【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?

鏑木 うりこ

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18 ユーティアの両親

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 ユリアデットは「グラフの末の娘」と言われることがいやだった。誰も自分を見てくれない、見ているのはこの指輪の持ち主である「グラフの末の娘」だけだったから。そんな思いを娘にさせたくないと思っても仕方がない事だった。

「ユーティアはユーティアよ。私の可愛い娘」

 ただ、指輪は大切な物だという事は伝えたが「グラフの末の娘」である事を伝えはしなかった。持つ者を必ず幸せにするグラフの指輪。ユリアデットは幸せだったのだ、チャールズはユリアデットをユリアデットとして見てくれたのだから。
 少しユーティアに対する態度が冷たいと思った事もあった。しかし貴族ならばそれもあるかと、ユリアデットはチャールズを信じた。そしてその分自分がユーティアを可愛がればいいと。ユーティアはユリアデットの愛で成長していった。


「くそっ!!」

 一方チャールズは不満しかなかった。誰もが「グラフの末の娘」を敬い大切に扱ったが。

「私は……私はあのユリアデットの添え物かッ!」

 誰かにそう尋ねれば、全員暖かいか苦いかは別にして、笑みを浮かべるだろう。「そうだ」とはっきり言う事は出来ないから。でもそれは一人、部屋に居るチャールズには聞こえないし、聞きたいとも思っていないはずだ。

 チャールズ・ラング侯爵に秀でている所は一つもなかったので、彼は真に「グラフの末の娘」の夫でしかなかったのだ。

「あの目……私を蔑むあの緑の目……クソッ」

 チャールズは知性に満ちたユリアデットの緑の瞳が苦手だった。だから、一緒に居る事は拒み、どうしても必要な跡取り……「グラフの末の娘」の血を引き継ぐ、次代のグラフの末の娘を作る必要があった……。しかしそれも叶った今、ユリアデットとの時間は苦痛でしかない。

 以前から入れあげていた平民の娘の所に足しげく通うのも仕方がない、チャールズは自分に言い聞かせている。

「ああ!愛しのチャールズ様……また来てくださったのね!」

「ああ、マリーン。体調はどうだい?私の娘は健やかかい?」

「勿論ですよ、見て。貴方そっくりで笑うようになったわ」

「おお、可愛いなあミーアは!」

 ユーティアを抱き上げた事もないのに、チャールズはミーアを可愛がった。マリーンにしてもあの見透かすようなユリアデットの瞳とは全く違う色味を安心してみることが出来た。
 似ていると言われても良く分からなかったが、それでもチャールズは自分と同レベル、それ以下のマリーンに安心を覚える。マリーンの傍でなら、自分のプライドを守れるのだから。添え物ではない自分を。


 ユリアデットは冷遇されている。しかし、本人はそれに気づいていない。ユリアデットの意志でグラフの話はユーティアに隠された。それでもユリアデットがグラフの末の娘である事は確かだったのだから。

 しかしユリアデットが重い病気にかかり、あっけなくこの世を去り、使用人は替わる。すぐさまやってきたマリーンとミーアをチャールズは溺愛する……。そして嫌な事には蓋をして楽しい事ばかりしたがる三人のせいでユーティアはどんどん孤立させられて行ったのである。

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