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41 最低な生活

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「あれが我がグレイアッシュの城だ」

 馬車の中から見上げればとても大きくて立派な城が見えた。

「す、凄い……」

「ナナは今日からあそこで暮らすんだ。何の不自由もなく!」

 俺は大きな城を覆い尽くさんばかりの真っ黒で淀んだ亡霊達を見て感嘆の声を上げた。この城、本当に凄い!


「王のご帰還を心よりお喜び申し上げます」

「ああ」

 俺は王様に抱き抱えられている。そして王様を美しく迎えたのは女性。俺を見る事もなく完全に無視している。

「レオルド、「天使の間」の準備は終わっておろうな?」

「あ、あの……天使の間は寵妃アンヌ様の……」

「今日から天使の間はナナに使わせる」

「畏まりました」

 レオルドと呼ばれた人は少しだけ目を見開いてから頭を深々と下げて、そして右手を上げる。遠くで人が素早く動いて何かをしに行ったらしい。

「王!」

 先頭で王様を出迎えた貴婦人が鋭い声を上げる。

「何か?正妃よ」

 冷たい、とても冷たい声が貴婦人に降った。俺ならそのまま縮み上がってしまいそうな声音なのに、貴婦人はキッと睨み返した。

「あれほどまでに重用していたアンヌ妃を下がらせるのですか!」

「そうだ」

「王!」

「私のやる事に指図するのか?正妃よ」

 貴婦人は正妃様だったようだ。この2人の間に愛や信頼はないらしい。

「嫌よ!どうして私が天使の間を追い出されなくてはならないの!?この部屋はアリディス様の1番のお気に入りの部屋なのよ!」

 遠くから女の人の金切り声が聞こえる。

「そうです。天使の間は王の1番のお気に入りの部屋です。そう言う事なのです、アンヌ様」

「わ、私は!私は捨てられると言うの?!」

「……捨てられはしませんよ。ただ1番では無くなるだけです」

「嫌よ、嫌ーーー!私が!私が1番アリディス様に愛されているのーーーーっ!!」

 女の人の叫び声が響いて来る。こ、怖い……俺はなんて所に連れてこられたんだ。

「ナナ?大丈夫だぞ?私に任せておきなさい」

 何が大丈夫なもんか!俺はそれでもどこにもいけずに、天使の間に連れて来られていた。

 美しい調度品。若いお嬢さんが好みそうな白を基調とした綺麗な部屋だ。壁に大きな天使の絵が描かれた絵が掛かっていた。
 金髪の青年の背中に大きな白い翼が付いている。天使だから子供の天使かと思えばここの天使は青年だった。

「ナナに似ているだろう?だから私は君が天使だと思ったんだ」

 似て……いないよ。ただ金髪の男だと言うことだけしか類似点がない。でもきっとこの王様がだと言えばなんだ。

「ナナは若い女が苦手だったね。メイドも年嵩の者をつけたから欲しいものがあったら何でも言いなさい」

「あ、ありがとうございます……」

「またあとでね?」

 俺の最低な生活が始まった。

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