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10 有能・リック
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時は少し戻り、リックは隊長のお尻を蹴っ飛ばします。
「隊長!森に行って鹿を狩って来てください!」
「はあ?!突然なんだね……」
「いいから!早く!早く!!!」
リックの剣幕とローキックの連打に負けて隊長さんは森へと追い出されました。
「ううー!間に合うだろうか!隊長!スコットさんの貞操がかかってるんですからね!」
すぐに隊長さんは戻って来ました。背中に若いとっても美味しそうな雄鹿を背負っています!
「何かすぐに捕まえて帰らないと、スコットさんが危険に晒される気がして!」
「流石隊長キモい」
そう言いながらもリックはチャチャっと雄鹿を適度に捌いて、大半を持ちました。
「行きますよ!隊長!」
「おっ?おう??」
リックはお肉を背負って急ぎ足で丘を登ります。
「スコットさん、スコットさーん!お隣のリックでーす」
どんどん!どんどん!リックはスコットさんのお家のあまり建て付けの良くない扉を叩きます。
「あっ!リック!そ、そんな!スコットさんの家に!だ、駄目だ!わ、私はそんな!ああ!ドキドキするぅ!」
「黙って!隊長!」
ややしばらくすると扉が開き、ホッとした顔のスコットさんが出てきました。
「リックさん!」
リックの顔を見て、助けが来たとぱぁっ!と笑顔になったのです!やっぱりな、リックは内心悪態をつきますが、きちんと理由をぶら下げて来たので取り敢えず切り出します。
「スコットさん、隊長がたまたま偶然に鹿を捕まえて来たので、お裾分けに来ましたよ!」
「わぁ!凄いですね、入って下さい」
「はい、お邪魔しますよー」
するーっとリックはスコットさんの家に侵入します。
「隊長も!」
「は!はひぃ!」
ガチガチに緊張しながら入る隊長ですが
「む!」
先客に眉を寄せました。
「……こんばんは、どちら様でしょうか」
「俺たちはスコットさんのお隣さんだよ」
スコットさんの家の周りは何もないので、隣の家は警備隊の宿場かつ事務所なんです。だからリックの言葉に嘘はありません。
「リックさん、こっちです」
「任せて下さい」
リックとスコットさんは台所へ消えます。
あまり広くない部屋に隊長とアルフレッドが残されました。
「……」
「……」
二人とも無言ですが、双方ともに何かを感じ取って、圧がどんどん上がって行きます。
ピキン、パキン!何かおかしな音も聞こえてきました。一髪触発です。
「助かりましたぁーリックさん!」
「どうしたんです?」
リックは出来る男なので素知らぬフリでスコットさんの話を聞きます。ついでに持ってきた鹿を捌いて手際よく料理を作り始めます。
スコットさん、一人暮らしが長くなってきたおじさんなのに、料理は今ひとつなんです。
たまにリックがお肉を持ってきてお料理を作っていたので、こうして簡単にお台所まで入れるんですね。
勿論隊長には内緒でしたが、今日は緊急事態なので、仕方がありません。
「泊まるところがないと言ったので家にあげたんですが……話は噛み合わないし、変な生首持っていて怖いんです」
「わぁ……」
リックさんは部屋で隊長と睨み合っている男が勇者だと知っていますが、知らないフリして話を合わせます。
リックは空気を読める男なのです。
「スコットさんのお知り合いなので?」
そう尋ねると
「そう、らしい……です」
なんとまぁ、語尾が小さくなってます。
そんな怪しい人お家にいれるんじゃありません!とリック母さんはスコットさんを叱りたくなりましたが、ぐっと我慢します。何せリックは気遣いの出来る男なのですから。
隊長……上手いことやって下さいよ?
リックはスコットさんの事なら有能な隊長に望みを託した。
「隊長!森に行って鹿を狩って来てください!」
「はあ?!突然なんだね……」
「いいから!早く!早く!!!」
リックの剣幕とローキックの連打に負けて隊長さんは森へと追い出されました。
「ううー!間に合うだろうか!隊長!スコットさんの貞操がかかってるんですからね!」
すぐに隊長さんは戻って来ました。背中に若いとっても美味しそうな雄鹿を背負っています!
「何かすぐに捕まえて帰らないと、スコットさんが危険に晒される気がして!」
「流石隊長キモい」
そう言いながらもリックはチャチャっと雄鹿を適度に捌いて、大半を持ちました。
「行きますよ!隊長!」
「おっ?おう??」
リックはお肉を背負って急ぎ足で丘を登ります。
「スコットさん、スコットさーん!お隣のリックでーす」
どんどん!どんどん!リックはスコットさんのお家のあまり建て付けの良くない扉を叩きます。
「あっ!リック!そ、そんな!スコットさんの家に!だ、駄目だ!わ、私はそんな!ああ!ドキドキするぅ!」
「黙って!隊長!」
ややしばらくすると扉が開き、ホッとした顔のスコットさんが出てきました。
「リックさん!」
リックの顔を見て、助けが来たとぱぁっ!と笑顔になったのです!やっぱりな、リックは内心悪態をつきますが、きちんと理由をぶら下げて来たので取り敢えず切り出します。
「スコットさん、隊長がたまたま偶然に鹿を捕まえて来たので、お裾分けに来ましたよ!」
「わぁ!凄いですね、入って下さい」
「はい、お邪魔しますよー」
するーっとリックはスコットさんの家に侵入します。
「隊長も!」
「は!はひぃ!」
ガチガチに緊張しながら入る隊長ですが
「む!」
先客に眉を寄せました。
「……こんばんは、どちら様でしょうか」
「俺たちはスコットさんのお隣さんだよ」
スコットさんの家の周りは何もないので、隣の家は警備隊の宿場かつ事務所なんです。だからリックの言葉に嘘はありません。
「リックさん、こっちです」
「任せて下さい」
リックとスコットさんは台所へ消えます。
あまり広くない部屋に隊長とアルフレッドが残されました。
「……」
「……」
二人とも無言ですが、双方ともに何かを感じ取って、圧がどんどん上がって行きます。
ピキン、パキン!何かおかしな音も聞こえてきました。一髪触発です。
「助かりましたぁーリックさん!」
「どうしたんです?」
リックは出来る男なので素知らぬフリでスコットさんの話を聞きます。ついでに持ってきた鹿を捌いて手際よく料理を作り始めます。
スコットさん、一人暮らしが長くなってきたおじさんなのに、料理は今ひとつなんです。
たまにリックがお肉を持ってきてお料理を作っていたので、こうして簡単にお台所まで入れるんですね。
勿論隊長には内緒でしたが、今日は緊急事態なので、仕方がありません。
「泊まるところがないと言ったので家にあげたんですが……話は噛み合わないし、変な生首持っていて怖いんです」
「わぁ……」
リックさんは部屋で隊長と睨み合っている男が勇者だと知っていますが、知らないフリして話を合わせます。
リックは空気を読める男なのです。
「スコットさんのお知り合いなので?」
そう尋ねると
「そう、らしい……です」
なんとまぁ、語尾が小さくなってます。
そんな怪しい人お家にいれるんじゃありません!とリック母さんはスコットさんを叱りたくなりましたが、ぐっと我慢します。何せリックは気遣いの出来る男なのですから。
隊長……上手いことやって下さいよ?
リックはスコットさんの事なら有能な隊長に望みを託した。
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