69 / 71
とある令嬢物語
4
しおりを挟む
結局ダンスパーティーの日になってもアナベルからドレスは送られて来るとこは無かった。
「今日届くの!」
「今日よ!」
「朝には来るわ!」
「始まる直前までには!」
パーティー開始時間ギリギリになってもドレスは届かず、リアンは手直しも済んでいない似合わない真っ赤なドレスを着てパーティー会場の入り口に立っていた。
型遅れで、サイズも合っていないドレスのリアンは、本人の行動と共に学園内では有名になっていたが、誰も声をかける者も無かった。
皆、パートナーの手を取り、淑やかに会場に入る。入り口にはリアンの他にも一人で立っている令息や、令嬢が居たが1人、またひとりとパートナーが現れて、手に手を取って会場入りする。
「アナベルさま……アナベルさまはいつ来て下さるの?」
ほとんどの生徒が会場に入りレッスンを兼ねてダンスを踊り、マナーを実践し始める。
「あら?リアン。1人でどうしたの?」
セルフィが同じ1年男子に手を取られて、扉を潜る所だった。
「アナベルさまがいらっしゃられなかて……」
心細くて俯いた。
「あら?アナベル様ならもう中よ?」
「えっ?!」
リアンははしたなく、ドレスの裾を持ち上げて走り出した。
「…セルフィさん、アレはどうなの?」
「私も迷惑なんだけど、同室なのよ……」
「大変だね」
2人は急ごしらえのパートナーだが、仲良く扉をを潜った。
「アナベルさま!」
「リアン、そんな大声で……しかも公式の場で名前で呼んではいけないとあれほど……」
背の高いアナベルは、同級生と談笑していた。
「アナベルさま!酷いです?1人で先に行ってしまうなんて……えっ?!」
アナベルの横には目も覚めるような美少女がいた。
髪の色はアナベルと一緒の榛色なのに、艶々と艶めいている。瞳は透き通るような青色で薄くしか化粧をしていないのに、唇はぷるぷるだ。
肌の色は白く、しみやそばかす、ニキビ一つない。
最新で、流行のドレスは帝国王室御用達の型だし、布も最高級シルクであり、色目も美しい。この会場で1番のドレスと言って間違いない。
「あ、アナベルさま!だ、誰なんです?!この女はっ!!!」
指を差され、少女はギョッとした。口元を扇て隠し、「よろしいでしょうか」
と、アナベルに小声で確認を取る。
あたまが痛い、と言った表情のアナベルだが、すまん、と返したのは聞こえた。
「お初にお目にかかります。わたくし、セーブル家の長女でルルカと申します。今は故あってソール家の名前をいただいております。兄の御学友と聞き及んでおりますが、よろしくお願いしますね?」
「い、妹……!」
この美少女が妹?!確かにアナベルには妹と弟が2人いるのは周知の事実だ。
「せ、聖女ルルカ……様」
にこりと笑う美少女は確かに英雄と並び立った聖女の顔をしている。
「お兄様ったら、パートナーが見つからないと、急に言い出すのですもの。驚きますわ。ドレスも急いで仕立てていただいたんですよ、本当に恥ずかしいですわ」
もう、と困ったふうに眉毛を寄せる。確かに兄妹らしく、そっくりな顔つきだった。
「えっ……アナベルさま、」
私がパートナーでは?リアンが聞こうとした時、アナベルは真剣な顔で言った。
「リアン、どうしたんですか?ドレスなんか着て。今日みたいな日こそ、警備の練習には持ってこいですよ。……ああ!ドレスでの警護も女性騎士には必要ですものね!流石私の弟子ですね」
リアンは固まった。
「今日届くの!」
「今日よ!」
「朝には来るわ!」
「始まる直前までには!」
パーティー開始時間ギリギリになってもドレスは届かず、リアンは手直しも済んでいない似合わない真っ赤なドレスを着てパーティー会場の入り口に立っていた。
型遅れで、サイズも合っていないドレスのリアンは、本人の行動と共に学園内では有名になっていたが、誰も声をかける者も無かった。
皆、パートナーの手を取り、淑やかに会場に入る。入り口にはリアンの他にも一人で立っている令息や、令嬢が居たが1人、またひとりとパートナーが現れて、手に手を取って会場入りする。
「アナベルさま……アナベルさまはいつ来て下さるの?」
ほとんどの生徒が会場に入りレッスンを兼ねてダンスを踊り、マナーを実践し始める。
「あら?リアン。1人でどうしたの?」
セルフィが同じ1年男子に手を取られて、扉を潜る所だった。
「アナベルさまがいらっしゃられなかて……」
心細くて俯いた。
「あら?アナベル様ならもう中よ?」
「えっ?!」
リアンははしたなく、ドレスの裾を持ち上げて走り出した。
「…セルフィさん、アレはどうなの?」
「私も迷惑なんだけど、同室なのよ……」
「大変だね」
2人は急ごしらえのパートナーだが、仲良く扉をを潜った。
「アナベルさま!」
「リアン、そんな大声で……しかも公式の場で名前で呼んではいけないとあれほど……」
背の高いアナベルは、同級生と談笑していた。
「アナベルさま!酷いです?1人で先に行ってしまうなんて……えっ?!」
アナベルの横には目も覚めるような美少女がいた。
髪の色はアナベルと一緒の榛色なのに、艶々と艶めいている。瞳は透き通るような青色で薄くしか化粧をしていないのに、唇はぷるぷるだ。
肌の色は白く、しみやそばかす、ニキビ一つない。
最新で、流行のドレスは帝国王室御用達の型だし、布も最高級シルクであり、色目も美しい。この会場で1番のドレスと言って間違いない。
「あ、アナベルさま!だ、誰なんです?!この女はっ!!!」
指を差され、少女はギョッとした。口元を扇て隠し、「よろしいでしょうか」
と、アナベルに小声で確認を取る。
あたまが痛い、と言った表情のアナベルだが、すまん、と返したのは聞こえた。
「お初にお目にかかります。わたくし、セーブル家の長女でルルカと申します。今は故あってソール家の名前をいただいております。兄の御学友と聞き及んでおりますが、よろしくお願いしますね?」
「い、妹……!」
この美少女が妹?!確かにアナベルには妹と弟が2人いるのは周知の事実だ。
「せ、聖女ルルカ……様」
にこりと笑う美少女は確かに英雄と並び立った聖女の顔をしている。
「お兄様ったら、パートナーが見つからないと、急に言い出すのですもの。驚きますわ。ドレスも急いで仕立てていただいたんですよ、本当に恥ずかしいですわ」
もう、と困ったふうに眉毛を寄せる。確かに兄妹らしく、そっくりな顔つきだった。
「えっ……アナベルさま、」
私がパートナーでは?リアンが聞こうとした時、アナベルは真剣な顔で言った。
「リアン、どうしたんですか?ドレスなんか着て。今日みたいな日こそ、警備の練習には持ってこいですよ。……ああ!ドレスでの警護も女性騎士には必要ですものね!流石私の弟子ですね」
リアンは固まった。
14
お気に入りに追加
2,825
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話
蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。
終始彼の視点で話が進みます。
浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。
※誰とも関係はほぼ進展しません。
※pixivにて公開している物と同内容です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。
はちのす
BL
異世界転移に巻き込まれた憐れな俺。
騎士団や勇者に見つからないよう、村人Aとしてスローライフを謳歌してやるんだからな!!
***********
異世界からの転移者を血眼になって探す人達と、ヒラリヒラリと躱す村人A(俺)の日常。
イケメン(複数)×平凡?
全年齢対象、すごく健全
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる