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6 お金がない

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「えっ……お金ですか……?」

「ああ……なんとかならないだろうか?」

 レオナルドはとうとうルリアラに頼み込むしかなくなってしまった。そう、クリスティアに借金を支払ったのだ。カーター家は借用書通り、傾いた家が立てなおせるくらいの大きなお金を一括でクリスティアに支払った。
 ついでに、婚約破棄の違約金も支払った。

「そちらはいりませんよ。私も素敵な方と巡り会えたので」

「素敵な方とは勿論、私の事だよね?クリスティア?」

「嫌だわ、アルフォート様ったら……貴方以外にだれがいるとおっしゃるの?」

 などと見せつけられても、レオナルドは俯くしかないし、カーター侯爵は苦虫を嚙み潰したような顔をするしかなかった。

 借りられるところからはすべて借り、とうとうルリアラの実家にまで借金のお願いをするところまでカーター家は追い込まれた。

「だって、レオナルド様は侯爵さまで……」

 裕福な暮らしが約束されたと確信していたルリアラは、背筋が寒くなる思いだった。

「あの……レオナルド様……ノッカー家に少し支援していただければ……」

 空気を読まずにフィリップが話しかける。

「我が家にそんな金はない!お前の家に全部持っていかれたではないか!」

「わ、私の家ではありません!すべて姉、クリスティア個人です!我が家には一コインも入っておりません!」

 フィリップは借用書をみて驚いた。領地から金が入らなくなっても、カーター家から借金が返ってくるから……と思っていたのだ。しかし、それは当てが外れ、すべてクリスティアが持って行ってしまった。

 慌ててやっと領地の経営を見直すと、先代からの堅実な経営はそのままだった。領地の執事はよくやっていることがわかる。しかし、ここ数年で興した「儲かる産業」に関わる人や技術はすべてクリスティアが持ち去っていた。
「ど、どういうことだ……?」

 ここ数年のノッカー家の栄華を下支えしていたものはすべてクリスティアが作り、運営し、発展させていたのだ。領地内に残っている施設に入ろうとしても、冷たい目で見られるだけだった。

「ご覧になられても良いですが、中はもう何もありませんよ。すべて新工場に移動させましたからね」

「な、な、なんだって……」

「流石の俺たちも企画立ち上げから、人を雇う所から全部一緒にやって来たクリスティア様と、今まで一度も顔も見たことのない領主様じゃクリスティア様につきますよ」

「しかもルーザ領じゃ家も用意してくれるらしいっすよ!」

 流石、俺たちを大事にしてくれるクリスティア様だ!はははは!
 
 ノッカー子爵はがらんどうの建物をみて、がっくりと膝をつくしかなかった。

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