【本編完結】神に捨てられた糸くずの俺は愛される~不幸な物語なんて変えてやるから安心して

鏑木 うりこ

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49 つんでいる……。

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「ふえ……ふえ……ひどいぃ……」
「すいません、すいません、シャトルリア様すいませんん……」

「えっとぉ……?シャトルリア様と宰相様はいかがなさったんですか??」

 ああ、セイルの無垢な笑顔が眩しい。最近べそべそと泣いて暮らしている俺と宰相さんが不思議だったんだろうね……良いんだよ、それなりの地位にある人間はそれなりに悩みやらままならない事が多いんだ……。

「あ、ありがとう、セイル。君はミュゼルと仲良くするんだよ……」
「え? あ、はい……?」
「そしてミュゼル、絶対セイルと幸せになるんだよ……婚約破棄なんてしちゃダメだからね……」
「無理矢理も良くないですよ、しくしく」

 怪訝そうな顔をする二人だけど、多分大丈夫だろう。結局俺は殿下に負けて結婚を前提にお付き合いすることになった。
 段々冷たくなっていくシャトルリアの体を大事そうに抱っこして、ぶっ壊れモードの殿下はマジで怖かった。

「ああ、暖かいシャトの体が冷えていく……でも仕方がないよね。二度と会えなくなって話もできないなんて私は耐えられない。しかもシャトが私以外の人間と結婚するなんて考えただけで気が狂いそうだ……」

 こ、怖い!なんか言ってることは怖いのに、殿下から伝わってくる感情は楽しい!だったのがさらに怖かった。

「ああ、体が死んでしまうならその前に一度くらい抱かせて欲しいなぁ……シャトはどんな声を上げたんだろう……聞けなかったのが残念だなぁ」
「ひぃ……」

 そんな真っ暗に沈んだ目のホルランド様の楽しげな想像を半日以上聞かされた俺は根を上げた。

「勘弁して下さい、出して下さいぃ……婚約者にでもなんでも戻りますから元の殿下に戻ってぇ~~」
「絶対結婚してくれる?」
「うえええ……わかりましたぁ」
「やったぁ!」

 なんだかよく分からない書類にたくさんサインを書くことを約束させられて、シャトルリアの体に泣きながら帰る事ができたのだった。

「シャト、シャト!ずっと一緒だよ!」
「はひぃ……」

 殿下の感情をダイレクトに受けなくて済む分良かったのだけど、良く考えれば状況って大して変わっていないのでは?!
 ぎゅうぎゅうに抱きしめられながら考えてみたけれど、色々遅かった。

「あれ……? やっぱ詰んでる……」
「ふふ、シャトは可愛いなぁ」

 あれ……?? でもお城の人達全員に感謝されてしまった。皇帝陛下にまで

「あのままホルランドが使えない王太子になってしまっては我が帝国の痛手であった。そなたには損はさせぬ、安心するが良い」
「あ、ありがとう、ございます……? 」

 侍女ちゃん達には万歳されるし、侍従さん達には嬉し泣きされるし。いや、泣きたいのは俺のほうだよ?

「シャト! 結婚式はいつにする? 流石に私は王太子だから婚約から結婚まで1年以上は開けるように言われてたんだけれど、脅して半年にさせたよ。良いよね?」
「不穏な単語が所狭しと並んでいる気がする」
「ふふ、大丈夫。ちゃんと口封じもしておいたから」
「元の優しいホルランド様はどこへ行ったの-……しくしく」
「私は昔からこんな感じだよ」

 それは嘘だーーーーー!!



 



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