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 この可愛い隣の敗戦国の王子様は、ぷるぷると耳まで震わせながら色々間違った事を口にした。

「ティセル王子は何の責任もないと」

 俺は王子の方をしっかり見る。俺の胸くらいまでしかない身長。まだ未発達な手足。種族的な物で背も高く、体躯もしっかりしたオレに比べたら儚くて守ってやりたくなるようなそんな王子様。
 俺みたいに、その辺に放っておけば草でも食って逞しく生き残っているような大雑把な王子とは違う生き物。

「いえ、あの!でも、私は!あの、あの!せ、責任を取って、あ、貴方を妻にぃーーー!」

「はーいぃぃ?!」

 どうしてこうなった?


「ティセル王子、気を確かに」

「私は正気です!もう既にアルガ王にはお伝えしております!」

「俺の耳がまだ生きているなら、ティセル王子が、俺を妻にすると言ったように聞こえましたが?普通逆では無いのですか?」

 王子はぶんぶん!とあたまが取れちゃうんじゃないかと思うほど首を振り、否定。ついでに尻尾がパタパタと嬉しそうに揺れている。

「違います!私が!シーファーン様を妻にしたいのです!……お嫌でしたか……?」

 ぐっ!可愛い!可愛いかよ!そんな可愛い顔で、こてん、なんてされたら嫌と言えるのか?!言えるわけが無い!ないぞ!

「し、しかしティセル王子。私は男ですし、貴方も男だ。私はともかく、あなたはこの地でその血を根付かせる義務がある」

「大丈夫です!それは我が王家に伝わる秘薬がありますから!」

「ひ、や、く」

「はい!こちらに送られる際に持ってまいりました。こちらの王家には姫がおらず王子が多いのは分かっておりましたから!」

 なんだかとんでも無い事を言われている気がするが、とても好みの可愛い顔が満面の笑みで言われたら、内容が上手く伝わってこない!

「え?いや、は?」

「ああ!良かった!相性の事もあるし、私の事もあるから、合わなかったりお断りされたらどうしようと思っていたのですが、なんの問題も無い事が昨夜分かりましたし!」

 良かった?何が良かったんだ?!

「ねぇ良いでしょう?シーファーン様、アルガの軍神様。私の妻になって下さいよ」
 
 うるうるした目で、耳までぺたりと寝て……嬉しそうに尻尾をぶんぶんする可愛い子にきゅるん!と見上げられて俺は思わず間違った。

「あ、うん。良いよ」

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