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7 すまんな、それは嘘だ。
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「それで、まさかなんですけど……私がどのような人物が見定めるために、我が家に庭師として入り込んだのではないでしょうね?」
「ユーティア、鋭いなー!あはは!その通り!俺一人で行くつもりだったのに、皆、俺が心配だーとかいってきちまってな!最終的にこんな数に!」
実に最近入った使用人全てが実は使用人では無かったと言う訳でしたのね……頭が痛いわ。
「それにしてもお前の家って本当に最悪で笑っちまうな!給料も安いし、すぐ人が辞めるから、使用人の斡旋所で本当に良いんですか?!って何度も念を押されたわ!あはは!」
「うう……申し訳ありません」
ミーアとお義母様の癇癪で気に入らないとすぐに辞めさせていたものね。そんな悪評まで流れていたなんて知らなかったわ……。
「ま、そう言う訳でユーティア、大変だと思うけどよろしく頼む。適任が見つかれば皇帝はそいつに譲りたいと思ってるんだ。俺はこの通り、最低限の事しか学んでいないから、口は悪いし、政治も今ひとつだ」
「え、あれ?私は平民になるのではなかったのでしたっけ?」
「すまんな、それは嘘だ。悪いが次期皇帝の妃になってくれ」
すまんな、で済ませられる問題かしら?!話が大きくなってしまって、私はクラクラしている。倒れてしまいそうです。
「なあに、ユーティアなら大丈夫だとみんなからお墨付きを貰ってる。だから、大丈夫だ!」
皆からってどう言う事でしょうか?!しかしわたしには帰るところがありません。このままシューについて行くしか無いのです。
「済まんな、俺もユーティアに逃げられると困るんだ。だから観念して欲しい」
これは、逃げ出す事も出来なさそうです。こうなったら、向き合った方が良さそうですね。
「分かりました。帝国の事は分からない事もたくさんありますが、なんとか頑張ってみます」
「ありがとう!助かるよ」
確かにシューは礼儀作法は得意では無さそうです。でも
「もし仮に。仮にだけど、俺が別の人を好きになったら婚約破棄だけはしないから。きちんと話し合って婚約解消にする」
「分かりました、信じます」
信じる事のできる人。私にはそれがとても嬉しかったのです。
馬車はかなりのスピードで走り抜け、国境を越えました。生まれ育った国を出て行くのは少し悲しみを感じますが、あの家で暮らして行くのはもう限界です。
私は帝国で生きていく覚悟をしっかり決めました。
それは薄い膜のように。光に溶ける絹のように。
ユーティアが国境を越える瞬間。シュルシュルとこの地より剥がれていく物。夜の闇の冷たさでさえ、この薄い何かが遮っていてくれたように、この国の夜は暖かかった。
その恩恵はユーティアにくっついて全て走り去ったのだ。力ある者なら気がついただろう。ぞくりと背筋を走る冷たさに。
いつの間にか誰かに守られていたのに、それがすっかり無くなる瞬間を。
「ユーティア、鋭いなー!あはは!その通り!俺一人で行くつもりだったのに、皆、俺が心配だーとかいってきちまってな!最終的にこんな数に!」
実に最近入った使用人全てが実は使用人では無かったと言う訳でしたのね……頭が痛いわ。
「それにしてもお前の家って本当に最悪で笑っちまうな!給料も安いし、すぐ人が辞めるから、使用人の斡旋所で本当に良いんですか?!って何度も念を押されたわ!あはは!」
「うう……申し訳ありません」
ミーアとお義母様の癇癪で気に入らないとすぐに辞めさせていたものね。そんな悪評まで流れていたなんて知らなかったわ……。
「ま、そう言う訳でユーティア、大変だと思うけどよろしく頼む。適任が見つかれば皇帝はそいつに譲りたいと思ってるんだ。俺はこの通り、最低限の事しか学んでいないから、口は悪いし、政治も今ひとつだ」
「え、あれ?私は平民になるのではなかったのでしたっけ?」
「すまんな、それは嘘だ。悪いが次期皇帝の妃になってくれ」
すまんな、で済ませられる問題かしら?!話が大きくなってしまって、私はクラクラしている。倒れてしまいそうです。
「なあに、ユーティアなら大丈夫だとみんなからお墨付きを貰ってる。だから、大丈夫だ!」
皆からってどう言う事でしょうか?!しかしわたしには帰るところがありません。このままシューについて行くしか無いのです。
「済まんな、俺もユーティアに逃げられると困るんだ。だから観念して欲しい」
これは、逃げ出す事も出来なさそうです。こうなったら、向き合った方が良さそうですね。
「分かりました。帝国の事は分からない事もたくさんありますが、なんとか頑張ってみます」
「ありがとう!助かるよ」
確かにシューは礼儀作法は得意では無さそうです。でも
「もし仮に。仮にだけど、俺が別の人を好きになったら婚約破棄だけはしないから。きちんと話し合って婚約解消にする」
「分かりました、信じます」
信じる事のできる人。私にはそれがとても嬉しかったのです。
馬車はかなりのスピードで走り抜け、国境を越えました。生まれ育った国を出て行くのは少し悲しみを感じますが、あの家で暮らして行くのはもう限界です。
私は帝国で生きていく覚悟をしっかり決めました。
それは薄い膜のように。光に溶ける絹のように。
ユーティアが国境を越える瞬間。シュルシュルとこの地より剥がれていく物。夜の闇の冷たさでさえ、この薄い何かが遮っていてくれたように、この国の夜は暖かかった。
その恩恵はユーティアにくっついて全て走り去ったのだ。力ある者なら気がついただろう。ぞくりと背筋を走る冷たさに。
いつの間にか誰かに守られていたのに、それがすっかり無くなる瞬間を。
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