2 / 31
2 丸い訳
しおりを挟む
「タム、トム、チム!お母さんの病気はまだ治らないの? 」
「そーなんす、ルドガー様」
ぽてぽてと私が食堂に歩いて行くと、顔がそっくりな三兄弟が夕食を口いっぱいに頬張りながら私の方を向いた。何せ母親が寝込んでいるのだ、多分ご飯が酷いものなんだろう。テーブルの上を見れば家で待つ家族や親の為に随分とお弁当を持ち帰るらしい。うむ、良い心がけだ!いっぱい持たせてやりなさい。
「それじゃあ報酬はポーションにしようかねぇ。病気が治る奴があった気がするよ」
「ありがとうございますっ!」
食べ盛りの三兄弟はスプーンでシチューをかきこみながら、私に頭を下げる。そんなことしなくていいんだよ~お互い様だからねー。
「じゃ、トムからー」
「へーい」
慣れた様子で腕を差し出したトムにいただきますと声をかけてからカプリと噛み付く。
「いてっ」
ただ、まあその程度であり三兄弟の一番下のチムももう慣れたものだ。
「晩飯も腹一杯食わせて貰えるし、ありがたいっす」
「血が減るとふらふらしちゃう人もいるからねぇ。ご飯をたくさん食べると回復も早いみたい」
行儀悪くげふりとげっぷが出てしまう……うう、満腹すぎる~。
「ルドガー様、お腹空いてないんじゃないですか?」
チムが不思議そうに聞いてくる。腹が減ってないのにどうして?と。
「私達はお腹が空かない方が良いのさ。ほら、満腹だと何でも大らかな気持ちになるでしょー?」
「なるほど!」
三兄弟は希少なポーションを黒猫メイドから受け取り、頭を下げて帰って行く。
「後はする事ないなー」
「今日もぼーっとしましょうにゃん」
「本でも読むかぁ」
のんびり、ゆったり。限られた空間の中だけだけれど、私はそうやって300年過ごしてきた。その間にこの土地を納める領主は何人も交代したけれど、基本的にのんびりな性格の私はいつも通り、話をして契約して暮らしている。私はここを離れることはできないのだから。
それがその夜に崩れた。
ドン!という大きな音と共に、領主の屋敷が炎に包まれたのだ。私の屋敷からも火を噴く領主屋敷が見えた。今の領主は中々の人格者でここ何年も良い経営をしていたのに一体何が起こった!?
「た、大変だ!にゃんこちゃん、見てきてくれ!」
「は、はいにゃ!」
猫メイドのにゃんこちゃんはぽーんと窓から飛び出すとくるりと前転して着地し、そのまま走り出した。
「こうちゃん!近くの人達を起こしてきて!危険だ」
「分かったです!ルドガー様」
コウモリのメイド、こうちゃんは飛び上がるとぽん!と音がして背中からコウモリの翼が生えた。
「みんなー大変よー!」
こうちゃんの特殊な声でぐっすり寝ている人も目を覚ますはず。
「ゴーレム達、起動して!」
いつも庭に埋まって庭石のふりをしているゴーレムに命令を下せば大小様々なゴーレムがのそりのそりと立ち上がる。
「武装したこの辺の人じゃない奴らが侵入して来たら捕まえて。領民達は守って……うちの範囲内だけでいいよ」
ゴーレム達は小さくこくんと頷いた。これくらいしかできることはない。私はこの場所にいなくてはならないのだから。
「そーなんす、ルドガー様」
ぽてぽてと私が食堂に歩いて行くと、顔がそっくりな三兄弟が夕食を口いっぱいに頬張りながら私の方を向いた。何せ母親が寝込んでいるのだ、多分ご飯が酷いものなんだろう。テーブルの上を見れば家で待つ家族や親の為に随分とお弁当を持ち帰るらしい。うむ、良い心がけだ!いっぱい持たせてやりなさい。
「それじゃあ報酬はポーションにしようかねぇ。病気が治る奴があった気がするよ」
「ありがとうございますっ!」
食べ盛りの三兄弟はスプーンでシチューをかきこみながら、私に頭を下げる。そんなことしなくていいんだよ~お互い様だからねー。
「じゃ、トムからー」
「へーい」
慣れた様子で腕を差し出したトムにいただきますと声をかけてからカプリと噛み付く。
「いてっ」
ただ、まあその程度であり三兄弟の一番下のチムももう慣れたものだ。
「晩飯も腹一杯食わせて貰えるし、ありがたいっす」
「血が減るとふらふらしちゃう人もいるからねぇ。ご飯をたくさん食べると回復も早いみたい」
行儀悪くげふりとげっぷが出てしまう……うう、満腹すぎる~。
「ルドガー様、お腹空いてないんじゃないですか?」
チムが不思議そうに聞いてくる。腹が減ってないのにどうして?と。
「私達はお腹が空かない方が良いのさ。ほら、満腹だと何でも大らかな気持ちになるでしょー?」
「なるほど!」
三兄弟は希少なポーションを黒猫メイドから受け取り、頭を下げて帰って行く。
「後はする事ないなー」
「今日もぼーっとしましょうにゃん」
「本でも読むかぁ」
のんびり、ゆったり。限られた空間の中だけだけれど、私はそうやって300年過ごしてきた。その間にこの土地を納める領主は何人も交代したけれど、基本的にのんびりな性格の私はいつも通り、話をして契約して暮らしている。私はここを離れることはできないのだから。
それがその夜に崩れた。
ドン!という大きな音と共に、領主の屋敷が炎に包まれたのだ。私の屋敷からも火を噴く領主屋敷が見えた。今の領主は中々の人格者でここ何年も良い経営をしていたのに一体何が起こった!?
「た、大変だ!にゃんこちゃん、見てきてくれ!」
「は、はいにゃ!」
猫メイドのにゃんこちゃんはぽーんと窓から飛び出すとくるりと前転して着地し、そのまま走り出した。
「こうちゃん!近くの人達を起こしてきて!危険だ」
「分かったです!ルドガー様」
コウモリのメイド、こうちゃんは飛び上がるとぽん!と音がして背中からコウモリの翼が生えた。
「みんなー大変よー!」
こうちゃんの特殊な声でぐっすり寝ている人も目を覚ますはず。
「ゴーレム達、起動して!」
いつも庭に埋まって庭石のふりをしているゴーレムに命令を下せば大小様々なゴーレムがのそりのそりと立ち上がる。
「武装したこの辺の人じゃない奴らが侵入して来たら捕まえて。領民達は守って……うちの範囲内だけでいいよ」
ゴーレム達は小さくこくんと頷いた。これくらいしかできることはない。私はこの場所にいなくてはならないのだから。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
332
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる