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61 誰がそう使っても良い
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「ミレット婆、フォーリはフォーリなんだから仕方がないだろう?」
「そうだよ、フォーリなんだから。私達の言う事なんて聞きやしない」
「子供の頃から自分の陣営に取り込もうと色々画策してもコレだから」
「ほんっとフォーリ兄を仲間に出来れば良かったのに」
「フォーリ兄さんを王にして裏からこの国を取り仕切りたかったのに、全くこちらの思惑に乗ってくれませんしね」
「あはっ!聞いたか?ナナちゃん。俺の親と兄弟ってコレよ!笑っちまうでしょ」
笑う事なんだろうか……えっと兄弟ってそんな感じなのか?俺は兄弟がいた事がないから何とも分からないけれど、仲が良い感じじゃないんだね……。
「まあこの国を潰されると困るからな。3日後には出て行ってもらうか」
「りょーかい。多分戻って来ねーから王位継承権とか捨ててくわ」
「おー分かった」
そ、そんなのでいいのかな……。
「ナナちゃん。しっかりフォーリにくっ付いてなよ。強権派はまだ健在だから」
「どうせミレット婆の派閥がフォーリを無理やりでも王に付かせようとしてんだろ?なあ、婆さん?」
「おだまらっしゃい!フォーリ王子がこの国の王になるのが一番だと占いにも出ておるわ、この役立たず共!」
おーこわ、と他の王子達が肩を竦める。
「ナナちゃんを捕まえて、引き換えに王位につけとかアホなこと考える奴が必ず出るからね。あ、待てよ?私がそれをやっても良いのか?」
1番上の兄と言う人がうーんと顎に手を当てた。
「なるほど、名案だ。フォーリ、ナナちゃんをこっちに寄越せ」
え?何か話がおかしくなってないか……?
「三日後と言わずすぐ出て行くことにしたぜ。わりーな、ナナちゃん。ゆっくりできねえわ」
えっと、俺はどうやら人族が入ったら出られないはずの狐の巣からすぐに出ることが出来そうだった。
「ま、どこもこんなもんだろ」
「いやあ……どうかなあ……」
俺は結局フォーリと馬に乗り、南へ向かう街道をゆっくり進んでいた。あのまま銀狐族のネスフォレストにいるのはどうも困ったことになりそうだし、フォーリもそれは困るという……だよね。
「毛皮目当てに狩られ続けた銀狐族にいくつも不思議な力が授かったけれど、あのミレット婆の一族は未来を覗ける力があってね……当たるんだわこれが」
「……へえ」
獣人の町から離れたので、フォーリは上手に尻尾と耳を隠して、笑うと目が細まる人族の青年にしか見えない。
「最初は、王妃の子供は5つ子である、から始まったね。生まれたらやっぱり5人いてさ。で、真ん中の俺が王になれば国は栄えるって占いに出たって言うんだよ」
「へえ……」
「でも俺は王になんてなりたくねえし、適当に過ごしてたんだけどまあ、周りはほっといてくれないよな。あちこちの国に潜り込んだり、遠くまで出かけてみたりしたけど……ナナちゃんがグレイアッシュとグレイデールから追われるだろうから少し狐の巣でほとぼりが冷めるのを待とうと思ったら駄目だったな」
「……そう、だね。きっと……俺は、探されてるかな……」
あの二国の戦いがどうなったか、ちっともわからないがけれど、もしグレイデールが勝利していれば必ず探されているだろう。グレイデール王の息子が俺だって?そんなの知らないんだけど……。
「……もしかしてグレイデールに保護された方が生き残れるんじゃ?」
「かもな!残念だったね!」
ゲラゲラ笑うフォーリをむっと見る。くそなんだよ、こいつ!ムカつく!
「魅了の尻尾が出てないからって、そんな目でみるなよ~ナナちゃん。俺悲しい」
そうだよ、俺がフォーリと一緒に居なきゃいけない理由なんてないじゃないか!やっぱり隙をみて逃げ出そう。
「そうだよ、フォーリなんだから。私達の言う事なんて聞きやしない」
「子供の頃から自分の陣営に取り込もうと色々画策してもコレだから」
「ほんっとフォーリ兄を仲間に出来れば良かったのに」
「フォーリ兄さんを王にして裏からこの国を取り仕切りたかったのに、全くこちらの思惑に乗ってくれませんしね」
「あはっ!聞いたか?ナナちゃん。俺の親と兄弟ってコレよ!笑っちまうでしょ」
笑う事なんだろうか……えっと兄弟ってそんな感じなのか?俺は兄弟がいた事がないから何とも分からないけれど、仲が良い感じじゃないんだね……。
「まあこの国を潰されると困るからな。3日後には出て行ってもらうか」
「りょーかい。多分戻って来ねーから王位継承権とか捨ててくわ」
「おー分かった」
そ、そんなのでいいのかな……。
「ナナちゃん。しっかりフォーリにくっ付いてなよ。強権派はまだ健在だから」
「どうせミレット婆の派閥がフォーリを無理やりでも王に付かせようとしてんだろ?なあ、婆さん?」
「おだまらっしゃい!フォーリ王子がこの国の王になるのが一番だと占いにも出ておるわ、この役立たず共!」
おーこわ、と他の王子達が肩を竦める。
「ナナちゃんを捕まえて、引き換えに王位につけとかアホなこと考える奴が必ず出るからね。あ、待てよ?私がそれをやっても良いのか?」
1番上の兄と言う人がうーんと顎に手を当てた。
「なるほど、名案だ。フォーリ、ナナちゃんをこっちに寄越せ」
え?何か話がおかしくなってないか……?
「三日後と言わずすぐ出て行くことにしたぜ。わりーな、ナナちゃん。ゆっくりできねえわ」
えっと、俺はどうやら人族が入ったら出られないはずの狐の巣からすぐに出ることが出来そうだった。
「ま、どこもこんなもんだろ」
「いやあ……どうかなあ……」
俺は結局フォーリと馬に乗り、南へ向かう街道をゆっくり進んでいた。あのまま銀狐族のネスフォレストにいるのはどうも困ったことになりそうだし、フォーリもそれは困るという……だよね。
「毛皮目当てに狩られ続けた銀狐族にいくつも不思議な力が授かったけれど、あのミレット婆の一族は未来を覗ける力があってね……当たるんだわこれが」
「……へえ」
獣人の町から離れたので、フォーリは上手に尻尾と耳を隠して、笑うと目が細まる人族の青年にしか見えない。
「最初は、王妃の子供は5つ子である、から始まったね。生まれたらやっぱり5人いてさ。で、真ん中の俺が王になれば国は栄えるって占いに出たって言うんだよ」
「へえ……」
「でも俺は王になんてなりたくねえし、適当に過ごしてたんだけどまあ、周りはほっといてくれないよな。あちこちの国に潜り込んだり、遠くまで出かけてみたりしたけど……ナナちゃんがグレイアッシュとグレイデールから追われるだろうから少し狐の巣でほとぼりが冷めるのを待とうと思ったら駄目だったな」
「……そう、だね。きっと……俺は、探されてるかな……」
あの二国の戦いがどうなったか、ちっともわからないがけれど、もしグレイデールが勝利していれば必ず探されているだろう。グレイデール王の息子が俺だって?そんなの知らないんだけど……。
「……もしかしてグレイデールに保護された方が生き残れるんじゃ?」
「かもな!残念だったね!」
ゲラゲラ笑うフォーリをむっと見る。くそなんだよ、こいつ!ムカつく!
「魅了の尻尾が出てないからって、そんな目でみるなよ~ナナちゃん。俺悲しい」
そうだよ、俺がフォーリと一緒に居なきゃいけない理由なんてないじゃないか!やっぱり隙をみて逃げ出そう。
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