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44 素敵な王妃様に
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「ひ」
目を覚ますと、悪霊に落ちたアンヌ妃が俺を憎々しげに睨みつけていた。
あんたのせいで!あんたのせいで!!
部屋じゃないから声は聞こえないけれど、それはそれは恐ろしい顔だった。
「アンヌ妃は毒杯を賜りました」
また入れ替わっていたメイドの1人がそう教えてくれた。別に知りたくも無いんだけど。
「そうだろうね」
俺はほっとため息をつく。死んだら俺に勝てる訳ないのに。
「あなたに関わると皆、死ぬ。死の天使」
「俺は何もしていないよ」
本当に何もしていない。俺に毒の料理を作り、俺に毒の料理を運び……俺に襲いかかって殺されたのに、どうして人に向けた悪意が自分に返って来ると気が付かないんだろう。
「ナナ。どうして料理を食べない?」
「怖くて」
「……おい、お前。何故ナナの食器は銀ではないのだ?誰の指示だ?」
「ひっ!聞いて参りますっ!」
お昼時に珍しく訪ねてきた王様に聞かれたので素直に答える。
「パンは問題ないのだろう?」
「鳥は死にます」
「……」
砕いてまたテラスに撒くと、死ななかったが、麻痺して動かなくなる小鳥が転がった。
青い顔で走ってきたメイド長が
「そちらの方が銀の食器は嫌いだから全部下げるようにとお言いでした!」
俺に縋るような目を向けて来るが、何で俺が助けると思うんだろう?
「そうなのか?ナナ」
「そんな訳ないですよ」
連れて行け、王様は言い「お許しください!」と叫び声がずっと聞こえていた。
「可哀想な私の天使!ずっと側にいてやりたいがこれでも仕事が多くてね」
「……頑張ってください」
「ああ!私の天使!」
熱烈な口付けを、一つ落として王様は帰って行く。
「……放っておいてくれたらいいのに」
俺の望みはただ一つ。放っておいてくれる事。
「さぁて、始めるか」
それでも、メイド達には極力来ないように言ってあるし、用事もない。だから俺は一番目立たなそうな壁に扉を呼び出した。
「あんたのせいで!あんたのせいで!」
「うるさっ!もう良いよ!」
本当にぎゃんぎゃんうるさいアンヌ妃を虫取り網で捕まえた。
「やめて!離して!!」
そして虫かごに詰め込んで、何でも良いや!茶色い風船をくくりつけた。
「あんた、今のままでも立派な悪女だからね!はい、さよならー!」
「な、何よ!悪女って!嫌よ!私は王妃になるのよ!!」
最近悪女のなり手も少ないから神様達は上手に使ってくれると思う。アンヌ妃はそれはそれは完璧な悪女に……彼女の望んだ王妃になるかもしれない。ざまぁされたり、騙されたり断頭台に送られる王妃にだけど。
「にしても、すごーい!」
部屋から見るとこの城の怨念のすごい事、すごい事!
「……なんて子がきたんだい」
「全く現王はとんでもない子を囲ったものだね!」
「うわ……おば……お姉様達お幾つですか?」
女性に歳を聞くのはマナー違反だろうが気になりすぎる!
「わたくしはそろそろ500年になるかしら?」
「わたくしはまだ300年程度ね」
「猛者っ!」
本当に猛者揃いでびっくりした!先につもりに積もったヘドロみたいなドロドロ魂の掃除にかかる。
「げっ!腰まで溜まってる!!」
「場所によってはあなたの背丈なんて埋まるわよ」
「この「天使の間」も中々凄いけれどね?この部屋は王の寵妃の部屋として使われるから」
「歴代の王はあの絵の天使に一度は心惹かれる物よ」
ふぅん?そんなもん??俺はスコップ片手に一生懸命ヘドロ掃除だ。袋に詰めては空に飛ばし続ける。これだけ泥を送ればかなり土地が豊かになるんじゃ??
「しかし、送っても送っても減らないーーーー!」
「おーーっほっほっほ!グレイアッシュの何千年の膿がそんなすぐに綺麗になる訳ないじゃない!」
「ごもっともぉーー!」
それでも俺は何日も何日もかけて溶けてしまった魂の残骸を掻き出しては空に送り続けた。
目を覚ますと、悪霊に落ちたアンヌ妃が俺を憎々しげに睨みつけていた。
あんたのせいで!あんたのせいで!!
部屋じゃないから声は聞こえないけれど、それはそれは恐ろしい顔だった。
「アンヌ妃は毒杯を賜りました」
また入れ替わっていたメイドの1人がそう教えてくれた。別に知りたくも無いんだけど。
「そうだろうね」
俺はほっとため息をつく。死んだら俺に勝てる訳ないのに。
「あなたに関わると皆、死ぬ。死の天使」
「俺は何もしていないよ」
本当に何もしていない。俺に毒の料理を作り、俺に毒の料理を運び……俺に襲いかかって殺されたのに、どうして人に向けた悪意が自分に返って来ると気が付かないんだろう。
「ナナ。どうして料理を食べない?」
「怖くて」
「……おい、お前。何故ナナの食器は銀ではないのだ?誰の指示だ?」
「ひっ!聞いて参りますっ!」
お昼時に珍しく訪ねてきた王様に聞かれたので素直に答える。
「パンは問題ないのだろう?」
「鳥は死にます」
「……」
砕いてまたテラスに撒くと、死ななかったが、麻痺して動かなくなる小鳥が転がった。
青い顔で走ってきたメイド長が
「そちらの方が銀の食器は嫌いだから全部下げるようにとお言いでした!」
俺に縋るような目を向けて来るが、何で俺が助けると思うんだろう?
「そうなのか?ナナ」
「そんな訳ないですよ」
連れて行け、王様は言い「お許しください!」と叫び声がずっと聞こえていた。
「可哀想な私の天使!ずっと側にいてやりたいがこれでも仕事が多くてね」
「……頑張ってください」
「ああ!私の天使!」
熱烈な口付けを、一つ落として王様は帰って行く。
「……放っておいてくれたらいいのに」
俺の望みはただ一つ。放っておいてくれる事。
「さぁて、始めるか」
それでも、メイド達には極力来ないように言ってあるし、用事もない。だから俺は一番目立たなそうな壁に扉を呼び出した。
「あんたのせいで!あんたのせいで!」
「うるさっ!もう良いよ!」
本当にぎゃんぎゃんうるさいアンヌ妃を虫取り網で捕まえた。
「やめて!離して!!」
そして虫かごに詰め込んで、何でも良いや!茶色い風船をくくりつけた。
「あんた、今のままでも立派な悪女だからね!はい、さよならー!」
「な、何よ!悪女って!嫌よ!私は王妃になるのよ!!」
最近悪女のなり手も少ないから神様達は上手に使ってくれると思う。アンヌ妃はそれはそれは完璧な悪女に……彼女の望んだ王妃になるかもしれない。ざまぁされたり、騙されたり断頭台に送られる王妃にだけど。
「にしても、すごーい!」
部屋から見るとこの城の怨念のすごい事、すごい事!
「……なんて子がきたんだい」
「全く現王はとんでもない子を囲ったものだね!」
「うわ……おば……お姉様達お幾つですか?」
女性に歳を聞くのはマナー違反だろうが気になりすぎる!
「わたくしはそろそろ500年になるかしら?」
「わたくしはまだ300年程度ね」
「猛者っ!」
本当に猛者揃いでびっくりした!先につもりに積もったヘドロみたいなドロドロ魂の掃除にかかる。
「げっ!腰まで溜まってる!!」
「場所によってはあなたの背丈なんて埋まるわよ」
「この「天使の間」も中々凄いけれどね?この部屋は王の寵妃の部屋として使われるから」
「歴代の王はあの絵の天使に一度は心惹かれる物よ」
ふぅん?そんなもん??俺はスコップ片手に一生懸命ヘドロ掃除だ。袋に詰めては空に飛ばし続ける。これだけ泥を送ればかなり土地が豊かになるんじゃ??
「しかし、送っても送っても減らないーーーー!」
「おーーっほっほっほ!グレイアッシュの何千年の膿がそんなすぐに綺麗になる訳ないじゃない!」
「ごもっともぉーー!」
それでも俺は何日も何日もかけて溶けてしまった魂の残骸を掻き出しては空に送り続けた。
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