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47 グレイデール王
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「薄紫のグレイデール王族特有の瞳の色が混ざっています。どうも現グレイデール王が若い頃に遊んだ女の一人が生んだようで名前をナナと言います」
「汚らわしい!やはり平民の子ではないの!」
「しかし、ご存じの通り、現グレイデール王には一人も息子がおりませぬ。ナナが唯一の男子です」
「……ほう……つまり王は、我らが宿敵グレイデールの世継ぎともいえるモノを組み敷いて遊んでおるわけか」
「そうなりますな」
あはははは!ソフィアは高く笑った。
「これはこれは!流石われらが王ですこと!何と言う悪趣味!このことをグレイデールの王の耳に入ればどれほど怒り狂うでしょうね!愉快だわ!」
「……」
ソフィア妃に報告した彼女の実家の諜報員はただ頭を下げて黙っている。愉快、で済めばいい。しかし怒り狂ったグレイデール王が攻め込んで来たら愉快で済む問題ではない。かなり長い間グレイデールとグレイアッシュは直接対決はしていない。その間にくすぶり続けた負の感情はどこで爆発するともしれないのに。
「そういう事ならば、我らの溜飲が下がると言う物!なるほどね」
ソフィア妃に危機感はない。彼女は戦争を経験している世代ではなく、伝え聞いた話しか知らない。戦場に出向く訳でもない、ましてや人が死ぬところでさえ見た事がないだろう。グレイデールの恐ろしさを肌で感じた事など一度としてない女は自国の強さを信じて疑わない。
「恐ろしい事にならなければよいが……」
報告をした者の呟きは小さく消えてしまったが、もう種火は燃え広がっていた。
男の子供が生きていた。
その報告に現グレイデール王トライフトは飛び上がりそうだった。
「誠か」
「間違いないかと」
何度も何度も部下に聞き返した。トライフトは前世の記憶と言う物がある。ひとつ前は日本に居た。そしてろくでもない女ばかり選んで寝た。何故ならトライフトの子供を産む女は大抵ろくでもないだからだ。今はトライフトと名乗っている魂は元々はデールと言う。グレイデール最初の王であり、グレイルを割った兄弟の兄の方だ。
彼は勝利を得る為に古代の神と契約を交わし、呪いを受けた。
「お前の愛する者を永遠に我に差し出すべし」
デールは悩みに悩み、そして愛する側近の男を差し出した。彼は喜んで生贄となったが国は半分になった。
「何故だ!何故グレイルの半分しか私は手に入れることが出来ないのだ、約束が違うではないか!」
「お前の魂にはもっと古い呪いがかかっておる。そのせいだな」
そしてデールは永遠に愛する者を失う呪いを背負わされる。
「お前の最愛は必ずお前の息子となる」と。
そしてもっと古い呪い。
「お前の息子は必ずお前の妻に殺される」
デールの魂を持つ者は最愛を妻に殺される運命を背負わされた。倫理観の強い妻を娶れば必ず息子は生まれず、子供は全て娘だった。大抵ろくでもない女が彼の息子を産み、そしていつの時も息子を殺した。何度も息子を守ろうと奮闘したが全て無駄だった。
彼の息子はどう頑張っても母親の手にかかる。いっそ自分が傍に居なければ、と考え離れてみてもやはり殺されているようである。何度も何度も繰り返し、この懐かしい土地に帰って来て……またろくでもない女に手を出した。数年連絡が取れないうちに女はやはり
「子供……ああ、ナナなら殺したわよ!!刺して地獄の穴に落としてやったから生きている訳がないわ!アンタが悪いのよ、全部あんたのせいよ!!」
やはりそうなったか……諦めていたのにそのナナが見つかったという。ナナの母親、アイリスが捨てたという地獄の穴の中から連れ出された青年。薄紫が混じった瞳の色、顔までもトライフトに似ているという。
「は、早く……早く、ナナを保護せよ!!」
「それが……グレイアッシュに連れ去られたと……」
主人たるグレイデールの王に嘘はつけない。それでも報告する宰相の口はとても重い。この現グレイデール王トライフトが自身の息子に向ける熱量は異常であると気が付いていたからだ。
「ほう」
熱量が過ぎる炎は青くなる。青い揺らめきが見えるようだと、宰相は青い自らの顔を更に青く染める。
「汚らわしい!やはり平民の子ではないの!」
「しかし、ご存じの通り、現グレイデール王には一人も息子がおりませぬ。ナナが唯一の男子です」
「……ほう……つまり王は、我らが宿敵グレイデールの世継ぎともいえるモノを組み敷いて遊んでおるわけか」
「そうなりますな」
あはははは!ソフィアは高く笑った。
「これはこれは!流石われらが王ですこと!何と言う悪趣味!このことをグレイデールの王の耳に入ればどれほど怒り狂うでしょうね!愉快だわ!」
「……」
ソフィア妃に報告した彼女の実家の諜報員はただ頭を下げて黙っている。愉快、で済めばいい。しかし怒り狂ったグレイデール王が攻め込んで来たら愉快で済む問題ではない。かなり長い間グレイデールとグレイアッシュは直接対決はしていない。その間にくすぶり続けた負の感情はどこで爆発するともしれないのに。
「そういう事ならば、我らの溜飲が下がると言う物!なるほどね」
ソフィア妃に危機感はない。彼女は戦争を経験している世代ではなく、伝え聞いた話しか知らない。戦場に出向く訳でもない、ましてや人が死ぬところでさえ見た事がないだろう。グレイデールの恐ろしさを肌で感じた事など一度としてない女は自国の強さを信じて疑わない。
「恐ろしい事にならなければよいが……」
報告をした者の呟きは小さく消えてしまったが、もう種火は燃え広がっていた。
男の子供が生きていた。
その報告に現グレイデール王トライフトは飛び上がりそうだった。
「誠か」
「間違いないかと」
何度も何度も部下に聞き返した。トライフトは前世の記憶と言う物がある。ひとつ前は日本に居た。そしてろくでもない女ばかり選んで寝た。何故ならトライフトの子供を産む女は大抵ろくでもないだからだ。今はトライフトと名乗っている魂は元々はデールと言う。グレイデール最初の王であり、グレイルを割った兄弟の兄の方だ。
彼は勝利を得る為に古代の神と契約を交わし、呪いを受けた。
「お前の愛する者を永遠に我に差し出すべし」
デールは悩みに悩み、そして愛する側近の男を差し出した。彼は喜んで生贄となったが国は半分になった。
「何故だ!何故グレイルの半分しか私は手に入れることが出来ないのだ、約束が違うではないか!」
「お前の魂にはもっと古い呪いがかかっておる。そのせいだな」
そしてデールは永遠に愛する者を失う呪いを背負わされる。
「お前の最愛は必ずお前の息子となる」と。
そしてもっと古い呪い。
「お前の息子は必ずお前の妻に殺される」
デールの魂を持つ者は最愛を妻に殺される運命を背負わされた。倫理観の強い妻を娶れば必ず息子は生まれず、子供は全て娘だった。大抵ろくでもない女が彼の息子を産み、そしていつの時も息子を殺した。何度も息子を守ろうと奮闘したが全て無駄だった。
彼の息子はどう頑張っても母親の手にかかる。いっそ自分が傍に居なければ、と考え離れてみてもやはり殺されているようである。何度も何度も繰り返し、この懐かしい土地に帰って来て……またろくでもない女に手を出した。数年連絡が取れないうちに女はやはり
「子供……ああ、ナナなら殺したわよ!!刺して地獄の穴に落としてやったから生きている訳がないわ!アンタが悪いのよ、全部あんたのせいよ!!」
やはりそうなったか……諦めていたのにそのナナが見つかったという。ナナの母親、アイリスが捨てたという地獄の穴の中から連れ出された青年。薄紫が混じった瞳の色、顔までもトライフトに似ているという。
「は、早く……早く、ナナを保護せよ!!」
「それが……グレイアッシュに連れ去られたと……」
主人たるグレイデールの王に嘘はつけない。それでも報告する宰相の口はとても重い。この現グレイデール王トライフトが自身の息子に向ける熱量は異常であると気が付いていたからだ。
「ほう」
熱量が過ぎる炎は青くなる。青い揺らめきが見えるようだと、宰相は青い自らの顔を更に青く染める。
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