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5 シューレウス
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「ずるい!ずるい!ずるい!どうしてお姉様が!」
私がシューに手を引かれ馬車に乗り込もうとすると、ミーアが金切り声をあげます。ずるいと言われても、私も何が何だか分かりませんのに。
「お姉様ではない、ユーティア様と言え。このあばずれ女が」
もう用なしとマリーとリリーが解放したのにまた突進してくるミーア。今度はラング家を辞める庭師のフェルがミーアを床に這いつくばらせました。フェルの手並みも見事で、本当に庭師なのでしょうか?
「正式にユーティア様はラング家と縁が切れたと先ほども申し上げたでしょう。その耳は飾りですか、その頭の中身は入ってますか?入ってませんね」
別の執事見習のカルが冷たい目でミーアを見ています。そうです、私はもうミーアに「お姉様」と呼ばれる由縁はないのです。
「シュー……貴方は一体何者なのですか……?」
どうしても、これだけは聞かなくては。どうも平民ではないようです。しかも隣の帝国に関係のある人なのでしょうか?
シューは流石にもういいか、と笑って答えてくれました。
「俺の名前はシューレウス。シューレウス・グスタフ」
玄関先まで来ていたお父様もお義母様にミーアをフェルは投げつけます。
「グスタフ?聞いた事なんてないぞ」
と、首を傾げていますが、何故わからないのでしょう!私は顔を青くして聞き返すしかありません。
「シューレウス・グフタス・マラガラム……マラガラム帝国第二皇子様であらせられますか……」
「そうですよ、レディ・ユーティア。貴女には私の婚約者として帝国へ来ていただきます」
そう言うと同時に私を馬車へ引き上げてしまいます。手早く扉は閉じられ、元家族達の驚愕した表情が窓から見えました。
「え!?帝国第二皇子!?」
「う、嘘だろ……なんで帝国の皇子様がウチの庭師なんかに!」
「そんな訳あるはずが……!」
そしてやはり
「お、お姉様……いや、そんな、そんな女より、私を!私を連れて行ってください!皇子さまぁ!」
ミーアが声を張り上げました。
「そんな女より私の方が可愛らしいです!私の方が貴方を愛しています!私の方が私の方が!ああ、ずるいずるいわ!」
「虫唾が走る。ユーティアよりお前が勝っている所など一つとしてない!」
シュー……いえ、シューレウス殿下は本当に嫌なものを見る顔でミーアを見下します。
「そんな事はないわ!だって私だってラング家の娘だもの!」
「その体には一滴の貴族の血も流れておらんがな」
「え?」
その指摘にお義母様の顔がさーっと青くなるのが分かります。え?まさかお義母様、心当たりがあるのですか?
「知らんのか?お前はラング侯爵の子供ではない。お前の母親が、金を返せず寝た金貸しとの間の子供だ。金貸しはお前そっくりの顔をしているぞ」
「え?嘘……」
「な、馬鹿な!お前、どう言う事だ!確かにミーアは私にはにていないとは思っていたが……」
ミーアとお父様がお義母様に詰め寄ります。まさか、そんなことが……?
「いえ、あの、そんな事は、ありません!ミーアはあなたの子供です!」
ミーアは金髪に青い目をしている。お義母様は金髪に緑の目。お父様は茶色の髪に緑の目……先祖に青い目の持ち主がいたのでは?と言われてきたのですが……?
「金貸しは青い目であったぞ、ミーアそっくりのな。まさか、自分は浮気をしておいて、女は浮気しないと思っていたのか?ラング侯爵よ」
私の歳とミーアの歳は一歳違い。お母様がお亡くなりになられたのは私が10歳の時。お母様のご存命中からお父様はお母様を裏切っていたのです。そして、お義母様もまた……そういうことなのですね。
「浮気し合う夫婦。似た者同士でよく気が合ったであろうな」
だが浮気などどこの国でも褒められたものでは無いですのに。
私がシューに手を引かれ馬車に乗り込もうとすると、ミーアが金切り声をあげます。ずるいと言われても、私も何が何だか分かりませんのに。
「お姉様ではない、ユーティア様と言え。このあばずれ女が」
もう用なしとマリーとリリーが解放したのにまた突進してくるミーア。今度はラング家を辞める庭師のフェルがミーアを床に這いつくばらせました。フェルの手並みも見事で、本当に庭師なのでしょうか?
「正式にユーティア様はラング家と縁が切れたと先ほども申し上げたでしょう。その耳は飾りですか、その頭の中身は入ってますか?入ってませんね」
別の執事見習のカルが冷たい目でミーアを見ています。そうです、私はもうミーアに「お姉様」と呼ばれる由縁はないのです。
「シュー……貴方は一体何者なのですか……?」
どうしても、これだけは聞かなくては。どうも平民ではないようです。しかも隣の帝国に関係のある人なのでしょうか?
シューは流石にもういいか、と笑って答えてくれました。
「俺の名前はシューレウス。シューレウス・グスタフ」
玄関先まで来ていたお父様もお義母様にミーアをフェルは投げつけます。
「グスタフ?聞いた事なんてないぞ」
と、首を傾げていますが、何故わからないのでしょう!私は顔を青くして聞き返すしかありません。
「シューレウス・グフタス・マラガラム……マラガラム帝国第二皇子様であらせられますか……」
「そうですよ、レディ・ユーティア。貴女には私の婚約者として帝国へ来ていただきます」
そう言うと同時に私を馬車へ引き上げてしまいます。手早く扉は閉じられ、元家族達の驚愕した表情が窓から見えました。
「え!?帝国第二皇子!?」
「う、嘘だろ……なんで帝国の皇子様がウチの庭師なんかに!」
「そんな訳あるはずが……!」
そしてやはり
「お、お姉様……いや、そんな、そんな女より、私を!私を連れて行ってください!皇子さまぁ!」
ミーアが声を張り上げました。
「そんな女より私の方が可愛らしいです!私の方が貴方を愛しています!私の方が私の方が!ああ、ずるいずるいわ!」
「虫唾が走る。ユーティアよりお前が勝っている所など一つとしてない!」
シュー……いえ、シューレウス殿下は本当に嫌なものを見る顔でミーアを見下します。
「そんな事はないわ!だって私だってラング家の娘だもの!」
「その体には一滴の貴族の血も流れておらんがな」
「え?」
その指摘にお義母様の顔がさーっと青くなるのが分かります。え?まさかお義母様、心当たりがあるのですか?
「知らんのか?お前はラング侯爵の子供ではない。お前の母親が、金を返せず寝た金貸しとの間の子供だ。金貸しはお前そっくりの顔をしているぞ」
「え?嘘……」
「な、馬鹿な!お前、どう言う事だ!確かにミーアは私にはにていないとは思っていたが……」
ミーアとお父様がお義母様に詰め寄ります。まさか、そんなことが……?
「いえ、あの、そんな事は、ありません!ミーアはあなたの子供です!」
ミーアは金髪に青い目をしている。お義母様は金髪に緑の目。お父様は茶色の髪に緑の目……先祖に青い目の持ち主がいたのでは?と言われてきたのですが……?
「金貸しは青い目であったぞ、ミーアそっくりのな。まさか、自分は浮気をしておいて、女は浮気しないと思っていたのか?ラング侯爵よ」
私の歳とミーアの歳は一歳違い。お母様がお亡くなりになられたのは私が10歳の時。お母様のご存命中からお父様はお母様を裏切っていたのです。そして、お義母様もまた……そういうことなのですね。
「浮気し合う夫婦。似た者同士でよく気が合ったであろうな」
だが浮気などどこの国でも褒められたものでは無いですのに。
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