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57 魅惑の尻尾

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「ほーらほら、ナナ。ふわふわの尻尾だぞ?」

「あ……あああ~ふわふわ……」

 俺はあの尻尾の虜になっていた。あったかくてふわふわしていて良い匂いもするし、アレに埋もれて寝るのは最高だった。フォーリの後ろに乗ってしっぽに抱きついていたかったけれどそれはダメだと言われたので、仕方がなく前に乗る。それでもフォーリは尻尾を俺の方に回してくれるので優しくつかんでモフモフを楽しむ。

「……フォーリ様……」

「馬鹿ッ、話しかけんな!」

「もうほっとけ、アレは何を言っても無駄だ」

 何かよくわからないがまた後ろでフォーリの仲間が話している。見れば全員銀狐族で、上へ尖った耳とふさふさの尻尾がある獣人だった。他の人の尻尾も触ってみたい……。そう思ったら

「ナナは俺の尻尾でいいだろ!」

「はい」

 ふわふわに襲われたのでそのまま術中にはまってしまう事にする。凄いな、銀狐族。この尻尾だけで世界征服できるんじゃないのか??いいなあこの尻尾俺も欲しい……。
 最初のうちは夜も馬を飛ばしてグレイアッシュから離れた。お尻は痛いし、疲れて何度も馬から落ちそうになったけれど、3日もしたら追手もかからなかったようで夜は宿で休み、昼はゆっくりに移動している。

「ほら、こっちへおいで」

 ぽすん、ぽすんとベッドを叩くふわふわの尻尾。何故か抗い難くて吸い寄せられるように顔を埋める。

「凄い、気持ちいい……凄い」

「その昔な?」

 フォーリが俺を抱き寄せる。俺は尻尾に夢中で何をされているかいまいちわからない。

「昔々な?銀狐族の毛皮の手触りが忘れられない馬鹿な人族が、俺らを狩りまくったんだ。そして銀狐族は種の存続を神に祈り、聞き届けられた。どうなったと思う?」

「わかん……ない」

 ああ、気持ちいい……ふわふわ、ふわふわ……。

「まず、銀狐が死ぬとこの素晴らしい手触りが一瞬で失われる。分かるか?これは生きている銀狐族の毛だからこそ気持ちいいんだ。だから殺して毛皮は剥ごうものなら毛が抜けてゴワゴワのとても売り物にならないモノになってしまうという事」

「そう……なんだ」

 ああ、頭がぼーっとする……なんだろう、何かおかしいよ……?

「それとな?銀狐族の尻尾には特殊な力があって、人を魅了してしまうんだ。分かるか?ナナみたいに始終触っていると、もう俺のいう事しか聞けなくなる。どうだ?俺に噛まれたいだろう?」

「え……噛まれたらどうなるの……?」

「そのまま俺のつがいになって、一生俺の物になる」

「いっしょう……フォーリの物……尻尾は触らせてくれる……?」

「ああ、好きなだけ」

 ああ、このふわふわがすきなだけ……。

「なら……」

 いいよ、と言おうとした瞬間。俺とフォーリの間でバチン!と大きな静電気みたいなものが弾けた。

「なんだ!?」

「え?あ……」

 神様だ!俺が仕事を手伝っている転生の神様が何かを破裂させたんだ。

「あれ……?俺……」

「ちっ!ナナちゃんはでっかい何かに愛されてんな?魅了解かれちまった」




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