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42 俺は少し考えなしだった

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「ファイさん!無理っす!お金返せないっス!!もう少し待ってくださいッス!」

 バトルマスターのジャグが俺の前で土下座する。おいおい、そう言うのが良くないんだぞ。

「やめろよ、ジャグ。上から数えた方が早い古参が頭下げんなよ。そう言う所がよくないんだろ?クランの縛りとか規則とか。俺はそういう堅苦しいのは嫌いだけど、今白夜は時透のクランだ。ちゃんとクランマスターの方針に従わなきゃならん」

 でもジャグは隣を指差してヘラッと笑う。

「お願いー!ファイ様ぁ 世界樹の月光ムーンライト・ワンド真打!持ってかないでぇーーー!」

「時透…何やってんの……お前ねぇ、クランマスターだろ」

 ジャグの隣で一緒に土下座する時透には威厳もへったくれもないぞ?

「でも!考えてくれ、ファイ!今それだけの装備を手に入れる方法がないんだ!強いボスクラスに挑むにはリスクが高いし、取引掲示板もない」

「あー課金くじもないしなー」

 そうか……確かに死んだらどうなるか分からない世界だもんな。ウロウロ外を歩くのもどこに闇魔族がいるか分からない。
 そんな中、ゲームの頃みたいに金策だ、と出掛けるわけにも行かない。少し考えりゃわかる事だった。

「頼む!ファイ」

「いや、俺の方が考えなしだった。俺の使ってない装備でもお前らが生き残れるなら使って貰うべきだな……」

 俺はガチャガチャとしまった装備をもう一度取り出した。

「死にたくねぇのは皆一緒だ。俺もお前らに死んで欲しくねぇ」

「ファイ……やっぱりお前は竜騎士の装備以外は太っ腹だな!」

 一言多くねぇ?!確かに竜騎士の装備はかさねぇよ?!てか使ってたし?!

「まあ……装備の貸しの事は気にするな。俺はまたすぐ出て行くし、少しの間だけ我慢してくれ」

 俺は最初に言ってきた奴に頭を下げた。

「あんたもそう言う事で納得して欲しい」

「え?!いや、その……あの」

 なんだ?俺は何か間違った事してるか?びびる必要なんかないだろう?

「おい、時透。俺、なんか変な事してるか?割と丁寧な対応を心掛けているつもりなんだが!」

「んーー、そう言うトコかなぁ~~」

 何がそういう所なんだ?!?!さっぱり分からん!

「新入りに見えて馬鹿みたいな高額装備をみんなに貸し付けてて、クランマスターを呼び捨てにしてーって所かなぁ~~ま、今回はマークが悪いわ。誰にでも噛み付くのやめろって言ってるよな?お前もクランから放逐されたいわけぇ?」

 レクシーがため息混じりにいう。

「ほんと、相手の実力も見誤ってさ。ファイがキレたら全員血の海だからね?錬金術師でもな」

 おいレクシー。お前は俺の事なんだと思ってるんだ??人を化け物みたいに言って。

「お前、弓は使わねえって事で良いんだな?」

「許してくださいー!ファイ様ぁ!」

 こうやって馬鹿やってると、ゲーム時代とあまり変わらない感覚になる。気の合う仲間と大ボスに挑みに行って何時間もかかって攻略したり……。

ファイさーん!お肉が焼けましたよー。

 ここにキースがいたら何て言うだろう。人当たりの良いあいつの事だ、すぐに馴染んで美味い料理を振る舞ってくれるかも知れない。
 王族って事で連れ去られたんだな、酷い扱いはされてないはずだ。

「能天気に磨きがかかってなきゃ良いな」

「ん?ファイ、何か言った?」

「なんでもねぇ」

 レクシーはもう一度貸した装備に頬擦りしながら聞き返してきたが、たいした事じゃないので答えはしなかった。
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