【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ

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5 しつこい元弟から助けてくれたのは

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「姉さん!ウチにお金がないんだ!どうなってるんだ!」

「私は貴方の姉ではありませんし、ノッカー家の財政事情など私には関係ないことです」

 放課後、私が帰る所を見計らってフィリップが走ってきます。朝も言いましたわよね?接触するなと。2回目ですわよ?

「姉さん!」

「しつこいです、ノッカー子爵令息。もう一度言いますが、私と関わるのは最低限と約束をしていますよね?」

「勿論そのつもりだ!でも領地からの金もないし、イリス達はどうした!使えないメイドのネーネだけで家が回るわけないだろう!母様もカンカンだぞ!早くメイドを家に戻せよ!」

 調べることも知らないのでしょうか?フィリップは。

「イリス達はルーザ公爵様が、私のためにつけてくださったルーザ家のメイドですよ?なぜ、私がいないノッカー家で働かなければならないのです?」

「え……なんだよそれ。初めて聞いたぞ」

 最初からですが、フィリップは何も覚えていないのですね。

「そういうわけですのでお引き取りを」

「メイドはいい!なんで領地から金がこないだ!」

「きちんと帳簿や領地を見ればよいでしょう?すぐにわかるはずですが?」

「見ても分かんねえから聞いてるんじゃないか!」

 ……大丈夫かしら、この子。こんなので子爵とはいえノッカー家を継ぐのですよね?ええ、私が居た時でも

「フィリップが跡継ぎですから!」

 と、お義母様は声高に笑っておいででしたし。領民には申し訳ないことをしてしまったようですわ。ルーザ領に逃げてくるなら丁重に扱ってあげないといけませんね。

「そろそろ限界だ、クリス」

「あっ」

「えっ?」

 学園の門から私を呼ぶ声がします。そちらを見るとアルフォート様が不機嫌そうにこちらに向かって歩いてきます。

「元弟だから少し大目に見ていたが、私の大切なクリスに対する物言い。そろそろ看過できるものではないぞ、ノッカー子爵令息。契約の件、忘れたわけではあるまい?」

「あ、アルフォート・ルーザ公爵……令息……」

 アルフォート様はフィリップを一瞥し

「迎えに来たのになかなか出てこないから心配していたんだ、クリスティア。さあ、帰ろう」

 そっと私の肩を押してくださいます。優しくて紳士的です。

「次はない」

 そう冷たく言い放って、私たちはルーザ家の馬車に乗り込みます。フィリップが呆然と取り残されましたが、私の心には何も響きませんでした。

「アレが跡継ぎではノッカー領は大変だ」

「申し訳ございません……」

 アルフォート様はくすりと笑って「クリスのせいじゃないだろう?」と言ってくださいました。本当になんて素敵な方なのでしょう!
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