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キノコと王様

9 森は君の味方

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「お兄さん、王様だったのね……」

「すまない、話して居なかったな」


 俺が前に住んでいた所とは逆側に進んで来た。途中馬車に乗り、1日かけて街まで辿り着き……まだ進むそうだ。

「ってぇことはー!王女様を見初めちまったのかー!あの上司は!信じられないー!しかも対価を俺に払えだと?!クソすぎんだろーーー!」

 俺は思わず馬車の中で吠えてしまった。ヤバい怒りのあまり胞子出そう!お兄さんのお腹を壊してしまう!

「あ!でも王女様が上司を嫌がれば!ちゃんと迎えに行きますよ!いかせて頂きますよ!」

「あの子は……マリアンヌは、よく出来た妹です……国の危機に自ら森の主様の生贄になると、止めるのも聞かず私について来て……」

 お兄さんは視線を落としている。あー…こりゃすごい決意だったんだなぁ。

「そうなのか……様子くらいいつでも見れるからね?せっかくだ覗いてみよう」

 休憩で馬車から降りて、土の上に来た。なんの変哲もない土を盛り上げて

「おーい!ノーム様ーお兄さんが心配してるーどうですかー?」

 土に話しかける俺にぎょっとしているが、土塊がかたかたと動いて人型になるともっとびっくりした。

「マリアンヌちゃん超可愛い」

「馬鹿か」

 近くの土が盛り上がり最初に作った人型より小さな人型が横にできて……2人はぴとっと寄り添った。

「お兄様、マリアンヌはよくして頂いております。ご心配なさらないで。ここは緑もきれいで小鳥もよく来るんですよ。甘いハチミツジュースがまた美味しくて……」

 あれ?嫌じゃないの?マリアンヌちゃん。

「マリアンヌ、その方はお前を大切にしてくださるんだね?」

 小さな人型は大きな人型の手をきゅっと握って

「ええ!」

 と、元気に答えた。あーーーだめだこりゃ。


「残念ながら戻って来そうにないですね……」

「ははっ!君にとっては残念なのだな……」

「そりゃあんだけ可愛いお姫様の対価分働けなんて一体どんなことしたら間に合うのか!考えただけでクラクラしますよ」

 はぁ。ため息をついてまた馬車に揺られだす。

 お兄さんは土塊で出来た人型を持ってきた。会話を打ち切ったからただの土なのだけれども、とても大切そうに持っている。大事な妹だったんだろうなー。

 はぁそれなのにあの上司は……。そして、そんな大切な妹を犠牲にしてまで、訳わからんものに助けを乞わなきゃいけないくらいお兄さんの国は大変な事になってるんだろうなー。

「しゃーない。出来るとこはしますよ。キノコですけど」

「よろしくお願いします。キノコさん」

 まっじめだなーー!良い人そうでよかった。

 お兄さんの名前はエドヴァルド・ゼードラウン。ゼードラウン王国の国王様だ。王と王妃が何者かによって事故に見せかけて殺され、王位をついだ24歳。ちなみにマリアンヌちゃんは16歳。歳が離れている分、可愛がっていたようだ。

「俺はヨースケ。ウスベニ裏毒茸!本体は頭の上のキノコ。下の体はホムンクルスとして作られてる。まあ色々あってこんな体だ。エドヴァルド、君をマスターとしよう。マリアンヌちゃんが愛想を尽かして出てくるまでな!」

 俺はにこっと笑った。

「ウスベニ裏毒茸だから、オレをかじると腹を壊すから気を付けろよ!」

 毒があるんだぜ!ふふふ!

 俺は任務を遂行する為に少し顔をいじる事にする。物知りドライアドお姉様のアドバイスに従うのだ。

 いい?キノコちゃん。人間は見た目が大事よ!私達とは違うからね。ここをこうして……よし、こんな感じ!

 俺はまたアルトよりの顔になった。アルトの銀髪にウスベニ裏毒茸の傘の色のピンクが入った不思議な風合いの長い髪に、知的な顔立ち。目の色はフィルの色が残って緑だ。眼鏡が似合いそうで、エドヴァルドと同い年くらい。

「どうだ?出来る男に見えるか?」

「す、凄いですね、ヨースケさん。印象がまるで違う」

「元々体が違うからなー後は名前か。ヨースケは浮くなぁ…。」

名前はヨルム。よ、から始まるから大丈夫だろ。

「あと変なとこあったらフォローしてくれ!よーし!エドの為に頑張るかー!」

 俺はうーんと伸びをする。

「で?どこに意地悪されてんの?」

 聞けばラーン王国が国境を越えてちょっかいしてきているらしい。……どこよ?地図とかある???

「あー!前に住んでたとこか!王様が色んな人とやっちゃってた人よね!」

「え?今の王は若くて、数年前に代替わりをしました」

「王子2人くらいいたよね、どっちか分かる?」

「確か第二王子であったかと……」

「王妃が王弟と浮気してできた方か!」

「え?!なんですかそれ?」

「前に行った時聞いたから嘘じゃないよ?」

 その話がホントなら……エドはうーんと考え込んだ。

「まあさ」

 俺は地図を広げる。エドのゼードラウン王国は3方向を森で囲まれ、南は海に面している。

「エドの国は守りやすそうで良かったよ」

「何を言うんだヨルム。森から色々なものが攻めてくるんだぞ!敵国、魔獣!唯一安全なのが海側なんだが王宮からは遠い!」

「いや、警戒しないと行けないのは海側だけだね。森はもう君を裏切らない。君の味方だ」

「どういう事だ……?」

「すぐ分かるよ」

 その夜にやっとゼードラウンの城に着いた。

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