44 / 71
魔のモノ
44 呪いの魔王
しおりを挟む
「ごめん……ごめん……ヨシュアを連れてかれた……」
口から血を目から涙を鼻から鼻水を垂らしてぐちゃぐちゃな顔のレンが、折れた足をひきづりながら、中継点にボロボロになりながら現れた。
「レン?!」
ここまで馬車で移動して次の目立つ街道まで移動しようと、レギルとカレルが待ち構えていたのだ。
「何が!何があった?!」
『魔族だ!レギル!特別図書館の「閉ざされた扉」を「王の鍵」であけろ!』
レンが喋る
「閉ざされた扉……?王の鍵?!」
『「閉ざされた扉」はマルクスが知っている!「王の鍵」は玉座の左前の赤い宝石に正統後継者のジュリアスの血を垂らせば出てくる!』
「レン、詳しい事は後から聞きます!カレル、みんなに連絡、その後レンの手当てを。私はマクドルの屋敷に飛んで図書館へ行きます。セーブルの屋敷に集合。戦いが始まるかも知れません!では!」
転移!
その場からレギルは消えた。
「レギルさん…魔法か!レン、少し手当ては後だが我慢できるな!」
「できるよ……カレルにーちゃん……早く、早くヨシュアを助けて……」
「乗れ、カレル!」
真っ白いドラゴンがカレルの目の前に座っている。
「イージス!急ごう」
「飛ばすぞ!」
イージスは人目を気にせず、飛び立ち沢山の人達がその姿を見たが、今は気にしている場合ではなかった。
セーブル家では全ての人間が青い顔をしていた。
「私が……」
「黙れ!」
アナベルが言いかけた言葉をジュールが厳しく止めた。
誰がいた所で、止める事が出来たか分からない。レンだったから、拐われてしまった訳ではない。
神獣であるレンが一撃でボロボロにされたのだ。
私がその場にいたなら
なんておこがましいし
私が代わりに拐われれば
ならば、ヨシュアは自分が拐われるより、悲しむだろう。
「お待たせしました!」
レギルとジュリアスがセーブル家に分厚い本を携えて到着した。
「この本にマロードの魔王について書いてありました。」
とても古い本だった。皆の目が集まる中、レギルはざっと目を通しただけですが、と前置きをしてから話し出した。
「マロードの王都には「呪いの魔王」と呼ばれる存在が封印されていると。元々帝国はその魔王を封印して、見張っている勇者の子孫の国だったそうです」
「俺も初めて聞いた話だった。何故この本の隠し場所をレンが知っていたのか……全てが片付いたら聞いてみたいな」
ジュリアスは順序を守る男だ。
「まず、マロードにはレアスキル持ちが沢山産まれるのをご存知ですか?セーブル家など、その最たる物ですよね。剣聖、聖女、賢者が一緒の時代に存在する、しかもなんでも「癒し」てしまう希有なスキル持ち」
アナベル、ルルカ、カレルを順番に見た。
「レアスキルがたくさん居るのは、それを使うべき相手がいると言う事なのです」
王宮の冷たい廊下でアヴリーは目を覚ました。どれくらいの時間ここに転がっていたのかは分からないが、アヴリーはここで気を失い、同じ場所で目を覚ました。
「夢……?」
ズキン!とそれを打ち消すように手が痛んだ。真っ赤に誰かに握られた跡がくっきり残っている。
「嘘だ……嘘だ……わたしが聖女を追い出した……からなど……」
ふらりと立ち上がる。
「誰に……誰に聞けばいい?……そうだ父上、父上なら私が無罪だと言ってくださるに違いない……」
ふらふらとアヴリーが向かった先は玉座の間だった。
「父上……」
玉座に座る王に声をかける。
「おお、我が友ではないか?まだ生きておるのか?」
「ひい!」
あの恐ろしい金髪が玉座に座している。
「あのまま廊下に寝転んでおるから、獣魔や邪竜にでも踏み潰されたかと思ったら、なかなか運が良いんだな」
「ふふ踏み潰され…?!」
「そうだぞ。我が配下は気の荒いものも多い。人間など、一捻りだ」
ぞっとアヴリーは竦み上がった。一体我が国はどうなったんだ?父上は?!
「それにしてもお前……まともなスキルが一つもないな!どうやって王子として生きて来たんだ??」
「え?」
人のスキルが分かるのか?!そうは恐ろしくて声に出なかった。
「俺はスキルで「スキル鑑定」があるからな。王ならば持っていると全てに置いて明るくなれる……しかし…「スキル:パン屋」とか「スキル:おしゃべり」とか。おしゃべりってスキルだったんだ。「コソ泥」って…お前ねぇ王子だったんだろ?」
そんなスキル私にあるはずがない!もっともっと素晴らしいスキルがたくさんあるはず!アヴリーはそう思ったが、自分がどんなスキルがあるか思い出せなかった。
「おお!これ使えるんじゃない?「ゴミ拾い」「掃除」じゃないんだなぁ…まあ良いや。コレ捨てといて」
少し高くなった玉座から、ポイっと何かを投げつけられた。思わず腕を伸ばして受け取ったそれを見て、アヴリーはその場に座り込む。
「ひ!ひ!ひぃ!!ち、父上ぇーーー」
「うるさいよ、黙って」
「あがっ!」
ぎゅっと喉が締め付けられる感覚がして、アヴリーは一言も喋る事が出来なくなる。
「あー今日は寝るかー」
呑気に伸びをして、玉座を去る悪魔を背に座り込んだままのアヴリーは王の首を抱き抱えたまま、音もなく静かに泣いていた。
ーーーーーーーーー
☆都合により呪いの魔神さんは呪いの魔王にランクダウン致しました。謹んでお詫び申し上げます。
「解せぬ」
口から血を目から涙を鼻から鼻水を垂らしてぐちゃぐちゃな顔のレンが、折れた足をひきづりながら、中継点にボロボロになりながら現れた。
「レン?!」
ここまで馬車で移動して次の目立つ街道まで移動しようと、レギルとカレルが待ち構えていたのだ。
「何が!何があった?!」
『魔族だ!レギル!特別図書館の「閉ざされた扉」を「王の鍵」であけろ!』
レンが喋る
「閉ざされた扉……?王の鍵?!」
『「閉ざされた扉」はマルクスが知っている!「王の鍵」は玉座の左前の赤い宝石に正統後継者のジュリアスの血を垂らせば出てくる!』
「レン、詳しい事は後から聞きます!カレル、みんなに連絡、その後レンの手当てを。私はマクドルの屋敷に飛んで図書館へ行きます。セーブルの屋敷に集合。戦いが始まるかも知れません!では!」
転移!
その場からレギルは消えた。
「レギルさん…魔法か!レン、少し手当ては後だが我慢できるな!」
「できるよ……カレルにーちゃん……早く、早くヨシュアを助けて……」
「乗れ、カレル!」
真っ白いドラゴンがカレルの目の前に座っている。
「イージス!急ごう」
「飛ばすぞ!」
イージスは人目を気にせず、飛び立ち沢山の人達がその姿を見たが、今は気にしている場合ではなかった。
セーブル家では全ての人間が青い顔をしていた。
「私が……」
「黙れ!」
アナベルが言いかけた言葉をジュールが厳しく止めた。
誰がいた所で、止める事が出来たか分からない。レンだったから、拐われてしまった訳ではない。
神獣であるレンが一撃でボロボロにされたのだ。
私がその場にいたなら
なんておこがましいし
私が代わりに拐われれば
ならば、ヨシュアは自分が拐われるより、悲しむだろう。
「お待たせしました!」
レギルとジュリアスがセーブル家に分厚い本を携えて到着した。
「この本にマロードの魔王について書いてありました。」
とても古い本だった。皆の目が集まる中、レギルはざっと目を通しただけですが、と前置きをしてから話し出した。
「マロードの王都には「呪いの魔王」と呼ばれる存在が封印されていると。元々帝国はその魔王を封印して、見張っている勇者の子孫の国だったそうです」
「俺も初めて聞いた話だった。何故この本の隠し場所をレンが知っていたのか……全てが片付いたら聞いてみたいな」
ジュリアスは順序を守る男だ。
「まず、マロードにはレアスキル持ちが沢山産まれるのをご存知ですか?セーブル家など、その最たる物ですよね。剣聖、聖女、賢者が一緒の時代に存在する、しかもなんでも「癒し」てしまう希有なスキル持ち」
アナベル、ルルカ、カレルを順番に見た。
「レアスキルがたくさん居るのは、それを使うべき相手がいると言う事なのです」
王宮の冷たい廊下でアヴリーは目を覚ました。どれくらいの時間ここに転がっていたのかは分からないが、アヴリーはここで気を失い、同じ場所で目を覚ました。
「夢……?」
ズキン!とそれを打ち消すように手が痛んだ。真っ赤に誰かに握られた跡がくっきり残っている。
「嘘だ……嘘だ……わたしが聖女を追い出した……からなど……」
ふらりと立ち上がる。
「誰に……誰に聞けばいい?……そうだ父上、父上なら私が無罪だと言ってくださるに違いない……」
ふらふらとアヴリーが向かった先は玉座の間だった。
「父上……」
玉座に座る王に声をかける。
「おお、我が友ではないか?まだ生きておるのか?」
「ひい!」
あの恐ろしい金髪が玉座に座している。
「あのまま廊下に寝転んでおるから、獣魔や邪竜にでも踏み潰されたかと思ったら、なかなか運が良いんだな」
「ふふ踏み潰され…?!」
「そうだぞ。我が配下は気の荒いものも多い。人間など、一捻りだ」
ぞっとアヴリーは竦み上がった。一体我が国はどうなったんだ?父上は?!
「それにしてもお前……まともなスキルが一つもないな!どうやって王子として生きて来たんだ??」
「え?」
人のスキルが分かるのか?!そうは恐ろしくて声に出なかった。
「俺はスキルで「スキル鑑定」があるからな。王ならば持っていると全てに置いて明るくなれる……しかし…「スキル:パン屋」とか「スキル:おしゃべり」とか。おしゃべりってスキルだったんだ。「コソ泥」って…お前ねぇ王子だったんだろ?」
そんなスキル私にあるはずがない!もっともっと素晴らしいスキルがたくさんあるはず!アヴリーはそう思ったが、自分がどんなスキルがあるか思い出せなかった。
「おお!これ使えるんじゃない?「ゴミ拾い」「掃除」じゃないんだなぁ…まあ良いや。コレ捨てといて」
少し高くなった玉座から、ポイっと何かを投げつけられた。思わず腕を伸ばして受け取ったそれを見て、アヴリーはその場に座り込む。
「ひ!ひ!ひぃ!!ち、父上ぇーーー」
「うるさいよ、黙って」
「あがっ!」
ぎゅっと喉が締め付けられる感覚がして、アヴリーは一言も喋る事が出来なくなる。
「あー今日は寝るかー」
呑気に伸びをして、玉座を去る悪魔を背に座り込んだままのアヴリーは王の首を抱き抱えたまま、音もなく静かに泣いていた。
ーーーーーーーーー
☆都合により呪いの魔神さんは呪いの魔王にランクダウン致しました。謹んでお詫び申し上げます。
「解せぬ」
16
お気に入りに追加
2,825
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。
はちのす
BL
異世界転移に巻き込まれた憐れな俺。
騎士団や勇者に見つからないよう、村人Aとしてスローライフを謳歌してやるんだからな!!
***********
異世界からの転移者を血眼になって探す人達と、ヒラリヒラリと躱す村人A(俺)の日常。
イケメン(複数)×平凡?
全年齢対象、すごく健全
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる