【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
31 / 33

31 それはお菓子よ

しおりを挟む
「ミ、ミーアは可愛いわ!ねえ!そうでしょう!第一王子様!ミーアを選んでくれたんでしょう?!間違ってユーティアを連れて来たんでしょう!」

 シューに向かってそう叫ぶミーア。

「え?もしかして俺に行っているか?!」

 シューの驚きも当然です。だってミーアは「第一王子」に話しかけているんですものね。シューは第二皇子ですし、自分の事とは思っていなかったのでしょう。

「……娘、その「第一王子」とやらの名前を言うてみよ」

 冷たい、冷たい皇妃様の声。第一皇子はファルク様と言うのですけど、ミーアでも一般常識の帝国皇子の名前くらいは覚えているはず。

「え、えっと……しゅー……しゅー……シュークリーム!」

「ユーティア、ユーティア!俺、今、噴き出すの滅茶苦茶堪えた。凄くねえ?!」

 ブルブル震えながら、私の隣でシューが興奮気味に小声で話しかけて来ました。

「ええ、素晴らしいです。私も驚きのあまり思考が飛びました」

「シュ、シュークリーム、シューっぶ、ぶふっ!しかも「第一王子」う、ぶふっ」

 フィル兄様は耐え切れずその場に膝をつきました。衛兵達は皆、口をぽかんと開けています。

「王よ、私はどうやら酷い侮辱を受けたようですわね」

「そうだな、皇妃よ。娘、そこにいる私の息子の王太子は第二皇子にして名はシューレウスと言う。お前は帝国皇帝の前で偽りしか語らぬ愚か者。ユーティアの姉妹として一刻でも過ごしたと聞いておったがユーティアの苦労が手に取るように分かった。首を刎ねよ」

「ひっ?!な、なんで、何で!助けて!第一王子様!」

 この後に及んでもシューに向かって第一王子様、助けてと叫ぶミーア。あの子はこんなにも人の話がわからない子だったのですね。

「お、お待ち、お待ちください王よ」

 まだお腹を抱えて笑っていたフィル兄様が立ち上がりました。

「そこの阿呆は首を落とす価値もない。それにユーティアの書類上の家族であった時もあったのです、ねえユーティア。アレらの首、欲しいですか?」

 私は首を横に振りました。憎く思った事もありました。どうして、何で、と。しかし、命まで取りたいと思った事はありません。首、もっと要りません。貰ったとしても始終ずるいずるいと文句と小言だけ垂れ流しそうじゃないですか……。

「その者達を殺めてしまえば、心優しいユーティアの事です。負担に思いましょう。これ以上その馬鹿どもの事でユーティアを煩わせたくないのです、どうでしょう?ローザンヌ様」

「そうね、ユーティアの心をこれ以上波立たせるのは本意ではないわ。優しいユーティアに感謝する事ね、お前たちの首が胴から離れなかったのはユーティアのお陰よ」

「え……ユ、ユーティア……の?」

 信じられないと目を瞬かせるミーアの絶望に満ちた顔。それを見ても私は優越感などは感じずただ哀れに思うだけでした。

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

別れたいようなので、別れることにします

天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。 魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。 命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。 王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

処理中です...