11 / 33
11 甘い妄言
しおりを挟む
時は少し巻き戻り、ユーティアがいたラング家の庭先で3人はしばらく呆然としていた。
「ず、ずるい……お姉様……いえ、ユーティアは狡い……何でユーティアがあんなにきれいなドレスを着て、きれいな馬車に乗って、帝国の王子様と……そ、そうよ!間違えたんだわ!王子様は本当はミーアを連れて行くつもりだったのよ!でも間違えたんだわ!」
きっぱりはっきり否定されたのに、都合の悪い部分はミーアの中で消し去られている。
「そうよ、私よりユーティアが勝っている訳ないもの!絶対そうよ!間違いないわ!ね、お父様、お母様!」
「え?ええ……」
「あ、ああ、そうだな。ミーア」
ラング侯爵と妻であるマリーンはミーアの勢いに押される形で曖昧に返事をした。
「やっぱりそうなのよ!間違いは早く正さなきゃ!明日にも帝国へ向かって早く真実の愛を取り戻さないとだわ!」
二人はミーアが何を言っているか良く分からなかった。真実の愛?そんな物、どこから湧いて来たのだ?
ミーアの奇怪な言動、しかし
「王子様!ミーアがすぐに参りますね!そして間違ったユーティアなどすぐに蹴り飛ばして差し上げますわ!」
自信満々に語るその姿に「まさか」と思い始める。
この類の人間は自分に都合の悪い事は徹底的に封印し、都合が良く甘い事ばかりを信じる傾向がとても強い。
そして力強く何度も何度も繰り返されると……信じてしまうのだ、その甘い妄想を。
「ミ、ミーアちゃんはこんなに可愛らしいのですものね!」
「あ、ああ!ミーアは可愛い。自慢の娘だからな!」
「うふ!ありがとう、お父様!お母様!寝不足は美容の敵よ、早く寝て明日に備えましょ!明日は帝国へ向かわなくちゃ」
足取りも軽く屋敷へ向かうミーア。そして打算の段取りを素早く組み立てる二人。
例えミーアにラング侯爵家の血が流れていなくても、今現在ミーアは正式なラング家の令嬢なのだ。
その正式な令嬢が、帝国妃になればラング家は安泰ではないか?元々ミーアに継がせる予定だった家門だが、今からでも養子を得るなり、愛人を召し抱えて男子を産ませるなりすれば問題ないのでは?
ラング侯爵はニヤリと笑う。
マリーンにしてみても、過去の過ちが夫である侯爵にバレたが、ミーアがマリーンの娘である事実に何の変わりもない。
ミーアが帝国妃になれば、マリーンはその母親だ。贅沢な暮らしが約束されている。こんな侯爵家なんか比べ物にならない贅沢な暮らし。
マリーンも笑いに歪む顔が抑えられない。
「そうね、ミーアちゃん。可愛いミーアちゃんは可愛くいなくちゃね」
大前提が狂っている事を、美味しい物しか見たくない三人は記憶の彼方に消し去っていた。
「ず、ずるい……お姉様……いえ、ユーティアは狡い……何でユーティアがあんなにきれいなドレスを着て、きれいな馬車に乗って、帝国の王子様と……そ、そうよ!間違えたんだわ!王子様は本当はミーアを連れて行くつもりだったのよ!でも間違えたんだわ!」
きっぱりはっきり否定されたのに、都合の悪い部分はミーアの中で消し去られている。
「そうよ、私よりユーティアが勝っている訳ないもの!絶対そうよ!間違いないわ!ね、お父様、お母様!」
「え?ええ……」
「あ、ああ、そうだな。ミーア」
ラング侯爵と妻であるマリーンはミーアの勢いに押される形で曖昧に返事をした。
「やっぱりそうなのよ!間違いは早く正さなきゃ!明日にも帝国へ向かって早く真実の愛を取り戻さないとだわ!」
二人はミーアが何を言っているか良く分からなかった。真実の愛?そんな物、どこから湧いて来たのだ?
ミーアの奇怪な言動、しかし
「王子様!ミーアがすぐに参りますね!そして間違ったユーティアなどすぐに蹴り飛ばして差し上げますわ!」
自信満々に語るその姿に「まさか」と思い始める。
この類の人間は自分に都合の悪い事は徹底的に封印し、都合が良く甘い事ばかりを信じる傾向がとても強い。
そして力強く何度も何度も繰り返されると……信じてしまうのだ、その甘い妄想を。
「ミ、ミーアちゃんはこんなに可愛らしいのですものね!」
「あ、ああ!ミーアは可愛い。自慢の娘だからな!」
「うふ!ありがとう、お父様!お母様!寝不足は美容の敵よ、早く寝て明日に備えましょ!明日は帝国へ向かわなくちゃ」
足取りも軽く屋敷へ向かうミーア。そして打算の段取りを素早く組み立てる二人。
例えミーアにラング侯爵家の血が流れていなくても、今現在ミーアは正式なラング家の令嬢なのだ。
その正式な令嬢が、帝国妃になればラング家は安泰ではないか?元々ミーアに継がせる予定だった家門だが、今からでも養子を得るなり、愛人を召し抱えて男子を産ませるなりすれば問題ないのでは?
ラング侯爵はニヤリと笑う。
マリーンにしてみても、過去の過ちが夫である侯爵にバレたが、ミーアがマリーンの娘である事実に何の変わりもない。
ミーアが帝国妃になれば、マリーンはその母親だ。贅沢な暮らしが約束されている。こんな侯爵家なんか比べ物にならない贅沢な暮らし。
マリーンも笑いに歪む顔が抑えられない。
「そうね、ミーアちゃん。可愛いミーアちゃんは可愛くいなくちゃね」
大前提が狂っている事を、美味しい物しか見たくない三人は記憶の彼方に消し去っていた。
98
お気に入りに追加
5,129
あなたにおすすめの小説

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。
婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】
「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」
私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか?
※ 他サイトでも掲載しています
真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています
綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」
公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。
「お前のような真面目くさった女はいらない!」
ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。
リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。
夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。
心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。
禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。
望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。
仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。
しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。
これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

【完結】毒殺疑惑で断罪されるのはゴメンですが婚約破棄は即決でOKです
早奈恵
恋愛
ざまぁも有ります。
クラウン王太子から突然婚約破棄を言い渡されたグレイシア侯爵令嬢。
理由は殿下の恋人ルーザリアに『チャボット毒殺事件』の濡れ衣を着せたという身に覚えの無いこと。
詳細を聞くうちに重大な勘違いを発見し、幼なじみの公爵令息ヴィクターを味方として召喚。
二人で冤罪を晴らし婚約破棄の取り消しを阻止して自由を手に入れようとするお話。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。
伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。
その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。
ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。
もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。
破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる