上 下
25 / 46

25 あらあら?何とかなりそうじゃない?

しおりを挟む
「脂肪ぅ」

 ガタゴトと揺れる馬車で私のお尻の脂肪はあまり仕事をしてくれなかった。馬車自体は良い物なんだけど道が最悪ね。
 でもゾーネに入る頃には少しまともになって来た。

「はぁ……長いわね。いつ着くのかしら?」

「馬で飛ばせば早いですが馬車では1か月程度でしょうか?」

「……そう、随分遠くまで来たものね」

 あの国しか知らない私はゾーネ国に来て驚いていた。何というか街や国自体が物々しい。ついて来てくれたマリリーも少し青い顔で外を見ている。

「シシリー様……兵士が多いですね」

「ええ。全然お勉強してこなかったから分からないけれど……軍が強いのかしら?」

 街角に我が国とは比べ物にならないほど、兵士が立っている。こうなって来ると、この国のことを何も知らないのが恐ろしいわ。

「マリリー。この国の事で知っている事を教えてちょうだい?」

「ええ、私もあまり知らないのですが……」

「どこまで大丈夫なのか加減が必要だわ……」

 荒っぽい国なら怒らせたら処刑!なんてあり得るかもしれない。死んだら帰られないじゃないの!

「そうですね」

 苦笑するマリリー。私は数名の女官や侍女、メイドを連れて来ている。全員に

「早目にやらかして婚約破棄されて国へ帰るつもりよ!」

 と、宣言しているので皆協力してくれるはず。でもマリリーもあまり知らなくて結局は王宮に着いてから手探りでやっていくしかないようだった。


「レイル帝国皇女シシリーでございます」

 微妙な淑女の礼に、ゾーネの貴族達はヒソヒソと噂話をしたようだがそれで良い、計画通りよ!!さあ、私の悪評を立てると良いわ。そして「この黒豚は王弟の嫁に相応しくない!」って会議とかで決定すると良いのよ。

「遠い所ご苦労であったな、皇女殿下。弟は多忙の身故、後程挨拶に行かせよう」

「お気遣いありがとうございます」

 ゾーネ国の国王はそんなに歳じゃなかった。35.6歳ってとこかな?若いけど、中々やり手なんだろうなぁ。て言うかね?ツッコミたいんだけど、国王がそれくらいで、王弟であるギルマルド様が30歳なのよ。

 分かるかしら?私ってば豚だけどぴっちぴちの16歳なの。

 あんまり考えないようにしてたんだけどさ、私がかなーり小さい時にギルマルド様との婚約が組まれたわけ。

 ロリぃのかしら……?デブ専のロリぃってヤバすぎる案件じゃない??早く帰りたい。
 でもゾーネの国王の顔を見て安心した。あれはどう考えても歓迎している顔じゃ無いわ。私を追い出したくてしょうがない顔だ。ふふ、そうよね?盛りに盛った姿絵じゃなくて本物がコレじゃ返品したいわよね?

 案外早く帰れそうだわ!私はお供達と共にニヤリと笑うしかなかった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください

mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。 「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」 大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です! 男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。 どこに、捻じ込めると言うのですか! ※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

【完結】私を醜い豚と罵り婚約破棄したあなたへ。痩せて綺麗になった私を見て今更慌てて復縁を申し出てきても、こちらからお断りです。

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
恋愛
「醜い豚め!俺の前から消え失せろ!」 私ことエレオノーラは太っていて豚のようだからと、 婚約破棄されてしまった。 見た目以外は優秀であっても、 人として扱ってもらえなければ意味は無い。 そんな理不尽な現実を前に、 ついにエレオノーラはダイエットすることを決意するのであった。 一年後、鏡の前に立つ。 そこにもう豚はいなかった。 これは人となったエレオノーラが、 幸せになっていく物語。

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...