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帝国風キノコ

41 それは愛の言葉ではない

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「人として……」

「ホムンクルスだろう?」

「……」

 確かにホムンクルスとして作られた俺はマスターを設定できる。基本は製作者になるが、今回の作り方のせいでマスターが不在のままだったのが災いした。

「ルド」

「うるさい」

「ルドー?」

「うるさい!ルドって呼ぶな!」

「くくっいくら嫌がってもマスターには基本逆らえない。不便だな?ホムンクルスは」

「うるさい!」

「ルド、こっちへ来い」 

「くそっ」 

 行きたくないが、何となく行かなければならない気持ちになって、無視してると、どんどんイライラしてくる。
 これなら先にセアンでもマスターだと決めておけば良かった。

「ルド、服を脱げ」

「くそっ!」

「なるべくいやらしく、誘うように」

「出来るかっ!」

 それでも、アホ皇帝の目の前でするりと服を脱がねばならない。

「上に乗れ」

「死ね!」

 マスター権限の無駄遣いに腹が立つが、逆らえない自分にも腹が立つ。

「本当に便利なものをアルトは残してくれたものだ。なあ?ルド」

「……アルトとお前の関係はなんなんだ…?」

  それにしてもそこが気になる。アルトから聞いたこともなかった。

「従兄弟だ。あれは母の妹の子供だ。戦士としても、魔術師としても出来損ないでな。唯一の得意は錬金術だった……あれのホムンクルス技術は卓越していたが、帝国にいたうちはついぞ完成しなかった」

 アルトは出来損ないだったのか。俺にとってアルトは良いマスターだったのに、そう言われると気分が悪い。

「行方をくらませて、どこぞで死んでいると思って行方を探させていたが、その理論で作られたモノに出会うとはな」

 半分脱げた服から覗いた肌を撫でられる。ゾワゾワと悪寒が走るが、やめる気配はない。

「なぜ、アルトが作ったと、分かった?」

「見た事があるからだ。ホムンクルスを兵士に出来ればと、期待をかけた事もあった、そう言うことだ」

 ごろりとひっくり返され、組み敷かれる。

「足を開け」

「っ!」

「っはは!この完全に言う事を聞かないところが本当に良いな!従順過ぎると飽きるが、嫌がっているのを犯すのが、本当に良い!」

「や、やめ……っ!」

「良い顔だ」

 ぐいっと押しつけられて、目を閉じる。諦めよう、それが良い。嫌がるとこの性悪は喜ぶだけだ。
 とにかく、あの時みた書面の内容がゼードラウンときちんと交わされたか。それを確認するまでの辛抱だ。

 ホムンクルスとマスターの間は信頼関係で成り立っている所が大きい。この皇帝はその辺は知らないようだ。
 いざとなれば、俺はこいつを裏切れる。その時までの辛抱だと、自分に言い聞かせる。

「う……」

 少し前まで弄ばれていた穴は、苦もなく飲み込み内側から押される感覚に言葉が漏れる。

「キノコの癖に良い穴だよ」

「腹でも壊してしまえ」

 いつもの毒づきも、解毒薬の空袋を振られて終了だ。

「良い声で鳴けよ」

「鳴けばいいんだろ!鳴けば」

 くそっこいつ嫌いだ。



「ルド、お前用の側妃の宮を作らせている」

「とりあえず、死ねよ」

「風通しが良くて日当たりの良い、キノコが苦しむような宮にしようと思う」

「そりゃどうも」

「可愛いな、今日も鳴きたいのか?」

「腹でも壊せ」

 


「俺とお前の婚儀の日取りだが」

「同盟が組まれた証明はどうやったら確認できる?」

「信じて貰うよりないな」

「婚儀もないな」




「これで良いだろう?」

「ゼードラウン王家の封蝋?」

 開けられた跡がない手紙を1通受け取った。開けてみると、セアンからの恨み言と愛の言葉で埋め尽くされたラブレターだった。
 最後に同盟と税率のおかげで戦力の強化が出来ると書いてあった。

「明日、婚儀を執り行う」

「そうか」

 逃げるなら今晩しかない。いつも通り下らないやりとりを済ませる。俺の悪態を愛の言葉だとかんちかしてないか?こいつ。

「磨きあげるから、覚悟しておけ」

 は?意味が分からない。あっという間に何人いるか分からない侍女に取り囲まれ、風呂場に連行される。

「ま、待て!俺は男ーー!」

「お前付きの侍女は皆知っている」

「ちょっと!やめろ!駄目だってーー!」 

「久しぶりに本気で嫌がっているな。ルドが泣き叫ぶのは楽しいな」 

 くくく、と笑っているのが見えて怒りが倍増した。死ね!

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