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22 悪意と

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 ユーリはとてもムカついていた。元々可愛い顔立ちをしていたし、周りからちやほやされて育った。
 貧乏子爵家の三男に生まれたユーリは家督は継げず、かと言って特に勉学でも、魔法でも優秀な成績を収めることが出来なかったから……少しだけ上手かった剣を活かして騎士団になんとか入る事が出来た。

「くそっ!」

 そして、そう言う役に就く事は想定内だった。遠征先での性欲処理……でも団長クラスと仲良くなれる。

「ユーリは団長のお気に入りだから」

 そう仲間内から言われるのも自己満足感を増したし、少しガサツだったが団長のマークスは上手かった。
 
「今日も良かったよ」

 意外と優しい声もかけてくれたし、ユーリをモノ扱いもしなかった。だから良かったのに!

「結局初物が良いなんて!」

 あの扉から少しだけ見えた金髪の男は組み敷かれ

「いたいぃ……」

 演技ではなく本気で泣いていた。本当に初めてだったんだろう。初めてを捧げて、その地位を得たのか。
 ユーリの初めてはいつだったか、もう覚えていないが、入隊の頃だったか……。

「ねえ!あいつムカつかない?!ずっと団長達の部屋にいるんでしょ?!食事も運ばさせてるって!」

 一緒に専属を外されたジェリスを捕まえて、同じ気持ちだろうと話しかけてみたのに

「別に……俺、1人とするよりいろんな人とする方が好きだからなぁ」

「はあ?!信じられない」

「それにあいつ、なんか知らないけど鎖で繋がれてるんだよ。食いに来れないんだから運んで貰わないと死ぬだろ」

「鎖ってそんなやばいの?!」

「さあ?腕力はめちゃくちゃ弱いって話だけど、詳しいことは団長に聞けば?」

 あっさりいなくなってしまった。

「聞ける訳ないだろ!」

 ユーリのイライラは日に日に募っていった。

「死体漁りの癖に!」

 黒い思いがぐるぐると渦巻いて行く。

 そんな思いにナナは気付く事もなく、請われた時に体を開き、後はいつも通り死体から魂を剥がし、スキルを振り分けていた。

「ナナ。お前とんでもない事してるな?」

「へ?」

 部屋の扉の外で団長のマークスがじーっとナナの作業を見ていた。

「不思議に思った事はないのか?何で自分がそんなことが出来るのか」

「だって神様の手伝いだから」

 さも当たり前のように言うナナに団長は頬杖えの腕からズルリと顎を落とす。

「お前は!お前にはこの世の常識がないのか!」

「あまり……」

 10歳くらいの時にこの体の魂を入れ替わったけれど、記憶の大半は失われていた。だから良く分からない。
 勿論地獄で教えてくれる人なんかいるはずもない。

「恐ろしい奴!」

 そう言われてもピンと来ない。所変われば常識も変わるだろうに。
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