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9 節穴の目には普通の娘と映る
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「お久しぶりでございます、陛下」
「リリアス公か。社交の場にも久しく出ておらぬ公が珍しい」
「我が妹が殿下のお目に留まったので、是非陛下に御目通りをお願いしたく参上致しました。さ、ユーティア。前へ」
き、緊張します。昨日の今日で、皇帝陛下に御目通りなんて!しかも今日来ているドレスは計ったように私にぴったりで驚きました。
そう言えばあの時シュー様に用意して頂いたドレスもぴったりでしたわね……。
女は度胸よ!私は促されるまま前へ出て、深々と礼をします。
「ユーティア・リリアスと申します」
ああ、人の目が痛いわ。きっと私が何者か探ろうとしているのね。そして穴が有れば引きずり下ろそうと、狙っている。どこの貴族も同じようなもの。でも、帝国の方が目が厳しい気がするわ……確かに国としてはこちらの方が比べるべくもなく大きいのですものね。
「リリアス公の妹にしては地味だな」
ショックの余り私は頭を上げられなかった。グラフィル・リリアス様は金の髪に、緑の瞳の美しい方だ。それなのに私は茶色の髪。瞳の色は一緒だけれど、華やかさにかけるのは当然だ。ああ、ここでも私は駄目なの……?涙が溢れそうになる。
しかし、助け舟は意外な場所から出た。
「陛下は節穴ですか。あのように美しい礼が出来る淑女を地味など、馬鹿な事をおっしゃいますな。ユーティアと言いましたね。顔を上げて良く見せてちょうだい」
なんとお妃様自らお声をかけてくださったのです。静かにゆっくり言われた通りに顔を上げると、にこやかに微笑む美しい女性がおりました。
「ご覧なさい。リリアス公と同じ深く知性に満ちた瞳をしています。これならばシューレウスを助け、支えて行くに相応しい。歓迎しますよ、ユーティア。彼の国であった事など些事に過ぎません。この国でその力、存分に発揮してちょうだいね」
「も、勿体ないお言葉です!」
私は慌ててもう一度礼をしました。初対面でここまで信頼していただけるなんて!恐れ多くてどうして良いか分かりません!
「そうかのう?普通の娘ではないか?」
「だからあなたの目は節穴だと言うのです」
びしり、と言い切るお妃様にこの国の力関係を見ました。
「全くです。やはりローザンヌ様はご慧眼だ!なあ?魔導士どもよ?」
王を小馬鹿にした態度のグラフィル様に私の方が青くなってしまいます!ふ、不敬です!
「全くです、リリアス公の言う通り」
「王よ、ユーティア様の価値を分かっておられませなんだな?嘆かわしい」
「これから帝国は栄えますよ?ユーティア様が指輪をお持ちになったのですから」
「我が帝国の悲願の指輪を持つ乙女ですのに。お馬鹿ですか、アンタ」
最後の方はなんだかとても酷い言葉が飛び交っています……。
「は?指輪?あの持つものを必ず守り幸をもたらすグラフの指輪の事か?」
「ユーティア、見せておやり」
グラフィル様が言うので私は左手に嵌めた古ぼけた指輪を見えるように目の前に持ってきます。
「こ、この指輪の事ですか?」
がたり!と王様は驚いて椅子から落ちてしまいました。だ、大丈夫なのでしょうか。
「リリアス公か。社交の場にも久しく出ておらぬ公が珍しい」
「我が妹が殿下のお目に留まったので、是非陛下に御目通りをお願いしたく参上致しました。さ、ユーティア。前へ」
き、緊張します。昨日の今日で、皇帝陛下に御目通りなんて!しかも今日来ているドレスは計ったように私にぴったりで驚きました。
そう言えばあの時シュー様に用意して頂いたドレスもぴったりでしたわね……。
女は度胸よ!私は促されるまま前へ出て、深々と礼をします。
「ユーティア・リリアスと申します」
ああ、人の目が痛いわ。きっと私が何者か探ろうとしているのね。そして穴が有れば引きずり下ろそうと、狙っている。どこの貴族も同じようなもの。でも、帝国の方が目が厳しい気がするわ……確かに国としてはこちらの方が比べるべくもなく大きいのですものね。
「リリアス公の妹にしては地味だな」
ショックの余り私は頭を上げられなかった。グラフィル・リリアス様は金の髪に、緑の瞳の美しい方だ。それなのに私は茶色の髪。瞳の色は一緒だけれど、華やかさにかけるのは当然だ。ああ、ここでも私は駄目なの……?涙が溢れそうになる。
しかし、助け舟は意外な場所から出た。
「陛下は節穴ですか。あのように美しい礼が出来る淑女を地味など、馬鹿な事をおっしゃいますな。ユーティアと言いましたね。顔を上げて良く見せてちょうだい」
なんとお妃様自らお声をかけてくださったのです。静かにゆっくり言われた通りに顔を上げると、にこやかに微笑む美しい女性がおりました。
「ご覧なさい。リリアス公と同じ深く知性に満ちた瞳をしています。これならばシューレウスを助け、支えて行くに相応しい。歓迎しますよ、ユーティア。彼の国であった事など些事に過ぎません。この国でその力、存分に発揮してちょうだいね」
「も、勿体ないお言葉です!」
私は慌ててもう一度礼をしました。初対面でここまで信頼していただけるなんて!恐れ多くてどうして良いか分かりません!
「そうかのう?普通の娘ではないか?」
「だからあなたの目は節穴だと言うのです」
びしり、と言い切るお妃様にこの国の力関係を見ました。
「全くです。やはりローザンヌ様はご慧眼だ!なあ?魔導士どもよ?」
王を小馬鹿にした態度のグラフィル様に私の方が青くなってしまいます!ふ、不敬です!
「全くです、リリアス公の言う通り」
「王よ、ユーティア様の価値を分かっておられませなんだな?嘆かわしい」
「これから帝国は栄えますよ?ユーティア様が指輪をお持ちになったのですから」
「我が帝国の悲願の指輪を持つ乙女ですのに。お馬鹿ですか、アンタ」
最後の方はなんだかとても酷い言葉が飛び交っています……。
「は?指輪?あの持つものを必ず守り幸をもたらすグラフの指輪の事か?」
「ユーティア、見せておやり」
グラフィル様が言うので私は左手に嵌めた古ぼけた指輪を見えるように目の前に持ってきます。
「こ、この指輪の事ですか?」
がたり!と王様は驚いて椅子から落ちてしまいました。だ、大丈夫なのでしょうか。
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