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32 きゃん!
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「助けて!リックさ……」
そうです、今日はリックは腹痛が痛くて帰ったそうです。腹痛が痛いなんて完全に仮病の人が使うヤツですね。それでもスコットさんがそれに気が付く余裕なんてありません。
「ふふ、おじさんのくせに可愛い人だ。おや?随分きれいなうなじじゃないか。誰にもかまれたことがないのかな?」
誰かにかまれていたら、知らないおじさんに絡まれていないんじゃないでしょうか?どちらにせよ、スコットさんのピンチには変わりはなく
「離して下さいー!」
頼りなくジタバタするだけなのです。
「ふふ、可愛いね。誘っているのかな?」
「「今、スコットさんがピンチに陥っている気がする!!」」
「マジっすか?あ、ほんとだ」
リックが手近な窓から外を見ると、ちょうどスコットさんが花畑の真ん中でジタバタしています。
「あはは、流石花屋さん。花好きッスねー」
「笑ってる場合か!!」「叔父貴じゃねーか!」
窓枠に足をかけてそのまま飛び込もうもする双子をリックは止めます。
「待つッス!スコットさんが助けを呼ぶまで待つッス!今日、俺はお休みになってるッス!だから多分次にスコットさんが助けを呼ぶのはお二人ッス!」
「な、なんだっ……て?」「え?ま?」
リックはこくんと頷きます。
「そう言う所から二人は特別!みたいな感情が育つんじゃないッスかね?!?!」
「天才か?」「ボーナス出そう」
「あざーーーす!」
「わああああ!やめて、やめて下さいーー!」
「それ!」
後ろから足を引っ張られて、べしょん!と花畑の中に倒れるスコットさん。倒れたお尻の上に腰掛けられ、起き上がれなくなります。
「はは、鈍い人だ。そんな所も可愛いね。なぁに痛いのは少しだけだから、すぐ気持ち良くなるよー?」
「い、嫌です!」
やばいお薬でも勧められてそうな台詞に、スコットさんはぶんぶんと首を振りますが、上に乗ったおじさんはちっともよけてはくれません。
大変です!このままではおじさんによるおじさんのためのBで Lな、メイクなラブが始まってしまうのです!
しかも、野外のお花畑でです!ハードルが高すぎます!
「させるかーーー!」
「うおっ!」
飛び蹴りで突っ込んできたサフィールをすんでのところで避け、おじさんはスコットさんの上から飛び降りました。
「スコットさん!大丈夫ですか!」
「ルディールさん……ううっ怖かった……」
どうしても待てなかった二人を壊れた窓から眺めてリックはため息をつきます。
「まあ、少し発展したら良いンスけどねえ」
「サフィール。叔父上を足蹴にしようとはなんて子かな?」
「うるせえ!スコットさんに手を出すな!」
「へえ?その可愛いおじさんはスコットさんって言うんだ?なあそのおじさん、私にくれないか?可愛がってあげるよ」
にこりと笑うおじさんに、サフィールは牙を剥きます。
「断る!スコットさんは俺たちのもんだ!」
「まだ、お前達のものじゃないだろう?それにその人はお前達若造じゃ荷が重い。さ、こちらへ渡しなさい」
「嫌だ!絶対に嫌だ!」
ぐるるると怒った犬のように喉を鳴らさん勢いのサフィールとルディールにおじさんはため息をつきます。
「はぁ、皇帝の座は譲ってやったんだから、そのスコットさんとやらは私に譲りなさいサフィ、ルディ」
「い、嫌だ……っ!」
「あれ?なんか雲行きが怪しいッスね……あの双子も大公様には弱いんスか……?」
上手く行きそうだとこっそり覗き見していたリックも冷や汗をかき始めました。
スコットさんを押し倒したおじさんは、サフィールとルディールの叔父さん、つまりは二人の父親の弟に当たる人で、大公の地位にいる人でした。
「わがままを言うもんじゃないよ?さあ、こちらに」
「嫌だ!」
それでもサフィールはじりじりと後ろに後ずさっていますし、スコットさんを抱きしめているルディールもその場から動けません。
「あれ?大公様ってこんなにおっかない方でしたっけ……」
走りながらリックは思い出していますが、良く分かりません。最近まで平々凡々な下級貴族だったリックには知らない事です。
「二人とも、その人をこちらに」
「「嫌だ!嫌だ!」」
「我儘が過ぎる子供にはお仕置きが必要だな?」
地鳴りが聞こえそうな迫力に、サフィールはルディールのすぐ側まで追い詰められます。
スコットさんと言えば訳も分からず、目を回す寸前でした。
「こうなれば」
「あ、待て!」
「ごめん、スコットさん」
「へ?」
「あ」
この場にいた人、見ていた者全員が思わず口にしました。
「きゃん!」
ルディールとサフィールに右と左、両側から噛みつかれたスコットさんは子犬のような鳴き声を一つあげて、ぱったりと倒れてしまったのです。
そうです、今日はリックは腹痛が痛くて帰ったそうです。腹痛が痛いなんて完全に仮病の人が使うヤツですね。それでもスコットさんがそれに気が付く余裕なんてありません。
「ふふ、おじさんのくせに可愛い人だ。おや?随分きれいなうなじじゃないか。誰にもかまれたことがないのかな?」
誰かにかまれていたら、知らないおじさんに絡まれていないんじゃないでしょうか?どちらにせよ、スコットさんのピンチには変わりはなく
「離して下さいー!」
頼りなくジタバタするだけなのです。
「ふふ、可愛いね。誘っているのかな?」
「「今、スコットさんがピンチに陥っている気がする!!」」
「マジっすか?あ、ほんとだ」
リックが手近な窓から外を見ると、ちょうどスコットさんが花畑の真ん中でジタバタしています。
「あはは、流石花屋さん。花好きッスねー」
「笑ってる場合か!!」「叔父貴じゃねーか!」
窓枠に足をかけてそのまま飛び込もうもする双子をリックは止めます。
「待つッス!スコットさんが助けを呼ぶまで待つッス!今日、俺はお休みになってるッス!だから多分次にスコットさんが助けを呼ぶのはお二人ッス!」
「な、なんだっ……て?」「え?ま?」
リックはこくんと頷きます。
「そう言う所から二人は特別!みたいな感情が育つんじゃないッスかね?!?!」
「天才か?」「ボーナス出そう」
「あざーーーす!」
「わああああ!やめて、やめて下さいーー!」
「それ!」
後ろから足を引っ張られて、べしょん!と花畑の中に倒れるスコットさん。倒れたお尻の上に腰掛けられ、起き上がれなくなります。
「はは、鈍い人だ。そんな所も可愛いね。なぁに痛いのは少しだけだから、すぐ気持ち良くなるよー?」
「い、嫌です!」
やばいお薬でも勧められてそうな台詞に、スコットさんはぶんぶんと首を振りますが、上に乗ったおじさんはちっともよけてはくれません。
大変です!このままではおじさんによるおじさんのためのBで Lな、メイクなラブが始まってしまうのです!
しかも、野外のお花畑でです!ハードルが高すぎます!
「させるかーーー!」
「うおっ!」
飛び蹴りで突っ込んできたサフィールをすんでのところで避け、おじさんはスコットさんの上から飛び降りました。
「スコットさん!大丈夫ですか!」
「ルディールさん……ううっ怖かった……」
どうしても待てなかった二人を壊れた窓から眺めてリックはため息をつきます。
「まあ、少し発展したら良いンスけどねえ」
「サフィール。叔父上を足蹴にしようとはなんて子かな?」
「うるせえ!スコットさんに手を出すな!」
「へえ?その可愛いおじさんはスコットさんって言うんだ?なあそのおじさん、私にくれないか?可愛がってあげるよ」
にこりと笑うおじさんに、サフィールは牙を剥きます。
「断る!スコットさんは俺たちのもんだ!」
「まだ、お前達のものじゃないだろう?それにその人はお前達若造じゃ荷が重い。さ、こちらへ渡しなさい」
「嫌だ!絶対に嫌だ!」
ぐるるると怒った犬のように喉を鳴らさん勢いのサフィールとルディールにおじさんはため息をつきます。
「はぁ、皇帝の座は譲ってやったんだから、そのスコットさんとやらは私に譲りなさいサフィ、ルディ」
「い、嫌だ……っ!」
「あれ?なんか雲行きが怪しいッスね……あの双子も大公様には弱いんスか……?」
上手く行きそうだとこっそり覗き見していたリックも冷や汗をかき始めました。
スコットさんを押し倒したおじさんは、サフィールとルディールの叔父さん、つまりは二人の父親の弟に当たる人で、大公の地位にいる人でした。
「わがままを言うもんじゃないよ?さあ、こちらに」
「嫌だ!」
それでもサフィールはじりじりと後ろに後ずさっていますし、スコットさんを抱きしめているルディールもその場から動けません。
「あれ?大公様ってこんなにおっかない方でしたっけ……」
走りながらリックは思い出していますが、良く分かりません。最近まで平々凡々な下級貴族だったリックには知らない事です。
「二人とも、その人をこちらに」
「「嫌だ!嫌だ!」」
「我儘が過ぎる子供にはお仕置きが必要だな?」
地鳴りが聞こえそうな迫力に、サフィールはルディールのすぐ側まで追い詰められます。
スコットさんと言えば訳も分からず、目を回す寸前でした。
「こうなれば」
「あ、待て!」
「ごめん、スコットさん」
「へ?」
「あ」
この場にいた人、見ていた者全員が思わず口にしました。
「きゃん!」
ルディールとサフィールに右と左、両側から噛みつかれたスコットさんは子犬のような鳴き声を一つあげて、ぱったりと倒れてしまったのです。
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