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42 何だかいろいろ分からないな

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「自分でもわかります。体内を巡る魔力が大幅に増えたことが。ありがとうございます、シャトルリア様」
「良いけど、もう少し休もうね? 」

 生まれたての子鹿のようにプルプルの足腰でセイルがお礼を言いに来たけど、そんなんじゃ外出はできないぞっと!

「ミュゼル君や、セイルに必要なのは休息だからね?」
「あ、はい。やり過ぎないようにします」

 駄目だこりゃ。子鹿のセイルは2.3歩歩いた所でお姫様抱っこをされて消えていった。

「や、やめろ!ミュウ、歩ける! 」
「いや、むりだろう?」
「歩けるったら歩ける! 」

 わあわあ言い合ってる癖に二人ともにこにこして幸せいっぱいの顔をしていた。お熱いな、胸焼けしそう。

「わ、私だってシャトを抱き上げるくらい……」
「寝てて下さいね? 分かりましたか? 」
「はい……」

 俺はまた図書館へ篭り新しい神聖魔法を覚える。試しに使ってみたところ、何事もなく発動するので、本当にシャトルリアは優秀な子だった。生きていたら本当に素晴らしい王子様だっただろうに。

「こんな奴が入ってごめんな」

 でも頑張るから、許して欲しいものだ。俺はセイルがちゃんと立てるようになるまでの3週間をほとんど図書館に篭って過ごした。これなら役に立つはずだ。あとセイルとミュゼルいちゃいちゃしすぎ。

 セイルが悪魔討伐に出発する一向に同行することを願い出ると、なぜかホルランド殿下までついてきた。

「寝てないと駄目ですよ! 」
「もう大丈夫だ。シャトが図書館に通っている間に頑張ったからね」

 いやいや!ついこの間まで棺桶に片足突っ込んでたよね? それなのにこの人何言ってんの?

「大丈夫、無理はしないよ。だってシャトが心配なんだ。危ないことはしないしシャトの傍から離れない。だから私もついていくことを許しておくれ」
「わ、私もついて行く身ですから、許可とかそういうのは私ではなく、セイルかミュゼルに」

 そう言うと殿下はミュゼルと暫く見つめ合って、互いにコクリと頷いた。

「私はホルランド殿下が同行しても良いと思います」

 一体どうやって同意を取り付けたのかはわからないけれど、なんかそうなった。あのアイコンタクトはどんなことがあったのか……さっぱりわからん。

「あれは一種の同盟です。お前のソレを俺のコレに近づけないように、お前はそっち、俺はこっちというアレです、アレ」
「指示語が多すぎてわからないよ、宰相さん」

 何かを察した宰相さんはお城に残って貰うことになり、俺達はシェリリアの男爵領へ向かうことになった。向かう途中でもセイルといろいろ戦いについて話を聞いておきたかったのに、セイルとミュゼルは同じ馬車で俺とホルランド殿下が同じ馬車。俺とセイルは離れ離れなので話ができない……。

「殿下あの、勇者と悪魔についていろいろ話をしたいのですが」
「私以外の男と話をしたいだって?」
「何を言ってるんですか」

 話くらいしますけど?復活してから殿下の様子がなんだかおかしい気がする。こんなにくっ付いてくる人じゃなかったのに、今は距離が近すぎる。常に手を握られているのはちょっとどうなんだろうか?

「シャトが傍にいると安心するんだ」

 うーん、病後の不安ってやつなのか?まあ俺もこの悪魔討伐が終わったら国へ帰るし、ちょっとくらい我慢してやるか。まさかホルランド殿下だって俺がこのまま帝国に残るなんてありえないことが起るなんて思ってる訳ないだろうし。

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