【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
7 / 33

7 すまんな、それは嘘だ。

しおりを挟む
「それで、まさかなんですけど……私がどのような人物が見定めるために、我が家に庭師として入り込んだのではないでしょうね?」

「ユーティア、鋭いなー!あはは!その通り!俺一人で行くつもりだったのに、皆、俺が心配だーとかいってきちまってな!最終的にこんな数に!」

 実に最近入った使用人全てが実は使用人では無かったと言う訳でしたのね……頭が痛いわ。

「それにしてもお前の家って本当に最悪で笑っちまうな!給料も安いし、すぐ人が辞めるから、使用人の斡旋所で本当に良いんですか?!って何度も念を押されたわ!あはは!」

「うう……申し訳ありません」

 ミーアとお義母様の癇癪で気に入らないとすぐに辞めさせていたものね。そんな悪評まで流れていたなんて知らなかったわ……。
 
「ま、そう言う訳でユーティア、大変だと思うけどよろしく頼む。適任が見つかれば皇帝はそいつに譲りたいと思ってるんだ。俺はこの通り、最低限の事しか学んでいないから、口は悪いし、政治も今ひとつだ」

「え、あれ?私は平民になるのではなかったのでしたっけ?」

「すまんな、それは嘘だ。悪いが次期皇帝の妃になってくれ」

 すまんな、で済ませられる問題かしら?!話が大きくなってしまって、私はクラクラしている。倒れてしまいそうです。

「なあに、ユーティアなら大丈夫だとみんなからお墨付きを貰ってる。だから、大丈夫だ!」

 皆からってどう言う事でしょうか?!しかしわたしには帰るところがありません。このままシューについて行くしか無いのです。

「済まんな、俺もユーティアに逃げられると困るんだ。だから観念して欲しい」

 これは、逃げ出す事も出来なさそうです。こうなったら、向き合った方が良さそうですね。

「分かりました。帝国の事は分からない事もたくさんありますが、なんとか頑張ってみます」

「ありがとう!助かるよ」

 確かにシューは礼儀作法は得意では無さそうです。でも

「もし仮に。仮にだけど、俺が別の人を好きになったら婚約破棄だけはしないから。きちんと話し合って婚約解消にする」

「分かりました、信じます」

 信じる事のできる人。私にはそれがとても嬉しかったのです。


 馬車はかなりのスピードで走り抜け、国境を越えました。生まれ育った国を出て行くのは少し悲しみを感じますが、あの家で暮らして行くのはもう限界です。

 私は帝国で生きていく覚悟をしっかり決めました。



 それは薄い膜のように。光に溶ける絹のように。
 ユーティアが国境を越える瞬間。シュルシュルとこの地より剥がれていく物。夜の闇の冷たさでさえ、この薄い何かが遮っていてくれたように、この国の夜は暖かかった。
 その恩恵はユーティアにくっついて全て走り去ったのだ。力ある者なら気がついただろう。ぞくりと背筋を走る冷たさに。
 いつの間にか誰かに守られていたのに、それがすっかり無くなる瞬間を。


 
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

婚約破棄ですか。お好きにどうぞ

神崎葵
恋愛
シェリル・アンダーソンは侯爵家の一人娘として育った。だが十歳のある日、病弱だった母が息を引き取り――その一年後、父親が新しい妻と、そしてシェリルと一歳しか違わない娘を家に連れてきた。 これまで苦労させたから、と継母と妹を甘やかす父。これまで贅沢してきたのでしょう、とシェリルのものを妹に与える継母。あれが欲しいこれが欲しい、と我侭ばかりの妹。 シェリルが十六を迎える頃には、自分の訴えが通らないことに慣れ切ってしまっていた。 そうしたある日、婚約者である公爵令息サイラスが婚約を破棄したいとシェリルに訴えた。 シェリルの頭に浮かんだのは、数日前に見た――二人で歩く妹とサイラスの姿。 またか、と思ったシェリルはサイラスの訴えに応じることにした。 ――はずなのに、何故かそれ以来サイラスがよく絡んでくるようになった。

処理中です...