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9 ティセル視点
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「ふわ……」
「気をつけろよ、ボース」
とても、とてもきれいな人だと思った。そして私はその人に一目惚れした。
我が国はもう何年も隣の国と戦争をしている。
「何故!羊の国を狼が落とせないのだ!」
「羊とはいえ、凶暴かつ体も大きいし、あの角!恐ろしくデカくて強い」
「軍神シーファーンが邪魔だ!」
何度も何度も軍議に出てくる名前。アルガ国の軍神シーファーン。第四王子らしく、捨て駒のようにあちこちの戦場に送り込まれるも、なんとか生き延び今では軍神と呼ばれるようになったとか。
私は彼に近い物を感じた。私も邪魔にされ何とか知識を磨き生きている。まあ私の場合はオーグ国の腹黒なんて呼ばれていて、人に教えたい通り名ではない。
敵国の情勢を見るために忍び込んだ先で、シーファーン様を間近にみた。
濃い茶色の長い髪を無造作に一つに束ね、緑の瞳がきれいだが、何よりその頭に生えている物凄い大きな角が印象に残る。大きくて前方外側に捻れながら伸びる角。
良く鍛え上げられて、どこもかしこも無駄な肉がない。なんて美しい男!
「ふ、ふふ、美味しそう……あの人を私の物にしたいな。あの人を私の下で啼かせたらどんな声で啼いてくださるんだろう!」
私はシーファーン様を手に入れるため、ありとあらゆる手を使い、頭を使った。
「ティセル!なんと!先祖代々をバカにするのか!」
「くだらぬ意地の張り合いで戦争を続けるなど、もう国民は疲弊し切っている!狼が羊に負ける?!結構結構!羊とは言え、向こうはただの羊に在らず。アルガリ種であり、こちらはただの灰色狼!」
しかも狼という驕りのせいで、いつも負けている。そこに私が少し手を入れ、完全敗北させたのだ、我が国を!
そう!シーファーン様を手に入れる為に、国を負けさせたんだ。実際に、国は痩せ、民は疲れ切っていてすぐにやめさせたい戦争ではあった。
第一目的が私の中ではシーファーン様だっただけで。
勿論人質には私が手を上げた。私が行くのを渋る人もいたが、他の王子は羊に頭など下げられるか!と拒否したのでちょうど良かった。
アルガの国につくと、すぐにシーファーン様の姿を見る事ができた。戦争が終わってすぐだろうから、まだ遠くには行かされていないだろうと思ってはいたが、良かったと安堵する。
戦場でみた彼も素晴らしく美しかったが、口悪くもリラックスしている姿はとても愛らしく、あの喉元に噛みつきたくて仕方がなかった。
「あの軍神を可愛いなどとおっしゃるのはティセル王子くらいです」
と、数人だけ連れてきた手練れのメイドは言うが、とても可愛いだろうが!
間違いなくシーファーン様はあまり時を置かずしてどこぞの戦場に送り込まれる。そして王子達の私を見る目が欲にまみれている。
私は見た目が可愛らしいという事を知っている。この見た目をフルに活用させて貰うとしよう。
何せ、私の可愛いシーファーン様も嬉しい事に私に興味を持ってくださったようだから。
「気をつけろよ、ボース」
とても、とてもきれいな人だと思った。そして私はその人に一目惚れした。
我が国はもう何年も隣の国と戦争をしている。
「何故!羊の国を狼が落とせないのだ!」
「羊とはいえ、凶暴かつ体も大きいし、あの角!恐ろしくデカくて強い」
「軍神シーファーンが邪魔だ!」
何度も何度も軍議に出てくる名前。アルガ国の軍神シーファーン。第四王子らしく、捨て駒のようにあちこちの戦場に送り込まれるも、なんとか生き延び今では軍神と呼ばれるようになったとか。
私は彼に近い物を感じた。私も邪魔にされ何とか知識を磨き生きている。まあ私の場合はオーグ国の腹黒なんて呼ばれていて、人に教えたい通り名ではない。
敵国の情勢を見るために忍び込んだ先で、シーファーン様を間近にみた。
濃い茶色の長い髪を無造作に一つに束ね、緑の瞳がきれいだが、何よりその頭に生えている物凄い大きな角が印象に残る。大きくて前方外側に捻れながら伸びる角。
良く鍛え上げられて、どこもかしこも無駄な肉がない。なんて美しい男!
「ふ、ふふ、美味しそう……あの人を私の物にしたいな。あの人を私の下で啼かせたらどんな声で啼いてくださるんだろう!」
私はシーファーン様を手に入れるため、ありとあらゆる手を使い、頭を使った。
「ティセル!なんと!先祖代々をバカにするのか!」
「くだらぬ意地の張り合いで戦争を続けるなど、もう国民は疲弊し切っている!狼が羊に負ける?!結構結構!羊とは言え、向こうはただの羊に在らず。アルガリ種であり、こちらはただの灰色狼!」
しかも狼という驕りのせいで、いつも負けている。そこに私が少し手を入れ、完全敗北させたのだ、我が国を!
そう!シーファーン様を手に入れる為に、国を負けさせたんだ。実際に、国は痩せ、民は疲れ切っていてすぐにやめさせたい戦争ではあった。
第一目的が私の中ではシーファーン様だっただけで。
勿論人質には私が手を上げた。私が行くのを渋る人もいたが、他の王子は羊に頭など下げられるか!と拒否したのでちょうど良かった。
アルガの国につくと、すぐにシーファーン様の姿を見る事ができた。戦争が終わってすぐだろうから、まだ遠くには行かされていないだろうと思ってはいたが、良かったと安堵する。
戦場でみた彼も素晴らしく美しかったが、口悪くもリラックスしている姿はとても愛らしく、あの喉元に噛みつきたくて仕方がなかった。
「あの軍神を可愛いなどとおっしゃるのはティセル王子くらいです」
と、数人だけ連れてきた手練れのメイドは言うが、とても可愛いだろうが!
間違いなくシーファーン様はあまり時を置かずしてどこぞの戦場に送り込まれる。そして王子達の私を見る目が欲にまみれている。
私は見た目が可愛らしいという事を知っている。この見た目をフルに活用させて貰うとしよう。
何せ、私の可愛いシーファーン様も嬉しい事に私に興味を持ってくださったようだから。
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