上 下
56 / 69

56 可愛らしいんですってよ?

しおりを挟む

「おんぎゃあああああああああああああああああああああああああ!」
「う、うまれ、た? ほ、ほんとに」

 宰相さんはお腹をズバッと切った。立ち会ったけど凄すぎて倒れそうになった……。

「少し小さいうちにいけば……切らずにいけるのでは?」

 そう思ったけれど、なんと子供がストライキを起こしたのだ。早目に出るように伝えにいったら癇癪を起こされたのだ。

(やだああああああ! ここ最高に居心地良いしまだ居る!)
(えーーーーーっ!)

 俺は説得に失敗し、子供はどんどん大きくなってしまった。健康で何よりなんだが宰相さんのお腹はぽんぽこりんになっておへそが伸びて平らになった。
 移動の時もひーひー、ふーふーヘンドリクセン兄弟に付き添われている。

「尻が裂けるか腹が裂けるかの2択だ!」
「ひえええー?!」

「腹で」「腹で」
「よ、よろしくお願いしますぅうう」

 ヘンドリクセン兄弟の強い要望もあり、執刀の名医がものすごい手つきで切って取り出しさらに縫ってくれた。この国一番の先生らしい……もちろん殿下が手配した。先生も前代未聞の男性妊夫の帝王切開という前代未聞の手術ということでかなり乗り気でやってくれた。この先生、ちとマッドの気配がするぞ。
 滅茶苦茶大声で出てきた赤ちゃんはめちゃくちゃヘンドリクセン兄弟にそっくりで、間違いなく濃い血を引いていると全員納得してしまう。とっても可愛らしい赤ちゃんだった。将来モテそうだ!

「流石に私の子かオリーの子か分かりませんが、どちらでも構わないと思っています」
「育てて行けば性格で分かるかもしれませんね。もしわからなければもう2.3人産んで貰いましょう。その時に分かるかもしれません」

 ヘンドリクセン兄弟は性格もそっくりで考えている事もそっくりだから、子供が大きくなってもリッツの子かオリーの子か分からない気がするけれど、あと2.3人ってところはきっと決定だと思う。頑張って欲しい。
 
「うむ、綺麗に縫えたぞ。流石ワシ、完璧だ。さあ、早く次を持ってこい」

 なんて執刀してくれた先生がニコニコ笑顔で言うもんで、結局セイルも切ったし、マチェット君も切った。なんだかんだいってお尻からひり出すのはちょっとね、ってことになり、切って取り出すのを基本にした方が良いという見解に収まった。

「出ません! 」
「出ました! 」
「出ません……」

 そしておっぱいはどうも個人差があるみたい。宰相さんとマチェット君は出ないけど、セイルは出た。もしかしたら魔力量が凄く多いと出るのかもしれない。セイルの平らな胸に吸い付いているセイルジュニアは可愛いけれど、ちょっと不思議だった。

「魔力を乳に変換している……? いやそんな馬鹿なハハハハ……あり得る」

 まだまだ研究は続くようだ。でも体の発達は変わらないんだけれど、セイルの子供は明らかに魔力が多い、物凄く多い……なんかすごい人物になりそう。愛情をたっぷり注いで元気に育てて欲しい。

 あの後もルーセンの方から何人も妊娠男性がやってきて、特別産科に在住してる。そして何故か彼らの夫が帝国人が多くて殿下の方をギロリと睨んでしまった。でも皆仲良くて並んでデートをしながらお腹を撫でていたりするのでまあ……良しとした。愛し合ってるなら良いんだ……。

「シャトはきっと気が付いていないと思うけど、ルーセン国の国民って総じて可愛いんだよ。華奢っていうか守ってあげたくなるっていうか……北帝国がルーセンを占領した時にたくさんルーセンからお嫁さんに来て貰ってきた話、する?」
「え……知らない」
「他の国から先を越された、うちの嫁にしようと思っていたのにって陰で言われ続けてるんだよね、実は」
「嘘だろ」

 確かにルーセン国民は帝国民に比べたら平均的に背が低いかもしれないし、体の厚みも薄いかもしれない。いやでも、ちゃんと武人もいるし……えええ~~。たくさん嫁にしたってなんなのー?!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら異世界で魔法使いだった。

いみじき
BL
ごく平凡な高校球児だったはずが、目がさめると異世界で銀髪碧眼の魔法使いになっていた。おまけに邪神を名乗る美青年ミクラエヴァに「主」と呼ばれ、恋人だったと迫られるが、何も覚えていない。果たして自分は何者なのか。 《書き下ろしつき同人誌販売中》

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

よくある話をしよう

マンゴー山田
BL
魔王封印のために呼ばれた異世界転移先の勇者様は聖女が大嫌い。 しかしおまけ扱いの俺には溺愛してくる。 そんなおまけの俺がなぜか勇者様のわがままにより魔王封印の旅に同行することになったんだが、魔王はいないし神様は出てくるし…。 どうなってんだ? ■R18の部分に※マークを付けました。

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙
BL
ハーララ帝国第四皇子であるエルネスティ・トゥーレ・タルヴィッキ・ニコ・ハーララはある日、高熱を出して倒れた。数日間悪夢に魘され、目が覚めた彼が口にした言葉は…… 「皇帝なんて興味ねえ!俺は魔法陣究める!」 天使のような容姿に有るまじき口調で、これまでの人生を全否定するものだった。 * * * * * * * * * 母親である第二皇妃の傀儡だった皇子が前世を思い出して、我が道を行くようになるお話。主人公は研究者気質の変人皇子で、お相手は真面目な専属護衛騎士です。 ○注意◯ ・基本コメディ時折シリアス。 ・健全なBL(予定)なので、R-15は保険。 ・最初は恋愛要素が少なめ。 ・主人公を筆頭に登場人物が変人ばっかり。 ・本来の役割を見失ったルビ。 ・おおまかな話の構成はしているが、基本的に行き当たりばったり。 エロエロだったり切なかったりとBLには重い話が多いなと思ったので、ライトなBLを自家供給しようと突発的に書いたお話です。行き当たりばったりの展開が作者にもわからないお話ですが、よろしくお願いします。 2020/09/05 内容紹介及びタグを一部修正しました。

弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです

BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。

事務職員として異世界召喚されたけど俺は役に立てそうもありません!

マンゴー山田
BL
駐車場で光る地面に吸い込まれそうになっていた女性を助けようとして一緒に吸い込まれた俺こと古宮遥都。 召喚した人、ハワードに言わせれば事務職員として召喚したそうだ。召喚された世界は世界樹と呼ばれる世界の中心にある大樹から与えられた挿し木を各国で守っている。 その樹の下には生きているダンジョンがあって――。 大切な人を失い、二度と大切な人を作らないと決めた騎士×異世界から来たマップ把握能力を持つ会社員。 ■ムーンライトノベルスさんにも公開しております。

お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

処理中です...