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31 それはお菓子よ
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「ミ、ミーアは可愛いわ!ねえ!そうでしょう!第一王子様!ミーアを選んでくれたんでしょう?!間違ってユーティアを連れて来たんでしょう!」
シューに向かってそう叫ぶミーア。
「え?もしかして俺に行っているか?!」
シューの驚きも当然です。だってミーアは「第一王子」に話しかけているんですものね。シューは第二皇子ですし、自分の事とは思っていなかったのでしょう。
「……娘、その「第一王子」とやらの名前を言うてみよ」
冷たい、冷たい皇妃様の声。第一皇子はファルク様と言うのですけど、ミーアでも一般常識の帝国皇子の名前くらいは覚えているはず。
「え、えっと……しゅー……しゅー……シュークリーム!」
「ユーティア、ユーティア!俺、今、噴き出すの滅茶苦茶堪えた。凄くねえ?!」
ブルブル震えながら、私の隣でシューが興奮気味に小声で話しかけて来ました。
「ええ、素晴らしいです。私も驚きのあまり思考が飛びました」
「シュ、シュークリーム、シューっぶ、ぶふっ!しかも「第一王子」う、ぶふっ」
フィル兄様は耐え切れずその場に膝をつきました。衛兵達は皆、口をぽかんと開けています。
「王よ、私はどうやら酷い侮辱を受けたようですわね」
「そうだな、皇妃よ。娘、そこにいる私の息子の王太子は第二皇子にして名はシューレウスと言う。お前は帝国皇帝の前で偽りしか語らぬ愚か者。ユーティアの姉妹として一刻でも過ごしたと聞いておったがユーティアの苦労が手に取るように分かった。首を刎ねよ」
「ひっ?!な、なんで、何で!助けて!第一王子様!」
この後に及んでもシューに向かって第一王子様、助けてと叫ぶミーア。あの子はこんなにも人の話がわからない子だったのですね。
「お、お待ち、お待ちください王よ」
まだお腹を抱えて笑っていたフィル兄様が立ち上がりました。
「そこの阿呆は首を落とす価値もない。それにユーティアの書類上の家族であった時もあったのです、ねえユーティア。アレらの首、欲しいですか?」
私は首を横に振りました。憎く思った事もありました。どうして、何で、と。しかし、命まで取りたいと思った事はありません。首、もっと要りません。貰ったとしても始終ずるいずるいと文句と小言だけ垂れ流しそうじゃないですか……。
「その者達を殺めてしまえば、心優しいユーティアの事です。負担に思いましょう。これ以上その馬鹿どもの事でユーティアを煩わせたくないのです、どうでしょう?ローザンヌ様」
「そうね、ユーティアの心をこれ以上波立たせるのは本意ではないわ。優しいユーティアに感謝する事ね、お前たちの首が胴から離れなかったのはユーティアのお陰よ」
「え……ユ、ユーティア……の?」
信じられないと目を瞬かせるミーアの絶望に満ちた顔。それを見ても私は優越感などは感じずただ哀れに思うだけでした。
シューに向かってそう叫ぶミーア。
「え?もしかして俺に行っているか?!」
シューの驚きも当然です。だってミーアは「第一王子」に話しかけているんですものね。シューは第二皇子ですし、自分の事とは思っていなかったのでしょう。
「……娘、その「第一王子」とやらの名前を言うてみよ」
冷たい、冷たい皇妃様の声。第一皇子はファルク様と言うのですけど、ミーアでも一般常識の帝国皇子の名前くらいは覚えているはず。
「え、えっと……しゅー……しゅー……シュークリーム!」
「ユーティア、ユーティア!俺、今、噴き出すの滅茶苦茶堪えた。凄くねえ?!」
ブルブル震えながら、私の隣でシューが興奮気味に小声で話しかけて来ました。
「ええ、素晴らしいです。私も驚きのあまり思考が飛びました」
「シュ、シュークリーム、シューっぶ、ぶふっ!しかも「第一王子」う、ぶふっ」
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「王よ、私はどうやら酷い侮辱を受けたようですわね」
「そうだな、皇妃よ。娘、そこにいる私の息子の王太子は第二皇子にして名はシューレウスと言う。お前は帝国皇帝の前で偽りしか語らぬ愚か者。ユーティアの姉妹として一刻でも過ごしたと聞いておったがユーティアの苦労が手に取るように分かった。首を刎ねよ」
「ひっ?!な、なんで、何で!助けて!第一王子様!」
この後に及んでもシューに向かって第一王子様、助けてと叫ぶミーア。あの子はこんなにも人の話がわからない子だったのですね。
「お、お待ち、お待ちください王よ」
まだお腹を抱えて笑っていたフィル兄様が立ち上がりました。
「そこの阿呆は首を落とす価値もない。それにユーティアの書類上の家族であった時もあったのです、ねえユーティア。アレらの首、欲しいですか?」
私は首を横に振りました。憎く思った事もありました。どうして、何で、と。しかし、命まで取りたいと思った事はありません。首、もっと要りません。貰ったとしても始終ずるいずるいと文句と小言だけ垂れ流しそうじゃないですか……。
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「そうね、ユーティアの心をこれ以上波立たせるのは本意ではないわ。優しいユーティアに感謝する事ね、お前たちの首が胴から離れなかったのはユーティアのお陰よ」
「え……ユ、ユーティア……の?」
信じられないと目を瞬かせるミーアの絶望に満ちた顔。それを見ても私は優越感などは感じずただ哀れに思うだけでした。
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