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4 血の行方
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なぁんて思っていた時もありました。
「ねぇ……いつまであの人達、いるのぉ?」
「知りませんにゃあ……疲れたにゃぁ……」
我が家を包囲した刺客達はなんとずーーーーっと張り付いているのだ!もう1ヶ月にもなるのに!そんなに長い間、たくさんの人々を匿っておけるなんて出来っこないって分かるはずなのに包囲網を解こうとしないんだよ!私とにゃんこちゃん、こうちゃんはぐったりと窓辺にもたれる。私は昼間には起きていられないから、にゃんこちゃんとこうちゃんが交代でちょっかいを出してくる刺客たちを追い払っている状態が続いているんだ。
「ルドガーさまぁ……向こうの指揮官、無能なんですぅ……優柔不断で、さらに無駄にあちこちに火をつけてぇ、自分だけ美味しい物を食べて、領主屋敷でずっと寝てますぅ……囲んでる兵士達も疲弊してて」
「早く暴動でも起こればいいのににゃあん」
「ううー……私も流石にお腹が、お腹がすきましたぁ……ふらふらしますぅ」
最近はふかふかベッドで寝る元気もなくて伝統的な棺桶土ベッドで何とか凌いでいる。私はちょっと通常の吸血鬼と違って土ベッド最高派ではない。ふかふか羽毛ベッドの方が好きなのに……うう、辛いよう。
「これもエセルが……」
最近思い出していなかった義弟の小憎らしい顔を思い出す。だって私に血を分けてくれる人がいないんだ……そりゃお腹が空くと機嫌も悪くなるよ?そうならないように気をつけてたのに、こいつらまだ家の周りを取り囲んで迷惑過ぎる!
「あれもこれもエセルが……」
文句もつけたくなるよ、とぐったりしているとゴーレム達から一斉に緊急連絡が入った。
なんと痺れをやっときらしたのか、囲んでいた刺客たちが全員でりんごの木を越えたというんだ。
「全員で攻めてきた!追い返そう!」
「はいにゃ!」
「わかりました!」
「なるべく、血を流させないように」
「無理だと思いますにゃぁ……」
激しい戦闘が敷地のあちこちで起こり……無傷で追い出すことが難しくなってきた。
「にゃあ!あっ!力が入りすぎたにゃ」
「ぎゃあああー!」
にゃんこも疲れて手元が狂う。今まで手加減に手加減を重ねてなんとか無傷で追い出して来たけど、こっちにも限界があるんだ。ぱっと人間の赤い血が飛び散って、匂いが広がる。
「えーと、超微風ぅー!あっ」
「うわぁーーー!」
コウモリのこうちゃんも魔力の調整が難しくなっているし、ゴーレム達は繊細手加減モードを継続するのも辛い。
「お、お腹、お腹……空いた……」
一番不味いのは私だ。お腹がぺこぺこな上にあちこちから血の匂いがしている。目が回る、クラクラする……ああ、あああ……駄目だ、正気を保っていられない……暗くなる、目の前が、黒く塗りつぶされていく……。
「あーあーあー!襲撃者の皆さんー!退避して下さいーー!もう、我慢の、我慢の限界ですーー!ご存じの通り私は吸血鬼です~誰かれ構わず吸い付きそうです!殺したらごめんねーー!」
大声で宣言してした後、ぷっつり記憶が途切れてしまった。やっちゃったみたい……うう。どうしようこの土地に血を吸わせてはいけないのに!
「あはっ♡兄さん、兄さん。やっちゃったねぇ?」
「ぅうん……」
懐かしい声に呼ばれて瞼を上がると、やっぱり懐かしくて小憎らしい顔がこちらを見ていた。赤茶色の髪に緑の曇った瞳……私の義弟、私の罪。
「エセル……出てきちゃったか」
「うん♡まーあのままだと兄さんが死んだら困るしぃ?僕の力でネコとコウモリを乗っ取って使わせて貰ったよ」
エセルが視線を投げた先にはメイド姿のにゃんこちゃんとこうちゃんがいるけれど、目が真っ赤で、服も真っ赤だ。そして私の言葉は届かない状態……エセルに支配されている。
「もーこんなになるまで頑張るなんて兄さんらしいや!300年振に可愛いがってあげる♡」
「ちょ、やめろエセル!エセル!あっやーーーっ」
ガブリと噛みつかれた首筋から、私を作った真祖吸血鬼の支配が染み込んで来る。嫌だ、やめて、やめてくれ、エセル!ああ……駄目だ、逆らえない……エセルの言うことを聞かないとならない。
「さあ、ベッドに行こうか♡兄さん」
「……うん、エセル……」
私は言われるままにエセルと手を繋いで屋敷の方へ歩き始める。庭は何十人もの人間の血液で真っ赤に染まっていたけれど、もうどうしようもなかった。
「ねぇ……いつまであの人達、いるのぉ?」
「知りませんにゃあ……疲れたにゃぁ……」
我が家を包囲した刺客達はなんとずーーーーっと張り付いているのだ!もう1ヶ月にもなるのに!そんなに長い間、たくさんの人々を匿っておけるなんて出来っこないって分かるはずなのに包囲網を解こうとしないんだよ!私とにゃんこちゃん、こうちゃんはぐったりと窓辺にもたれる。私は昼間には起きていられないから、にゃんこちゃんとこうちゃんが交代でちょっかいを出してくる刺客たちを追い払っている状態が続いているんだ。
「ルドガーさまぁ……向こうの指揮官、無能なんですぅ……優柔不断で、さらに無駄にあちこちに火をつけてぇ、自分だけ美味しい物を食べて、領主屋敷でずっと寝てますぅ……囲んでる兵士達も疲弊してて」
「早く暴動でも起こればいいのににゃあん」
「ううー……私も流石にお腹が、お腹がすきましたぁ……ふらふらしますぅ」
最近はふかふかベッドで寝る元気もなくて伝統的な棺桶土ベッドで何とか凌いでいる。私はちょっと通常の吸血鬼と違って土ベッド最高派ではない。ふかふか羽毛ベッドの方が好きなのに……うう、辛いよう。
「これもエセルが……」
最近思い出していなかった義弟の小憎らしい顔を思い出す。だって私に血を分けてくれる人がいないんだ……そりゃお腹が空くと機嫌も悪くなるよ?そうならないように気をつけてたのに、こいつらまだ家の周りを取り囲んで迷惑過ぎる!
「あれもこれもエセルが……」
文句もつけたくなるよ、とぐったりしているとゴーレム達から一斉に緊急連絡が入った。
なんと痺れをやっときらしたのか、囲んでいた刺客たちが全員でりんごの木を越えたというんだ。
「全員で攻めてきた!追い返そう!」
「はいにゃ!」
「わかりました!」
「なるべく、血を流させないように」
「無理だと思いますにゃぁ……」
激しい戦闘が敷地のあちこちで起こり……無傷で追い出すことが難しくなってきた。
「にゃあ!あっ!力が入りすぎたにゃ」
「ぎゃあああー!」
にゃんこも疲れて手元が狂う。今まで手加減に手加減を重ねてなんとか無傷で追い出して来たけど、こっちにも限界があるんだ。ぱっと人間の赤い血が飛び散って、匂いが広がる。
「えーと、超微風ぅー!あっ」
「うわぁーーー!」
コウモリのこうちゃんも魔力の調整が難しくなっているし、ゴーレム達は繊細手加減モードを継続するのも辛い。
「お、お腹、お腹……空いた……」
一番不味いのは私だ。お腹がぺこぺこな上にあちこちから血の匂いがしている。目が回る、クラクラする……ああ、あああ……駄目だ、正気を保っていられない……暗くなる、目の前が、黒く塗りつぶされていく……。
「あーあーあー!襲撃者の皆さんー!退避して下さいーー!もう、我慢の、我慢の限界ですーー!ご存じの通り私は吸血鬼です~誰かれ構わず吸い付きそうです!殺したらごめんねーー!」
大声で宣言してした後、ぷっつり記憶が途切れてしまった。やっちゃったみたい……うう。どうしようこの土地に血を吸わせてはいけないのに!
「あはっ♡兄さん、兄さん。やっちゃったねぇ?」
「ぅうん……」
懐かしい声に呼ばれて瞼を上がると、やっぱり懐かしくて小憎らしい顔がこちらを見ていた。赤茶色の髪に緑の曇った瞳……私の義弟、私の罪。
「エセル……出てきちゃったか」
「うん♡まーあのままだと兄さんが死んだら困るしぃ?僕の力でネコとコウモリを乗っ取って使わせて貰ったよ」
エセルが視線を投げた先にはメイド姿のにゃんこちゃんとこうちゃんがいるけれど、目が真っ赤で、服も真っ赤だ。そして私の言葉は届かない状態……エセルに支配されている。
「もーこんなになるまで頑張るなんて兄さんらしいや!300年振に可愛いがってあげる♡」
「ちょ、やめろエセル!エセル!あっやーーーっ」
ガブリと噛みつかれた首筋から、私を作った真祖吸血鬼の支配が染み込んで来る。嫌だ、やめて、やめてくれ、エセル!ああ……駄目だ、逆らえない……エセルの言うことを聞かないとならない。
「さあ、ベッドに行こうか♡兄さん」
「……うん、エセル……」
私は言われるままにエセルと手を繋いで屋敷の方へ歩き始める。庭は何十人もの人間の血液で真っ赤に染まっていたけれど、もうどうしようもなかった。
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