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「ロベル副団長、アレは不味い」

「私もそう思います」

 二人は頭を抱えた。ここずっと戦争が続いて、この前線基地に敵兵の死体が溜まりすぎた。軽い気持ちで処理をさせる為に人間以下と言われる人間を連れて来たのに。
 邪魔になればすぐ始末し、後腐れなく使い倒す予定だったのに、アレは使えすぎた。

「まずなんなんだ?あの部屋は」

「……分かりませんがとにかく使えます。生き物以外はなんでも入る様です……」

「取り出せるのがアレだけという欠点はあるが、恐ろしい能力だ」

 話しているのは連れて来たナナの事だ。まさかナナが特殊な能力を持っているとは夢にも思っていなかった。

「能力だけではありませんよ、あの紫がかった瞳の色。あれは……」

「目の色だけじゃない。実際顔形も似ているグレイデールの王族に!」

 グレイデール王国。一つ国を挟んだ友好国。しかし軍事力は飛び抜けて高く、グレイデールの協力があるからこそ、戦争を有利に続けていられた。

「瞳が紫なのはグレイデールの王族のみ、すぐにアイリスと言う女の素性を調べるぞ!」

「しかし10年前ですか……手がかりがあると良いのですが」

 それでも調べねばならない。もし、あのナナがグレイデールの関係者ならば、地獄街から救い出した騎士隊として、この隊は破格の待遇を受けるはずだ。

「それまであの死体漁りを丁重に隠さねばならん……我が隊でなんとかなる物だろうか?」

 ほかに漏らせば手柄を横取りされる可能性がある。二人はそれを避けたかった。

「幸い、アレをあちこち連れ回してはおりません。何とかなるかと……しかし、洗ってみて驚きました。化けたと本気で思いましたよ、確かに美人の類ですね」

「そうだな……是非とも夜の相手にしたいな。おい、不味くないか……」

 この遠征はかなり長期になっている。こんな前線では娼婦を呼ぶ事も出来ない。そんな干上がった所に、あんな美人が舞い降りたら。
 しかも自由に扱える奴隷スレスレの出てあり、腕っ節は限りなく弱い。いう事を聞かせるのはとても簡単だろう。

「まさか、いや!あり得ますっ!」

「急げ!」

 二人は走って部屋から飛び出した。彼らの飢えた部下達がまだナナに手を出していない事を祈りながら。

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