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53 上弦で俺は訳のわからん賛辞をされる
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「ここにファイと言う人物はいるだろうか」
作戦会議をしていた俺達は訪問者にギョッとした。白夜の翼のクランハウスは闇魔族に見つからないように目立たない場所にある。だからプレイヤー以外尋ねてくる事はないからだ。
「どうする」
「対応しよう、俺が出る」
ヒソヒソと尋ねて来た男に聞こえないように打ち合わせをしてから、俺は姿を見せる。
「俺がファイだが、あんたは何者だ?俺はあんたみたいな知り合いはいねーんだけど?」
竜騎士なら威風堂々としているから、相手もビビってくれるだろうが、錬金術師じゃ迫力が足りない。悲しいが仕方がない。
男はぽかんと口を開けて俺の顔を見ている。なんだよ、目も鼻も口もちゃんとあるぞ?
「え……可愛いな」
「は?」
兵士風の男は訳のわからん事を口にした。おい待て、俺はどこをどうみても男だろうが。何言ってんだ?こいつ。
俺の冷たい一言にハッとしたのか、咳払い一つしてからやっと本題に入った。
「とある高貴な方がファイと言う人物を探している。一緒に来て貰えないか?礼は弾むぞ」
これはなんだ、罠か?それとも何か俺の事を一方的に知っている奴の訳のわからん冗談か?
視線を感じてチラリと後ろを振り返ると、フォートレイが口をぱくぱくさせて、無言で喋っている。
《そいつ、マクファーランの、騎士》
へえ、キースの国ね。キースの野郎戴冠式も行うとか言ってるらしいな。なら見てやった方がいいだろう。
「俺がその高貴な人とやらが探している奴と同一人物か分からんが、礼が貰えるなら行っても良いぞ。その代わりたっぷり頼むぞ」
「そうか!ありがたい。すぐにでも出発出来るか?」
「ああ、ここの家主に少しだけ挨拶させてくれ」
「構わん、表に馬車が止めてある。話が終わったら来てくれ」
ああ分かったと男に伝える。男は笑顔で止まっている馬車へ向かい、俺は屋敷の中の仲間に振り返る。
「ちょっと前入りしてくるわ」
「ファイなら捕まっても素手で牢をぶち破るよな」
おい、俺を何だと思ってんだ?
「あの人、ファイに惚れたな?顔をまじまじと見た後固まってたぞ?」
「マリアルフ何を言ってるんだ?別にプレイヤーなら美形に作るのは当たり前だろ?お前だってモテるんだろ?」
も、モテねーよ!ちくしょう!なんて逆ギレして杖を振り回された。そう言う凶暴な所を治した方が良いだろうな?
「大丈夫?馬車であの人に襲われたりしない?貞操の危機よ?」
「フォートレイ、俺に襲いかかるような危篤な奴は居ない」
フォートレイのよくわからん妄想にはついて行けない。
「大丈夫だ!ファイなら返り討ちだって!」
「でも急に押し倒されたら……なし崩しで……」
「ねーって!ファイなら、ねーよ!あははは!!」
ない話だが、そこまで大笑いされると腹が立つ。レクシーの鳩尾にパンチを喰らわすと腹を抱えて蹲る。ざまーみろ。
「んじゃあ。お先、な」
「分かった。くれぐれも一人で無茶はするなよ?」
騒ぎを聞きつけて現れた時透に手を振り、俺は馬車へと乗り込んだ。
別にしばらく見ていないキースの阿呆面が早く見たくなった訳でも、あいつが婚約すると言う女の顔を見てみたくなった訳じゃない。
ガタゴトと揺れる乗り心地の悪い馬車に身を委ね、窓の外を見る。クランハウスからマクファーランまでは3日も有れば着くだろう。
「なんと美しい……女神も確たるものか」
「……」
聞こえないふりをしているが、多分騎士だと言う男の賛辞がとても耳障りだ。多分本人は口に出しているつもりは無いんだろうが、ぽかんと開いた口から俺にしっかり聞こえるくらいの小声でずっと呟いている。
なんだ?プレイヤーに会ったことのないクチかぁ?全部聞こえなかったふりをして、流れる景色を見ていた。
作戦会議をしていた俺達は訪問者にギョッとした。白夜の翼のクランハウスは闇魔族に見つからないように目立たない場所にある。だからプレイヤー以外尋ねてくる事はないからだ。
「どうする」
「対応しよう、俺が出る」
ヒソヒソと尋ねて来た男に聞こえないように打ち合わせをしてから、俺は姿を見せる。
「俺がファイだが、あんたは何者だ?俺はあんたみたいな知り合いはいねーんだけど?」
竜騎士なら威風堂々としているから、相手もビビってくれるだろうが、錬金術師じゃ迫力が足りない。悲しいが仕方がない。
男はぽかんと口を開けて俺の顔を見ている。なんだよ、目も鼻も口もちゃんとあるぞ?
「え……可愛いな」
「は?」
兵士風の男は訳のわからん事を口にした。おい待て、俺はどこをどうみても男だろうが。何言ってんだ?こいつ。
俺の冷たい一言にハッとしたのか、咳払い一つしてからやっと本題に入った。
「とある高貴な方がファイと言う人物を探している。一緒に来て貰えないか?礼は弾むぞ」
これはなんだ、罠か?それとも何か俺の事を一方的に知っている奴の訳のわからん冗談か?
視線を感じてチラリと後ろを振り返ると、フォートレイが口をぱくぱくさせて、無言で喋っている。
《そいつ、マクファーランの、騎士》
へえ、キースの国ね。キースの野郎戴冠式も行うとか言ってるらしいな。なら見てやった方がいいだろう。
「俺がその高貴な人とやらが探している奴と同一人物か分からんが、礼が貰えるなら行っても良いぞ。その代わりたっぷり頼むぞ」
「そうか!ありがたい。すぐにでも出発出来るか?」
「ああ、ここの家主に少しだけ挨拶させてくれ」
「構わん、表に馬車が止めてある。話が終わったら来てくれ」
ああ分かったと男に伝える。男は笑顔で止まっている馬車へ向かい、俺は屋敷の中の仲間に振り返る。
「ちょっと前入りしてくるわ」
「ファイなら捕まっても素手で牢をぶち破るよな」
おい、俺を何だと思ってんだ?
「あの人、ファイに惚れたな?顔をまじまじと見た後固まってたぞ?」
「マリアルフ何を言ってるんだ?別にプレイヤーなら美形に作るのは当たり前だろ?お前だってモテるんだろ?」
も、モテねーよ!ちくしょう!なんて逆ギレして杖を振り回された。そう言う凶暴な所を治した方が良いだろうな?
「大丈夫?馬車であの人に襲われたりしない?貞操の危機よ?」
「フォートレイ、俺に襲いかかるような危篤な奴は居ない」
フォートレイのよくわからん妄想にはついて行けない。
「大丈夫だ!ファイなら返り討ちだって!」
「でも急に押し倒されたら……なし崩しで……」
「ねーって!ファイなら、ねーよ!あははは!!」
ない話だが、そこまで大笑いされると腹が立つ。レクシーの鳩尾にパンチを喰らわすと腹を抱えて蹲る。ざまーみろ。
「んじゃあ。お先、な」
「分かった。くれぐれも一人で無茶はするなよ?」
騒ぎを聞きつけて現れた時透に手を振り、俺は馬車へと乗り込んだ。
別にしばらく見ていないキースの阿呆面が早く見たくなった訳でも、あいつが婚約すると言う女の顔を見てみたくなった訳じゃない。
ガタゴトと揺れる乗り心地の悪い馬車に身を委ね、窓の外を見る。クランハウスからマクファーランまでは3日も有れば着くだろう。
「なんと美しい……女神も確たるものか」
「……」
聞こえないふりをしているが、多分騎士だと言う男の賛辞がとても耳障りだ。多分本人は口に出しているつもりは無いんだろうが、ぽかんと開いた口から俺にしっかり聞こえるくらいの小声でずっと呟いている。
なんだ?プレイヤーに会ったことのないクチかぁ?全部聞こえなかったふりをして、流れる景色を見ていた。
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