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23 死人に口有り

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「死体から魂を引き出して話が出来る?ちょっと待ってください!」

 ロベル副団長は慌ててどこかへ走って行き、部下に手伝わせて死体を一つ運んで来た。

「うわぁ……」

 数々の死体を扱って来た俺でも引くくらいの拷問の跡がある体だ。

「結局何も喋らず死んだ。ナナ、引き出してくれ」

「はぁい」

 部屋の中に投げ込まれた死体からずるっと魂を引き出した。

「てめぇ!余計な事してんじゃねぇ!」

「きゃー!」

 魂に怒られた!良くあるから慣れっこだよ。俺は気にせず引き抜いた男の魂に話しかける。

「名前とか教えてよ」

「……ルドルフ。赤牙のルドルフって言えば大体通る」

「赤牙のルドルフさんだってー」

 団長と副団長がざわりと揺れて、俺はルドルフに首を掴まれた、気持ちになる。だってルドルフはスケスケだもん。俺には触れないんだよ?

「てめー!何、あのクソ野郎どもにチクってんだよ!殺すぞ!」

「殺すのは無理かなー?君は死んじゃってるからねぇ。死者に俺は殺せないよー」

 チッ!とルドルフは悪態をつくけど、

「そうだな。生きてる時にゃ一捻りだろうが、今じゃお前に勝てそうもねーわ!クソが!」

 魂はドカリと胡座を組んで俺の横に座った。

「ねーねー?どうしてこんなに拷問されたの?拷問されるの好きなの?」

「俺はそう言う趣味はない!!」

「じゃあこの騎士団の拷問する人の趣味かな?」

「我が騎士団にそんな奴はいない!」

 これは外から団長が怒鳴って来た。あ、うん。

 俺の声は外にも聞こえる。でも魂の声は外の人間には聞こえない。そう言うものらしい。

「その死体……まさか赤牙のルドルフだとは知らなかった……が、敵軍の拠点や数を喋らせようとしていたが口を割らずに死んでしまった。なかなか強情な奴だと関心したが、なるほどな」

「ふーん。そういうのって死後も守りたい物なの?」

 俺がルドルフに聞いてみる。因みに外の音もルドルフには聞こえているようだ。

「うーん、死ぬ前までは守らなきゃ!って思ったが今となってはどうでも良くなって来た。教えてやるよ、俺もこの膠着した戦いはどうかと思ってたんだ」

 あっさりルドルフは墓の下まで持っていく予定だった情報を喋り、副団長は慌ててメモを取って、作戦会議の準備にかかる。

「ほんっとに恐ろしい力だよ、ナナは」

「へ?そうですかねぇ??」

「おめーナナちゃんっていうの?可愛いねー!生まれ変わったらヤらせてよ!」

 ルドルフは口笛を吹きながらそんな事を言うけど

「俺、20歳くらいだよ?さっさと転生の扉を潜っても歳の差あるよー?きっとルドルフがエッチしたくなる頃、俺、おじさんだよ」

「んー?40近いのか……おめえ、ガキっぽい顔だし多分イケる!」

 いや、勝手に何を言ってるのか……。

「まあ、同じ世界に生まれたらね?早く生まれ変わりたいなら、さっさと転生の扉を通らないと。スキルからみよっか」

 ルドルフのスキルは戦闘に役立つものばかりだ。

「わあ凄い!剣の才がレベル7まである。頑張ったんだねえ。あと斥候が5、指揮官は3。魂の器もかなり大きいし、すごーい」

 ルドルフは褒められて鼻を高く伸ばしている。

「あ、料理マイナス5だって!味の違いが分からない男だ」

「うるせー!」

「モテなかったでしょ?」

「黙れ!生まれ変わったらどろんどろんのぐっちゃぐちゃに犯してやる!」

「きゃーこわーい」

 ルドルフはスキルを大体そのまま持って真っ赤な風船に捕まって飛んで行った。

「怖いなー本当に生まれ変わって来そう」

「ナナは……死者とならたくさん喋るんだな」

 黙って俺達のやり取りを見ていた団長さんはボソリと呟いた。

「だって、死者は俺を殺せませんし。生きている人間は怖いですよ」

「そうか……」

 俺にはそうだと言うだけかもしれないけれど。

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