64 / 71
番外編
64 カレルが変!!
しおりを挟む
私の名前はカレル・セーブル、いや、カレル・ソール。元マロード子爵ジュール・セーブルの息子にして、帝国公爵マクドル・ソールの孫である。
セーブル家は上の兄・アナベルに継いでもらうとして、私は養子縁組したお爺様のソール家を継ごうと思う。
セーブル家は武芸の家系。ソール家は知識の家系が強い。適材適所では無いだろうか?
私達の可愛い末の弟が、マロードで居場所を無くし、帝国皇帝に見染められ、魔王に捕まり、死にかけて一年後にけろりと帰って来たのは我が家の大事件簿の中でも最高に難易度の高い事件であった。
しかし、私は皇帝ジュリアスも元魔王ガザスも嫌いだ!両方とも可愛い弟を家族から引き離す!憎い相手だ。
100歩譲って、ジュリアス殿は許した。特別図書館は最高だし、今は義弟だし、良くヨシュアを連れて帰ってくるし、2人はああ見えて仲が良いし。ヨシュアの子供達は可愛いし。特別図書館は最高だし……。んんっ!
しかし元魔王ガザスは気に入らない。弱体化したとはいえ、まだまだジュリアス殿以外は太刀打ちできない強さを誇る。
強い故に通される横暴も気に入らない。魔族のくせに神聖結界を易々と超えてくる。そしてヨシュアにちょっかいをかける!許せん!
ヨシュアも拒否すれば良いのに……あれは性格上、性質上、全てを許してしまう。
「私は星の子なんですって」
ヨシュアは私に教えてくれた。星の子、大地の子。なるほど、全てを癒し、許す母なる大地の子。
母なる大地はそこに人がいようが魔族がいようが獣がいようが竜がいようが許している。
そして全てに等しく癒しを与える。
その性質を持ったヨシュアは自分がどう傷つこうが、最後には許してしまう。なんて事だろうか!
だがヨシュアが許しても、この兄のカレルは許せん!
その女性に出会ったのはほんの偶然だった。ヨシュアの部屋から出てきた理想の女性。少女と言っても過言では無い、可憐な条件だったが、すぐに違和感に気付いた。
理想的すぎるのだ
私とヨシュアは歳が近い。だから兄弟でもよく話す方だった。
「お兄様、私は将来こんな女性と結婚したいです」
と、無邪気に書いた女の子の姿に似ていたのだ。怪しい。
調べるとすぐに分かった。何と魔族の魔法の姿変えだと。あの野郎、ヨシュアの純情を弄んだな?!
このお兄様が星に代わってお仕置きしてやる!!
「イージス。魔族について徹底的に調べますよ。そして這いつくばらせてやります!」
「なんと良い考えだ、流石はカレル。ワシも協力を惜しまぬぞ」
「お爺さまもお願い致します!」
「うむ、ヨシュアが許してもワシは許せん!星に代わってお仕置きじゃ!」
こうして3巨頭は魔族について徹底的に調べて始めた。
「首でも洗って待っていろ……生まれた事を後悔させてやる!」
調べれば調べるほど、魔族とはそう遠いものではないと分かって行った。資料は古く、全て書き手の感想が多分に入り、空恐ろしく伝わっているものが殆どだった。
「はい、カレルっちー。サーたんが手に入る魔界の本持ってきたよ」
どさどさとジェルロンド侯爵は沢山の本を持ってくれた。
「ありがとうございますジェルロンド侯爵」
「サーたんって呼ぶ約束よ!カレルっち!これでガザスをぎゃふんと言わせてくれるってほんと?」
「……まだ研究途中でお約束はできかねますが、必ず!」
ジェルロンド侯爵はすまなそうに笑いながら
「サーたんも反省してるのよ……ヨッちゃんを連れてったの、サーたんだから……。しかもサーたんをピカピカにしてくれたヨッちゃんを虐めたガザスが困る事ならなんでも協力する!あと個人的にガザス嫌いだし」
ヨシュアが
「サーたん可愛いんだよ」
と、言っていた気持ちが分かった。
「さて!サーたんはサヨナラね!神聖結界の中はやっぱり駄目だわー!新しい本があったら持ってくるから頑張って!カレルっち!」
「分かりました。ありがとうございます….サーたん」
サーたんはきょとんとしたが、女性らしい華やかな笑顔で飛んで行った。
サーたんが持って来てくれた魔界の書物はまた目新しさや、新しい魔法、禁忌の方など沢山書かれていて、読み込んだり、編集したりするのに時間がかかった。
魔界の文字はイージスが読めたので、お爺様と一緒に習い、だいたい習得済みだ。
「はぁ……あとはサンプルがあればなあ」
理論が出来ると試したくなる。手頃な魔族は居ないものか?俺はため息が増えたと思う。
いつもの書類は紅茶が入るので時間で片付けて、窓の外をみる。都合良く魔族は飛んでいないものだろうか?いないな。
ジェルロンド侯爵……サーたんは流石にやめておきたい。彼女は貴重な本を何十冊も提供してくれる。これからもだ。
机の上に置いた花は最近の研究成果だ。魔族の魔力を好む花で身につけさせることが出来ればかなりの魔力を吸い取ってしまうらしい。
人間の魔力は好まないという素晴らしい花だ。
こんな物があるとは……もっと早く知っていれば。自分の不甲斐なさにため息がまた漏れる。
それにしてもとびらの隙間から上からジュリアス殿、ヨシュア、レンと縦に並んで私を観察しているのは困ったものだ。
イージスとマクドルお爺様以外には話をするつもりはない。脳筋や素直なヨシュアからガザスに漏れるのは流石に困るからね。
彼らには勘違いしておいてもらおう。
私があの魔族を好きになる訳ないじゃないか!まったく困った弟だ!
セーブル家は上の兄・アナベルに継いでもらうとして、私は養子縁組したお爺様のソール家を継ごうと思う。
セーブル家は武芸の家系。ソール家は知識の家系が強い。適材適所では無いだろうか?
私達の可愛い末の弟が、マロードで居場所を無くし、帝国皇帝に見染められ、魔王に捕まり、死にかけて一年後にけろりと帰って来たのは我が家の大事件簿の中でも最高に難易度の高い事件であった。
しかし、私は皇帝ジュリアスも元魔王ガザスも嫌いだ!両方とも可愛い弟を家族から引き離す!憎い相手だ。
100歩譲って、ジュリアス殿は許した。特別図書館は最高だし、今は義弟だし、良くヨシュアを連れて帰ってくるし、2人はああ見えて仲が良いし。ヨシュアの子供達は可愛いし。特別図書館は最高だし……。んんっ!
しかし元魔王ガザスは気に入らない。弱体化したとはいえ、まだまだジュリアス殿以外は太刀打ちできない強さを誇る。
強い故に通される横暴も気に入らない。魔族のくせに神聖結界を易々と超えてくる。そしてヨシュアにちょっかいをかける!許せん!
ヨシュアも拒否すれば良いのに……あれは性格上、性質上、全てを許してしまう。
「私は星の子なんですって」
ヨシュアは私に教えてくれた。星の子、大地の子。なるほど、全てを癒し、許す母なる大地の子。
母なる大地はそこに人がいようが魔族がいようが獣がいようが竜がいようが許している。
そして全てに等しく癒しを与える。
その性質を持ったヨシュアは自分がどう傷つこうが、最後には許してしまう。なんて事だろうか!
だがヨシュアが許しても、この兄のカレルは許せん!
その女性に出会ったのはほんの偶然だった。ヨシュアの部屋から出てきた理想の女性。少女と言っても過言では無い、可憐な条件だったが、すぐに違和感に気付いた。
理想的すぎるのだ
私とヨシュアは歳が近い。だから兄弟でもよく話す方だった。
「お兄様、私は将来こんな女性と結婚したいです」
と、無邪気に書いた女の子の姿に似ていたのだ。怪しい。
調べるとすぐに分かった。何と魔族の魔法の姿変えだと。あの野郎、ヨシュアの純情を弄んだな?!
このお兄様が星に代わってお仕置きしてやる!!
「イージス。魔族について徹底的に調べますよ。そして這いつくばらせてやります!」
「なんと良い考えだ、流石はカレル。ワシも協力を惜しまぬぞ」
「お爺さまもお願い致します!」
「うむ、ヨシュアが許してもワシは許せん!星に代わってお仕置きじゃ!」
こうして3巨頭は魔族について徹底的に調べて始めた。
「首でも洗って待っていろ……生まれた事を後悔させてやる!」
調べれば調べるほど、魔族とはそう遠いものではないと分かって行った。資料は古く、全て書き手の感想が多分に入り、空恐ろしく伝わっているものが殆どだった。
「はい、カレルっちー。サーたんが手に入る魔界の本持ってきたよ」
どさどさとジェルロンド侯爵は沢山の本を持ってくれた。
「ありがとうございますジェルロンド侯爵」
「サーたんって呼ぶ約束よ!カレルっち!これでガザスをぎゃふんと言わせてくれるってほんと?」
「……まだ研究途中でお約束はできかねますが、必ず!」
ジェルロンド侯爵はすまなそうに笑いながら
「サーたんも反省してるのよ……ヨッちゃんを連れてったの、サーたんだから……。しかもサーたんをピカピカにしてくれたヨッちゃんを虐めたガザスが困る事ならなんでも協力する!あと個人的にガザス嫌いだし」
ヨシュアが
「サーたん可愛いんだよ」
と、言っていた気持ちが分かった。
「さて!サーたんはサヨナラね!神聖結界の中はやっぱり駄目だわー!新しい本があったら持ってくるから頑張って!カレルっち!」
「分かりました。ありがとうございます….サーたん」
サーたんはきょとんとしたが、女性らしい華やかな笑顔で飛んで行った。
サーたんが持って来てくれた魔界の書物はまた目新しさや、新しい魔法、禁忌の方など沢山書かれていて、読み込んだり、編集したりするのに時間がかかった。
魔界の文字はイージスが読めたので、お爺様と一緒に習い、だいたい習得済みだ。
「はぁ……あとはサンプルがあればなあ」
理論が出来ると試したくなる。手頃な魔族は居ないものか?俺はため息が増えたと思う。
いつもの書類は紅茶が入るので時間で片付けて、窓の外をみる。都合良く魔族は飛んでいないものだろうか?いないな。
ジェルロンド侯爵……サーたんは流石にやめておきたい。彼女は貴重な本を何十冊も提供してくれる。これからもだ。
机の上に置いた花は最近の研究成果だ。魔族の魔力を好む花で身につけさせることが出来ればかなりの魔力を吸い取ってしまうらしい。
人間の魔力は好まないという素晴らしい花だ。
こんな物があるとは……もっと早く知っていれば。自分の不甲斐なさにため息がまた漏れる。
それにしてもとびらの隙間から上からジュリアス殿、ヨシュア、レンと縦に並んで私を観察しているのは困ったものだ。
イージスとマクドルお爺様以外には話をするつもりはない。脳筋や素直なヨシュアからガザスに漏れるのは流石に困るからね。
彼らには勘違いしておいてもらおう。
私があの魔族を好きになる訳ないじゃないか!まったく困った弟だ!
14
お気に入りに追加
2,825
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話
蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。
終始彼の視点で話が進みます。
浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。
※誰とも関係はほぼ進展しません。
※pixivにて公開している物と同内容です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。
はちのす
BL
異世界転移に巻き込まれた憐れな俺。
騎士団や勇者に見つからないよう、村人Aとしてスローライフを謳歌してやるんだからな!!
***********
異世界からの転移者を血眼になって探す人達と、ヒラリヒラリと躱す村人A(俺)の日常。
イケメン(複数)×平凡?
全年齢対象、すごく健全
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる