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10 安心してね
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「ほ、本物か?!本物なのか?!」
「馬鹿ですか」
「分からないのですか?こんなに凄い力を放っているのに」
「帝国に入った瞬間普通気づくでしょう」
「リリアス公の妹ですよ?紛い物な訳ないでしょう」
魔導士と呼ばれた人達の言葉は辛辣でしたが、良いのでしょうか?不敬では……。
「だから陛下は陛下なんです」
妃ローザンヌ様が溜息と共に私にはよく分からない苦言を呈したようです。えっと、確かに陛下は陛下ですわよね……?
「どうですか?ローザンヌ様。ユーティアは相応しいでしょう?」
扉を開けて、しっかりと正装をしたシューがやって来ます。え?これがあの庭師のシューですか?!全く違う人間の様です。
私が目をパチクリさせていると、隣にいたグラフィル様が少し屈んで耳打ちをします。
「馬子にも衣装、でしょ?シューは見た目が映えるんだよね。中身はガサツだけど」
「まあ!」
でも確かに濃紺の髪に明るい青い瞳は人目を引きますね。あら?そう言えば今日の私のドレスはきれいな青色、シューの瞳の色と同じ色でしたのね……あら、やだわ……なんだか恥ずかしい。
「ユーティア、どうだい?似合うだろ?みて、ここが緑。ユーティアの色を入れてって頼んだんだ!」
嬉しそうに教えてくれるシューは本当に素直だ。これは隣に立つ私がしっかりしないといけないわね!
「ありがとうございます、シューレウス殿下。後でゆっくり聞かせて下さいませね?」
「え?あ、うん」
暗に今じゃなくて良いでしょ!と言って聞かせたのだけれど、お妃様がぷっと吹き出したのは聞かなかった事にしました。
「すまないわね、ユーティア。シューはそんな感じなのよ。私の息子達が不甲斐なさすぎて、シューには迷惑をかけるわ」
「大丈夫ですよ、ローザンヌ様。ユーティアは優秀なんですから!」
どうしてそんなに自信満々なんですか!シュー!もうっ!足でも踏みつけて差し上げようかと思いましたが、陛下が椅子の上に座り直して高らかと宣言したのでやめておきます。
「良かろう!ユーティア・リリアスを我が息子王太子シューレウスの婚約者とする。一同、異論はないな?」
「陛下の御心ままに!」
シューも、私もグラフィル様も深く頭を垂れた。
「ありがとうございます、父上」
「ありがとうございます、陛下」
こうして私は、王太子シューレウス様の婚約者としてその座に収まったのでした。
「グラフの指輪の事、帝国のしきたりの事。色々覚える事があると思うけれど、ここには君を虐める人はもういないから安心してね、ユーティア」
にっこりと、そこは庭師の時と変わらない笑顔を向けてくれるシュー。この人の隣なら頑張れる、私も安心して笑顔を返す事が出来ました。
「馬鹿ですか」
「分からないのですか?こんなに凄い力を放っているのに」
「帝国に入った瞬間普通気づくでしょう」
「リリアス公の妹ですよ?紛い物な訳ないでしょう」
魔導士と呼ばれた人達の言葉は辛辣でしたが、良いのでしょうか?不敬では……。
「だから陛下は陛下なんです」
妃ローザンヌ様が溜息と共に私にはよく分からない苦言を呈したようです。えっと、確かに陛下は陛下ですわよね……?
「どうですか?ローザンヌ様。ユーティアは相応しいでしょう?」
扉を開けて、しっかりと正装をしたシューがやって来ます。え?これがあの庭師のシューですか?!全く違う人間の様です。
私が目をパチクリさせていると、隣にいたグラフィル様が少し屈んで耳打ちをします。
「馬子にも衣装、でしょ?シューは見た目が映えるんだよね。中身はガサツだけど」
「まあ!」
でも確かに濃紺の髪に明るい青い瞳は人目を引きますね。あら?そう言えば今日の私のドレスはきれいな青色、シューの瞳の色と同じ色でしたのね……あら、やだわ……なんだか恥ずかしい。
「ユーティア、どうだい?似合うだろ?みて、ここが緑。ユーティアの色を入れてって頼んだんだ!」
嬉しそうに教えてくれるシューは本当に素直だ。これは隣に立つ私がしっかりしないといけないわね!
「ありがとうございます、シューレウス殿下。後でゆっくり聞かせて下さいませね?」
「え?あ、うん」
暗に今じゃなくて良いでしょ!と言って聞かせたのだけれど、お妃様がぷっと吹き出したのは聞かなかった事にしました。
「すまないわね、ユーティア。シューはそんな感じなのよ。私の息子達が不甲斐なさすぎて、シューには迷惑をかけるわ」
「大丈夫ですよ、ローザンヌ様。ユーティアは優秀なんですから!」
どうしてそんなに自信満々なんですか!シュー!もうっ!足でも踏みつけて差し上げようかと思いましたが、陛下が椅子の上に座り直して高らかと宣言したのでやめておきます。
「良かろう!ユーティア・リリアスを我が息子王太子シューレウスの婚約者とする。一同、異論はないな?」
「陛下の御心ままに!」
シューも、私もグラフィル様も深く頭を垂れた。
「ありがとうございます、父上」
「ありがとうございます、陛下」
こうして私は、王太子シューレウス様の婚約者としてその座に収まったのでした。
「グラフの指輪の事、帝国のしきたりの事。色々覚える事があると思うけれど、ここには君を虐める人はもういないから安心してね、ユーティア」
にっこりと、そこは庭師の時と変わらない笑顔を向けてくれるシュー。この人の隣なら頑張れる、私も安心して笑顔を返す事が出来ました。
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