。この城にたまりにたまった亡霊の皆さんから王様になるように言われてるんですよ……。で、それを邪魔しようとする人達を殺して回っているのが亡霊の皆さんなんで……」

「……ど、どういう事ですか……!?」

 意味が分からなくてもしょうがない事だよね~~。



 
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