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「セラス、迎えに来た」
「ああ、ウィリー。久しぶり」
花びらと共に吹き込んだ風は風の精霊王だと言うウィリーだ。さっきから窓の外にいるのを知ってたんだ。
「久しぶり?ついこの前に会ったばかりだろう?」
「精霊の感覚ってそんなものなの?」
そうらしい。ウィリーはククッと笑った。
「どうした?チビども……ははぁ……「忌み子」か。胸糞悪いな、関わりたくもない」
《王様!あいつを殺そうよ!仲間を引き裂いたあいつ!嫌い!》
《そうだ!そうだ!あいつらが大地も殺したんだよ!》
「あんな汚い物に触んのやだよ。あと五日ほどで死ぬ命だ。ほっとけほっとけ。「忌み子」に触ると格が落ちるぞ。セラスの魔力でも吸って落ち着けよ」
「僕をお茶代わりにしないで下さい」
ウィリーは大らかに笑っている。
「セ、セラス!誰それ!」
精霊王のウィリーの姿はレオンにも見えるようで、風と共に現れたウィリーを指差して驚いている。
「誰でも良いだろ、人の子。まあセラスは精霊界に貰って行くよ。その方が人間の世も落ち着くだろ」
「いや!俺にくれ。ちゃんと可愛がってやるから」
レオン何を言ってるの?俺にくれなんて、一応僕はモノじゃないよ?……まあ、ほとんど人形みたいなものだったから、仕方がないか。
ウィリーはふん、と鼻で笑った。
「お前にセラスは守れない。だからやれないな、人の子よ」
ウィリーは手を伸ばして僕の体を抱き上げる。
「大丈夫だ、セラス。俺たちは痛い事も苦しい事もしない」
「……良いよ。好きに使って。その代わり、要らなくなったらちゃんと殺して欲しい」
「……お前、これからどうされるか気づいて……」
ウィリーは少し苦い顔をしたけれど、もう良いんだ。
「ウィリーの言う通り、僕は人間の世界にいちゃいけなかったんだ。僕がいない方が平和だよ」
「平和とかどーでも良いんだよ!俺に寄越せって!!」
レオン、そんな大きな声を出しちゃダメだ。ほんとうっかりな兄弟だな。
「何事です?!レオン!」
扉が開いて、カザル管理官が顔を出した。あーあ、面倒くさい人達が出てきたよ。
「くせぇな。「忌み子」は」
僕を抱いたまま、ウィリーは顔を顰める。
「死臭と腐臭、嘘つきと裏切りの匂いしかして来ない。ああ、吐きそうだ。みんな集まれ、セラスの側ならまだマシだ」
近くにいた精霊達は全員僕にくっついてしまう。重くはないけど、何か息苦しい。
「お前……いや、貴方は……?」
「精霊王じゃ!間違いない!その色!風の精霊王様じゃ!捕らえろ、あいつを捕まえろ!あいつを柱として縛りつければ土地は蘇る!」
廊下には車椅子みたいな物に乗ったお爺さんがいて、汚い声でがなり立てた。どうやらこの人がジェスト公爵らしい。
確かに僕にも汚く見えるよ。
嘘と欲望に塗れている。
「ああ、ウィリー。久しぶり」
花びらと共に吹き込んだ風は風の精霊王だと言うウィリーだ。さっきから窓の外にいるのを知ってたんだ。
「久しぶり?ついこの前に会ったばかりだろう?」
「精霊の感覚ってそんなものなの?」
そうらしい。ウィリーはククッと笑った。
「どうした?チビども……ははぁ……「忌み子」か。胸糞悪いな、関わりたくもない」
《王様!あいつを殺そうよ!仲間を引き裂いたあいつ!嫌い!》
《そうだ!そうだ!あいつらが大地も殺したんだよ!》
「あんな汚い物に触んのやだよ。あと五日ほどで死ぬ命だ。ほっとけほっとけ。「忌み子」に触ると格が落ちるぞ。セラスの魔力でも吸って落ち着けよ」
「僕をお茶代わりにしないで下さい」
ウィリーは大らかに笑っている。
「セ、セラス!誰それ!」
精霊王のウィリーの姿はレオンにも見えるようで、風と共に現れたウィリーを指差して驚いている。
「誰でも良いだろ、人の子。まあセラスは精霊界に貰って行くよ。その方が人間の世も落ち着くだろ」
「いや!俺にくれ。ちゃんと可愛がってやるから」
レオン何を言ってるの?俺にくれなんて、一応僕はモノじゃないよ?……まあ、ほとんど人形みたいなものだったから、仕方がないか。
ウィリーはふん、と鼻で笑った。
「お前にセラスは守れない。だからやれないな、人の子よ」
ウィリーは手を伸ばして僕の体を抱き上げる。
「大丈夫だ、セラス。俺たちは痛い事も苦しい事もしない」
「……良いよ。好きに使って。その代わり、要らなくなったらちゃんと殺して欲しい」
「……お前、これからどうされるか気づいて……」
ウィリーは少し苦い顔をしたけれど、もう良いんだ。
「ウィリーの言う通り、僕は人間の世界にいちゃいけなかったんだ。僕がいない方が平和だよ」
「平和とかどーでも良いんだよ!俺に寄越せって!!」
レオン、そんな大きな声を出しちゃダメだ。ほんとうっかりな兄弟だな。
「何事です?!レオン!」
扉が開いて、カザル管理官が顔を出した。あーあ、面倒くさい人達が出てきたよ。
「くせぇな。「忌み子」は」
僕を抱いたまま、ウィリーは顔を顰める。
「死臭と腐臭、嘘つきと裏切りの匂いしかして来ない。ああ、吐きそうだ。みんな集まれ、セラスの側ならまだマシだ」
近くにいた精霊達は全員僕にくっついてしまう。重くはないけど、何か息苦しい。
「お前……いや、貴方は……?」
「精霊王じゃ!間違いない!その色!風の精霊王様じゃ!捕らえろ、あいつを捕まえろ!あいつを柱として縛りつければ土地は蘇る!」
廊下には車椅子みたいな物に乗ったお爺さんがいて、汚い声でがなり立てた。どうやらこの人がジェスト公爵らしい。
確かに僕にも汚く見えるよ。
嘘と欲望に塗れている。
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