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30 皇帝被害

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「は、はくしょん!」

 スコットさんがくしゃみをすれば

「スコットさん?!」
「そういえば風邪だったじゃないか!何でうろうろしてるんだ!」

 ひょいっとサフィールの方に抱え上げられ、走って部屋に連行される。

「わー!俺もスコットさんを抱っこしたいー!」

「50歩で交代な!」

「あわわーー!歩けます」

スコットさんがくしゃみをすれば帝国が大騒ぎなのです。

 とりあえず、誰も死なずに済みました。リック、令嬢、護衛を手当てしながら城の看護官は

「これがおじさん女神パワーか……」

 おじさんと女神と言う相容れないはずの存在を混ぜてしまっていました。

「女神……?いや、あの皇帝達を宥める聖女……?!」

 帝国はよく分からない宗教に走りそうになっています。大丈夫でしょうか?早くリックに目を覚まして貰ってなんとかしないといけません。
 起きてーリック!起きてーー!

「うーん、スコットさんが結婚承諾書にハンコ押すまで起きたくないっスーー」

 リックは怪我をしていないようです。死んだふりでしょうか?


「ハウワー公爵……あの方は、ずっと帝国に居てくれるんですよね?」

「どうだろうなぁ……本人は帰る気満々だからなぁ」

 リックは看護官達に囲まれる。

「お願いしますっ!絶対に!絶対に逃がさないで下さいっ!あの方がいらっしゃれば皇帝被害が無くなるんですよ!快挙ですよ!快挙!!」

「皇帝被害……」

「あの人達わがままなのに強すぎるんですよーーー!入院のベッドが常に満床なんですからーーーー!」

「俺も入院したいッス」

「お断りです」

 にべもなく断られたリックは何度目になるか分からないため息をつきます。どうしたらスコットさんを罠に嵌めて帝国に居てもらうか考えるのに頭が痛いのです。

「あーホントに入院したい……そうだ!」

 リックの頭だって痛めるだけの飾りじゃありませんから、自分の保身のためなら頑張れるリックなのです。


「むにゅ……」

 本日も何事もなくどでかいベッドで目を覚まし、最近必ず左右にいる皇帝を確認したところで、侍女がノックをしてから入ってくる。珍しく今日はリックが居ない。

「あの、リックさんは?」

「リカルド・ハウワー公爵でしたら、本日は急な腹痛が痛むとおっしゃって、帰城されました」

「そ、そうなんですか……」

 しょんぼり、スコットさんは気の毒なほど萎れてしまいます。スコットさんにとってはこの帝国で頼れる知り合いはリックしかいないのですから。

「あ、あああわ……!へ、陛下、陛下達!起きてくださいませ!」

 侍女は慌ててあまり頼りになりそうもない双子の皇帝に声をかけました。
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