13 / 33
13 何一つないわよね?
しおりを挟む
「まず、その娘をどこかへやれ!不快だ!!」
第二王子イセルバードは汚いものを見る目でミーアを突き放す。
「なっ!何よ、何よ!私はアレクシス様の婚約者になったのよ!王太子の婚約者なのよ!いくらイセルバード様とはいえ、私をそんな風に扱っていいの!?皆、ユーティア、ユーティア!あんな地味な女より私の方が何倍も可愛いわ!あんな女いなくなって清々したわ!」
「黙れ、疫病神」
「娘、お前はアレクシス殿下の婚約者ではない。陛下はお認めにならないし、会議でも即却下された。それでもなおお前に執着したアレクシス殿下は王太子の座を降りられる。王太子はここにおられるイセルバード様だ」
さあっとミーアの顔は青ざめる。
「う、嘘。だってアレクシス様は、ミーアを婚約者にしてくださるっておっしゃったわ!」
「ああ、愚かな兄上はお前と言う質の悪い疫病神のせいで、大切なユーティア様にあのような辱めを与えただけではなく、愚かにも王太子の座を失ったよ。なんて馬鹿な兄上なんだ……もう少しまともな男だと思っていたのに。これも全てユーティア様があの兄を補佐なさっていたからだろうな……今までボロを出さずに王太子としてやって来れたのに」
部下たちに指示を出し終え、イセルバードは大きくため息を付いて椅子に座り込んだ。顔には疲労の色が濃い。これからの自国の行く末を考えただけで、頭が痛むとばかりに。
「え、嘘……嘘よね!?」
「娘、お前なんぞがどうして王太子妃になれるとおもったのだ?王太子妃という事は後の王妃だぞ。国の母たる女性に学園の勉強もできない、マナーも散々、勿論王太子妃教育もしていないそんなものがなれるとおもったのか?」
「ユ、ユーティアはなれるんでしょう!ならミーアだって出来るわ!」
宰相の目はいっそ哀れなものを見るようだった。
「ユーティア様は王子妃教育をほぼ終了し、王妃教育に入っておられた。学園では常に上位に位置し、マナーも完璧。そしてグラフの末の娘にして指輪を持つ者。何一つとしてお前がユーティア様に並べるものなどないではないか。何故自分も同じことが出来ると思ったのか、現実を見ろ。ここはお前の夢の中ではないのだぞ」
「え……だ、だってユーティアに出来てミーアに出来ない事なんて何一つ……ないわ……ないわよね……?」
1歳違いのユーティアとミーア。ユーティアの成績はいつも上位だった。ミーアの成績は常に下から数えた方が早い。ユーティアは学園からたくさんの賞状を貰って来た。羨ましくてミーアはそれを全部取り上げた。やっぱりユーティアの名前が入った賞状に価値はないから捨てたけど、自分の名前が入った賞状が欲しかったのに、ミーアは一つも貰えない。あの賞状は成績優秀者にのみ贈られるものだと知ったけれど、ミーアが自分の名前の入ったものを手に入れることは不可能だった。
「ない……はずよ」
蓋をしたはずの嫌な記憶が蘇りそうになって、ミーアは口を噤んだ。大丈夫、自分はユーティアに負けるわけがないのだと。
「ラングよ、お前は謹慎だ。沙汰があるまで外に出ることを禁止する」
宰相の声はとても厳しかった。
第二王子イセルバードは汚いものを見る目でミーアを突き放す。
「なっ!何よ、何よ!私はアレクシス様の婚約者になったのよ!王太子の婚約者なのよ!いくらイセルバード様とはいえ、私をそんな風に扱っていいの!?皆、ユーティア、ユーティア!あんな地味な女より私の方が何倍も可愛いわ!あんな女いなくなって清々したわ!」
「黙れ、疫病神」
「娘、お前はアレクシス殿下の婚約者ではない。陛下はお認めにならないし、会議でも即却下された。それでもなおお前に執着したアレクシス殿下は王太子の座を降りられる。王太子はここにおられるイセルバード様だ」
さあっとミーアの顔は青ざめる。
「う、嘘。だってアレクシス様は、ミーアを婚約者にしてくださるっておっしゃったわ!」
「ああ、愚かな兄上はお前と言う質の悪い疫病神のせいで、大切なユーティア様にあのような辱めを与えただけではなく、愚かにも王太子の座を失ったよ。なんて馬鹿な兄上なんだ……もう少しまともな男だと思っていたのに。これも全てユーティア様があの兄を補佐なさっていたからだろうな……今までボロを出さずに王太子としてやって来れたのに」
部下たちに指示を出し終え、イセルバードは大きくため息を付いて椅子に座り込んだ。顔には疲労の色が濃い。これからの自国の行く末を考えただけで、頭が痛むとばかりに。
「え、嘘……嘘よね!?」
「娘、お前なんぞがどうして王太子妃になれるとおもったのだ?王太子妃という事は後の王妃だぞ。国の母たる女性に学園の勉強もできない、マナーも散々、勿論王太子妃教育もしていないそんなものがなれるとおもったのか?」
「ユ、ユーティアはなれるんでしょう!ならミーアだって出来るわ!」
宰相の目はいっそ哀れなものを見るようだった。
「ユーティア様は王子妃教育をほぼ終了し、王妃教育に入っておられた。学園では常に上位に位置し、マナーも完璧。そしてグラフの末の娘にして指輪を持つ者。何一つとしてお前がユーティア様に並べるものなどないではないか。何故自分も同じことが出来ると思ったのか、現実を見ろ。ここはお前の夢の中ではないのだぞ」
「え……だ、だってユーティアに出来てミーアに出来ない事なんて何一つ……ないわ……ないわよね……?」
1歳違いのユーティアとミーア。ユーティアの成績はいつも上位だった。ミーアの成績は常に下から数えた方が早い。ユーティアは学園からたくさんの賞状を貰って来た。羨ましくてミーアはそれを全部取り上げた。やっぱりユーティアの名前が入った賞状に価値はないから捨てたけど、自分の名前が入った賞状が欲しかったのに、ミーアは一つも貰えない。あの賞状は成績優秀者にのみ贈られるものだと知ったけれど、ミーアが自分の名前の入ったものを手に入れることは不可能だった。
「ない……はずよ」
蓋をしたはずの嫌な記憶が蘇りそうになって、ミーアは口を噤んだ。大丈夫、自分はユーティアに負けるわけがないのだと。
「ラングよ、お前は謹慎だ。沙汰があるまで外に出ることを禁止する」
宰相の声はとても厳しかった。
93
お気に入りに追加
5,128
あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。
伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。
その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。
ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。
もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。
破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

別れたいようなので、別れることにします
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。
魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。
命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。
王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる